・不定期更新、未完、短め、何でもありな小ネタになります。
・とりあえず黒子総受け。



0103 Sat 23:34
「え、黒子っち、もしかしてまだサンタクロース信じてるんスか?」
大きな声とその内容に、何人もの視線が集まる。
その先にあったのは、派手な黄色と薄い水色だった。
「し、信じてません!ボクのこと何歳だと思ってるんですか!」
「え、でも、今も枕元に靴下置いて寝てるんでしょ?」
「……それは、そうですけど」
どうやら黄瀬と黒子は、まだ半年も先の、クリスマスの話題で盛り上がっているらしい。
そう広くない、一軍用の更衣室での事である。部員たちは嫌でも聞こえてくる、毎年女の子からのデートの誘いを断るのに苦労するだの、高価なプレゼントを押し付けられて困るだのという黄瀬の話に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていたのだが、今は頬を染めて抗議する黒子の幼さに、思わずといった感じで笑みを浮かべていた。
「父の言い付けなんです。ちゃんと、靴下を用意しておきなさいって……」
「あれ、黒子っちってば、実はファザコン?」
「……どうしてそうなるんですか」
「だって、サンタしたいおとーさんの為に、素直に言うこと聞いてあげちゃうってどんだけ……いて!?」
そこで、浅黒い手が黄瀬の後頭部をはたいた。
「何するんスか青峰っち!」
「しつこいんだよてめぇは。……テツもそう拗ねるなって」
「……拗ねてないです。別に、何と言われ様が構いませんよ。ボク、父のこと大好きですから」
言葉とは裏腹な、唇を尖らせながらの黒子の発言に、宥めるように水色の頭を撫でていた青峰は軽く目を見開いた。あまり自分の気持ちを表に出さない黒子が、家族とは言え人への好意をはっきり示したのが、意外だったのだ。
「……へぇ、なんか、黒子っちが誰かを好きとか言うの、初めて聞いたかも……でも、それがおとーさんっていうのが、何とも可愛らしいというか何と言うか……」
それは黄瀬も同じだったようだ。驚きに目を瞬かせながら、それでも好きな子の興味を引こうとする小学生のように、黒子をからかうことだけは忘れない。
「……どうせボクは黄瀬君と違ってお子様ですよ。いいじゃないですか、お金持ちでもなければ、特にハンサムという訳でもないですけど、ボクにとっては自慢の父です。いつか父みたいな男になるのが、ボクの目標なんですから」
頬を染めながら話す黒子は、いつも以上に幼げで愛らしかったが、青峰は何だか面白くなくて、小さな相棒の体をやや強引に引き寄せ、腕の中に閉じ込める。
「……青峰君?」
「……オレだってお前みたいな息子がいたら、ぜってー可愛がるし!」
「オレもオレも!……っていうか黒子っちの親父さんが羨ましすぎるっスよ!代われるものなら代わりたい!」
「テツ、オレだって毎年サンタしてやるし、どこにでも連れて行ってやるし……」
「オレなら何でも買ってあげるっスよ!」
――などと主張してくる二人を、黒子はしばらくキョトンとした眼差しで見つめていたが、やがて小さく噴き出した。
「二人とも、何言ってるんですか」
こんな若い父親はいりませんとクスクス笑い続ける黒子に、青峰と黄瀬は不満顔だったが、続いた発言に、再び目を見開くことになった。
「でも、二人が兄弟だったらいいなぁ、って思ったことはあります――ボク、一人っ子ですし」
「ならオレのこと、おにーちゃんて呼んでいいっスよ黒子っち!」
「アホか、お前どっちかっていうと手間のかかる弟だろうが。テツはオレの!」
「……ちょっ、二人とも、離してください……!」
そこから、いつものように黒子の取り合いを始めた黄瀬と青峰。
「……まったく、相変わらず騒がしい奴らなのだよ。あんなのが兄弟だったら、親はたまったもんじゃないな」
離れた場所で三人のやりとりを見ていた緑間は、そこで呆れたような大きなため息をついた。
それに、すぐ横でネクタイを締めていた紫原が言葉を返す。
「でも、黒ちんが弟だったら、退屈しなさそうだよね」
「何だお前まで」
「だって黒ちん世話やけるし面倒だし、でも何か構いたくなるしいないと物足りないし……犬とか飼ったら、きっとこんな感じなんだろうねー」
「気持ちは分からないでもないが、さすがにペット扱いはどうかと思うぞ……」
やれやれ、と肩を竦めてみせた緑間だったが、そこでふと、先ほどから無言のままの友人に気付き、訝しげにその名を口にした。
「……赤司?」
「何だい、緑間」
返されたのは、いつも通りの穏やかな笑みだった。だが、その顔色が優れないように見えるのは、気のせいだろうか。
「……いや、あいつらのバカ騒ぎを、お前が放っておくなんて珍しいと思ったのだよ。体調でも悪いのか?」
「……確かに、ちょっと疲れているかもしれないな。悪いけど、今日はお先に失礼するよ」
それだけ言うと、赤司は訝しげな表情の緑間に構うことなく、さっさとその場に背を向けてしまう。
そのまま部室を出て行くのかと思いきや、赤司が足を向けたのは未だ騒ぎ続ける三人の元だった。
「……な、何だよ赤司」
「……赤司君?」
「黒子、帰る前にお前に返したい本があるんだ。悪いが、いっしょに教室まで来てもらえるかな」
赤司は、黄瀬と青峰に挟まれた黒子を引きずり出すと、そのまま返事も聞かず、黒子を連れて行ってしまった。
「……何だよ、赤司の奴」
「何かあったんスか?」
日頃から厳しいところのある赤司だが、決して傍若無人な訳ではない。
ポカンとした表情の青峰と黄瀬の問いかけに、緑間は眉を顰めることしかできなかった。






「……赤司君?どうしたんですか?」
すでに八時近く、別棟の資料室に人が来るはずないと分かっていながら、黒子はついつい小声になってしまう。
だが、聞き取りにくいという事はないだろう。何せ、吐息が触れ合う距離に、赤司はいるのだから。
「別になんでもないよ……と、言いたいところだが、正直、ちょっと嫉妬した……」
「……赤司、く……ぁ……っ」
クスリと笑った赤司に、壁に背中を押し付けられ、唇を塞がれ、それでも黒子は小さく震えただけで、抵抗しようとはしなかった。
嘘をついてまで部室から連れ出された時から予感が――期待が、あったから。
「……ぁ、ん……っ」
「黒子……っ」
「……ちょっ、と、まって……っ」
黒子が赤司とキスをするのは、もう何度目だろう。決して少なくない回数を重ねてきたが、今日の赤司は今までになく強引だった。すぐに息継ぎについていけなくなり音を上げるも、赤司に許してやる気はないようだ。
「……ふ、ぅ……っ!」
呼吸もままならないまま、舌を吸われ、上顎を舐められ、ついに堪らなくなった黒子の足から力が抜けた。
「お、っと……っ」
そんな黒子を、赤司はすぐに支えてやった。口端から流れる唾液を拭う余裕もない黒子に対し、赤司は僅かに息を乱した程度。
「……そんなに気持ち良かったかい?」
更に余裕の笑みを浮かべながらそんなことを言うものだから、黒子は悔しさに唇を噛んだ。
「……ぁっ、きょうの、あかしく……いじわる、です……っ」
「……言っただろ、嫉妬したって」
「……し、っと、って……」
どうして?と不思議そうに小首を傾げる黒子に、赤司は目を細めただけで、すぐには返事を返さなかった。
「赤司、く……」
「黒子、おいで」
赤司は、不安そうに見上げてくる黒子の腕を引き体の向きを変えさせた。
後ろから片腕で腰を抱き、もう片方はズボンのベルトへ――
「……や、です……ここじゃ、これ以上……っ」
「……お前が悪い。誰彼構わず無防備に身をまかせて……オレ以外にも、こんな風に触れさせているんじゃないかって心配にもなるさ」
「そんなこと、ない、です……っ、キスをするのも、こんな、ことするのも、赤司くんだけ……ひぁっ!」
乱れた息の合間、必死に言葉を紡いでいた黒子だったが、下着の中に侵入してきた手のせいで、最後は甘い悲鳴をあげることになった。
「……本当に?」
「……ぁ、ほん、と……です、だって、ボクは、赤司くんの、ことが……っ」
――好きだから
続けられるはずの言葉は分かりきっていたので、赤司は強引に黒子の顎を掴むと、再び唇を塞いだ。
「……ぁ!ん、あか、し……く……っ」
幼いソレを刺激され、唇を貪られ、高く鳴く黒子の姿に、赤司の背筋にゾクゾクと電流の痺れが走った。
雄の本能を刺激するような黒子の痴態に欲情したのは確かだったが、それ以上に赤司の胸を満たしていたのは背徳感だった。
まだ中学生の自分達が、夜遅いとはいえ校舎内で淫らな行為に耽っている。
更に、赤司と黒子は同性――そして何より、
(……黒子、もしこの瞬間、オレたちには血の繋がりがあるって教えてやったら、お前はどんな顔をするかな)
完全に力の抜けきった体を預け、与えられる愛撫に乱れる黒子を、赤司は情欲の炎で熱く燃える――それでいてその奥にゾッとするような冷たさを宿した瞳で見下ろしている。
「……もっともっと、オレに溺れて、オレに縋り付くお前が見たいんだ……黒子」
それは、紛れもない赤司の本音。
しかしそれが愛おしさだけからくるものでないことを、赤司は最初から――それこそ、黒子と出会う前から、自覚していた。


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