僕が居なくなってから10日が過ぎた。いなくなったというよりは死んだと言う方が正しいのかもしれないが。死んだよりいなくなったの方が興味を引かれないかい? そう思うのはもしかして僕だけかな。

 君は夜枕を濡らし、瞼を腫らす。こんなこと言ったら怒るかもしれないが、起きてすぐの君は不細工だ。やめてくれ、君は笑顔の方が絶対可愛い。
 のそのそと二人で選んだ若葉色の布団から君はでる。シーツがぐじゃぐじゃになっている。潔癖症の君らしくないじゃないか。いつも僕には綺麗にしてよと言っていたのに自分はやらないのかい。

 カーテンからぼんやりとした光が差し込む。何処からか聞こえるのは雀の声だね。確か、マンションの近くの公園で見たことがあるよ。飛んできたのかな。今日で10日目の朝。太陽はいつの間にか君が仕事にいっているうちに沈み、また君を起こすためにやってくる。雀もいつもどおりの時間に歌い出すだろうね。

 この10日間僕は君と一緒に過ごしてきた。君は何時も僕の為に泣いてくれて、笑ってくれて嬉しかったよ。結婚も考えていた。僕の支えは君だったんだ。君の職場に川西君だっけ。かっこいい人がいるね。ああ、長身の青色が凄く似合う彼だ。君の職場のおばさんが言っていたんだが、どうやら彼は君に気があるらしい。いい人じゃないか。昨日雨のなか彼は猫に傘をさしてやっていたよ。自分の紺のスーツが濡れるのも気にしてないようだった。優しい人なんだね。

 何が言いたいかだって?

 そんな不安そうな顔をしないでくれよ。君は知ってるかな。僕がいなくたって世界は動くし、君は生きるんだ。唯一変わったといえるのは、君が泣き虫になったってことぐらいなんだ。僕一人が消えたぐらいで世界がなくならないなんて、なんて悲しくて、嬉しいんだろう。君は僕が難しいことを言うと話をそらそうとしていたね。懐かしいな、でももういつの事だったか思い出せないんだ。だから、簡単にいうよ。瞼を赤く腫らした不細工な君なんてみたくない。いつまでも僕の大好きな笑顔で笑ってくれ。僕はもう君を幸せにはできない。もう遅すぎたんだよ。だけど、君には幸せな人生をおくってほしいんだ。君は僕の最愛の人だから。



 ずっとずっと愛しているよ。だから、忘れてくれ。

 ああ、かなしいね、うれしいね。











(100501)
作風を変えるのに挑戦
楽しかった。

 
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