「パース、最近怒ってばっかりだね」
「うるさい、放っておいてくれ」

パーシーと名前は特に仲がいいわけではなかったが、あまり広くないパーシーの交友関係から一緒に行動する事が多かった。知り合った当初は名前の事をなんて無責任な女なんだろうと思ったりもしたが、しばらくすると名前が大雑把なだけで本当は繊細な人であると気づいた。とはいえ羊皮紙に並んだ歪んだ文字も所々ほつれた手編みのセーターも完璧主義者のパーシーをいつも苛立たせた。名前は名前で度を超えた几帳面に辟易としていたが、あまりに違いすぎてお互い半ば諦めているため今までに険悪になったことは一度も無かった。パーシーは他人と一線を引いて付き合っていたし名前もそれを越えようとはしなかった。彼女がそれを寂しく思っている事をパーシーは知っていたがそれでも線引きを無くす様な事はしなかった。

黙々と羊皮紙に文字を書いていく。この地味な作業をパーシーは好んだ。そんなパーシーとは正反対に勉強嫌いな名前はそれをつまらなさそうに見ながらがりっと爪をかじる。彼女の悪癖だ。何度も注意したけど直る事はなかった。余程暇なのか名前は小さい声で歌を歌っていた。高い声は小声でも広い空間に響き、ちらりとパーシーの表情を窺うと歌うのをやめた。きっといつもの顰めっ面を悪い方に考えたからだろう。

「……歌ってていい」
「え、いいの」
「君が僕に指図される理由はないだろう?」

びっくりした顔のまま固まる名前がおかしくて何日間かぶりに笑ったパーシーに名前も顔をほころばせた。嬉々として歌う彼女の歌声はとても綺麗で、パーシーは書くのを中断して歌を聞くことに専念した。もしもパーシーが素直に名前の歌が聞きたいと言えたら、その時の彼は孤独ではないだろう。




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -