今日も貴方は窓の外に目を向けるの。
それは、つらそうに。
それは、嬉しそうに。
それは、幸せそうな表情で――。
暖かい香りに包まれた教室で、黄緑色のカーテンが小さく揺れる。
それに比例するように、心地よい風が彼の少し伸びた髪を揺らした。
初老のおじいちゃんの眠気に誘うような授業。回りのクラスメイトはこくり、こくりと頭を揺らす。
ゆったりとした声と、風の入りゆく囁きはまるで子守唄の様に心地よい。
でも―――。
彼は絶対目を閉じて、こくり、こくりりと頭を揺らすことはない。
いつも窓の外に目を向けては、柔らかい笑顔を浮かべている。このクラスメイトにも、私にも向けたことの無いような優しい笑顔で。
私は知ってるの。
なんで貴方が何時も外を見ているか。
なんで貴方があんなにも引き込まれそうな表情をしているか。
なんで貴方があんなにも幸せそうなのか。
貴方のその、優しい笑顔が誰を見ているか―――。
もし、願いが叶うのならば、私のこのぐちゃぐちゃの醜い心を消し去ってしまうのに。
(090703)