「腹減った。ねぇ、そこのドーナツ食べよ。」
「...さっき夕ご飯食べなかったっけ?」

ショッピングモールでのデートは久しぶりだった。恋人の桜井琉夏はお腹をさすりながら甘えた目でこちらを見ている。
キラキラしたその目には、弱い。

「美奈子と一緒だとやっぱり楽しい。」
「私もルカといると楽しいよ。」
「やったね。」

席に着き、さっそくドーナツを頬張る琉夏はにこにこしながらそう言った。
口元に少し砂糖をつけたその姿が子供のようで、

「ルカ、ついてる。」

笑いながら、白い砂糖を取ってやる。
すると、琉夏はきょとんとした顔をしたあと、笑顔になり、「今、美奈子イケメンだった。」と目を輝かせてそう言った。

「あはは、私はルカの彼氏かな?」
「うーん、やっぱり違う。美奈子は俺に大事に大事に守られてるほうが似合ってる。」

琉夏はうん、と頷きながらドーナツを口の中にに放り投げた。食べている時は一際ご機嫌そうだ。

「ルカってば。」
「あれ、照れた?」

頼んでいたミルクティをストローで吸い、結露を指でなぞる。琉夏はいつもまっすぐに褒めてくれたり、愛を伝えてくれる。それが未だに恥ずかしいような気分になって、結露のひんやりとした感覚でじわじわと現れる熱を冷ました。

「ねえ、これから俺ん家こない?」
「え?これから?」

琉夏はドーナツを顔の前に持ち、穴からこちらを見てそう言った。

「ちょっとだけ。コウはバイトで遅くなるみたいだし。来てよ。」
「...じゃあ、ちょっとだけね。」
「やった、決まり。」


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手を繋ぎながら、何度も通ったこの道をゆっくり歩く。相変わらず琉夏の指は長くて綺麗で、そんな手で包み込んでくれる。

「...高校の時、こうやって一緒に歩いたよね。オレ、しにそーだったんだから。」
「え?どうして?」

不意に琉夏が拗ねたような顔をして先に歩き、こちらを振り返る。そして、


「ドキドキして、しにそーだった。」
「.....っ」

心臓が、頭が、身体の色んなところが銃で撃たれたように衝撃が走る。琉夏が言葉にしなくても目線から伝わるその愛に、潰されてしまいたくなった。

「...ルカ、」
「美奈子のマネ!」

そうして、呼びかける声を遮って頬を、肩を、腕を、指先でつんつんと突いて来た。
ぞわぞわとする感覚に反射的に身を捩る。

「こ、こら!くすぐったいよ!」
「ぷっ!くらえ、ヒーローの仕返し!」
「なにそれ!」

笑い合いながら、お互いにちょっかいを出し合う。すっかり暗くなった道は、2人の声だけが響き渡っていた。


「...美奈子、」
「わっ!」

急に琉夏の腕がこちらに伸び、身体が引き寄せられる。いつも琉夏は突然に何かをすることが多くて、それにも慣れて来たつもりだった。

「美奈子、好きだよ。」
「ル、ルカ、まだ外だよ。」
「...ごめんね。抱きしめたくなっちゃった。」
「も、もう...」

「ウエストビーチまでもう少しだな!走ろう!」
「え、ちょっと!」

琉夏は、いつも突然、急に何かをするから、びっくりしたり、時には怒ることもある。でも、こんなにキラキラした笑顔で呼ぶ彼を見ると、その奔放さが愛おしくて、ずっと見守っていたい。
制服を着ていた頃と同じように、ずっとあの背中を追いかけていたいのだ。



END
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