真っ白な背景に、赤い、小さな丸が真ん中に一つだけ。

たった二色しか使われていない国旗が、近所の家の前に掲げられていた。
国旗は太陽から落ちてくる眩しい光に照らされて、しゃんと胸を張っている。
凛々しい姿だ。
その様子を見ると、躊躇していた気持ちに決心がついて、足は軽くなった。

私の足は新宿へと向かっている。






平成二十六年五月三日、『特定秘密保護法に反対する学生デモ』が新宿にて開催された。
 その学生デモに、私は参加した。
集合場所の柏木公園へ到着すると、既に百名ほどの人々が集まっていた。
主催者からデモの意義や、注意事項が述べられた後、早々とデモ行進がはじまった。

「特定秘密保護法反対」
 「民主主義って何だ」
 「やべー勢いで、すげー盛り上がる」

 これは、デモ行進の際に使った掛け声の数フレーズである。


自分たちが使っているいつもの口調で自らの主張を述べ、始終どこからか今風の音楽が流れているデモ行進。
 私のなかで『デモ』というと、私は固く、真面目で、暑苦しい印象があった。
頭で考えていたデモと、現実で行われているデモがまるで違ったので、「デモとは一体何なのか?」と悩みながら歩いていた。
そんな中でも、混乱する演説が頭から降り注いでくる。
「前回のデモの後のビールがたまらなく美味かった。みんなで政治のことを話して、主張して、デモがこんなに充実して楽しいとは知らなかった」
「デモをやっているとは言えない、言うのが怖くてイベントだと言っている」
 

「本当は、怖い、それでも言いたいんです」

『デモ』の印象が崩壊した。
 六十年代ごろの学生運動とはまるで違う、温厚で、傷つくことを嫌う若者たちの新しい抗議の方法。
 デモであっても、周囲を気にかけ、迷惑を最小限に抑えながら、より良き日本を作るために訴えているのだ。
 今までの方法とは少し違った『デモ』、それが悪い方向へ進まず、これからも続いて言って欲しいと切に願う。
              




※今回のデモでは、考えさせられる部分もあった。
例えば、今回は学生主体なのだが、学生以外の市民も参加しても良かった。
が、『学生主体』という名目なので、学生が先頭を歩いた。
そのため、メディアによる撮影は前のみで写して欲しいとお願いしていた。
これは、「演出」だがやりすぎると「やらせ」になってしまう。


何事にも匙加減が大切なのだ。






無料冊子「ふりぃ」にて掲載
第十八回文学フリマにて配布しました。




モドル

      
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