ただ、"好き"なだけ



マイケルベストED後、15禁程度あり


「―――、ウェンディ…」


熱を帯びた甘ったるい声が、わたしの名前を呼んだ。聞きなれた筈の声の主は、義理とは言え…わたしの弟のもので。ジョンは知っているとはいっても母も義父もこの関係を知らない背徳感が妙に心を高鳴らせ、名前を呼ぶ声と同時に素肌を滑り落ちる指先に身体はいつになく高揚している自分がいた。
―――姉さん、そう呼んでいた彼はいつの間にか名前で呼ぶようになり、夜な夜な身体を重ね合わせることが当たり前のようになっている。


義理とは言え相手は弟だ。
けれどもう、この支配されたような恋愛感情を今さら手放すことなどわたしには出来もしなかった。
もしこの恋愛に終わりが来る日が来たとしても未練がましく追い縋り、捨てないでと泣くかもしれない。それほどまでに、彼、マイケルを愛してしまっているのだ。



「こら、マイケル…何処触ってるのよ…っ」

「何処って…ウェンディが気持ちいいところ、だよ」

「っ、…いい加減にしてちょうだい!今日はもう疲れたのよ」

「俺はまだ足りないよ?
…いつだって欲しくて欲しくて堪らないんだ、知ってるでしょ、"姉さん"?」

「―――っ、」



クスリ、とマイケルが小さく笑ったかと思ったら次の瞬間、さっきまでの行為を思い出させるように一番感じる部分を指が擽るように優しく撫でた。極めつけに"姉さん"と強調したその言葉に拒絶は失敗に終わった。何故なら、それはわたしを興奮させて言葉とは裏腹に彼を求めてやまない欲情を起こさせるからだ。
まるで、それは媚薬のようだと毎回のように思う。
抵抗をやめたわたしに、マイケルは嬉しそうに口許を綻ばせて、撫でるように動いていた指を器用に敏感な部分を突くように動かした。



「んっ、ふっあ…マイ、ケ…ルっ!」

「―――まだ足りない。
だから、もっともっと愛させて」



長年わたしに片想いしてきたらしい彼は、いつもこうして激しく求めてくる。
今まで我慢していた分を発散させるように、欲情を隠そうともしない。理性など持ち合わせてはいないのではないか、と思うくらいに。突くように動く指に神経が集中する。何処を突けば一番感じるのか熟知しているくせにマイケルの指はそれを避けて動かしているから焦れったくなって自分でも驚くくらい浅く腰を揺らしてしまった。
十分すぎるほどに、わたしは愛されている。
恋愛なんてとくに興味などなかったし、彼氏を作ったのも完璧な女性には彼氏くらいは必要だ、その程度の気持ちで恋愛の真似事のようなことをしていたに過ぎない。だからこの先、誰かに真剣な想いを寄せるだなんて考えてもいなかった。



(なのに、)

(あなたが、わたしを変えていく)



「ん、ぁっ…んんっ、あ、マイケル…」

「…ねえ、ウェンディも俺が欲しいでしょ?
腰、動いてたよね、いま」

「っ、…!」

「俺に愛されたいでしょ?
もっともっと深く、なにも考えられないくらい。
俺が欲しくて仕方ない、そう思ってる」



―――違う?
そう問うマイケルは確信めいた少し意地悪な表情で、まっすぐにわたしを見詰める。射抜かれそうなくらい、欲情を孕んだ瞳で。抗えない、ううん、抗えようがない。だってわたしは、…やっぱり彼が欲しくてたまらないのよ。
毎日のように深く激しく愛されてもまだ足りない。マイケルも、そしてわたしもお互いに溺れきってしまっている。それが嬉しくて、幸せで、ほんの少し両親に罪悪感を覚えたけれどそれすらも今の私たちにはどうでもよかった。


正直に、欲しいだなんてプライドが邪魔して言えないから。その代わりに、腕を伸ばして彼の唇を奪う。奪ってほしい。奪い尽くしてめちゃくちゃに愛してほしい。それこそ、一日中でも。そんなこと、恥ずかしくて言えるわけないけれど。



「じゃあ、たくさん愛してあげるよ。だから、ウェンディも俺をもっと愛して」



愛してるわよ。
怖いくらい、夢中だわ。
明日もみえないくらい、マイケルのことしか見えない。それでも彼は貪欲にもっと、と欲しがるから。わたしは世界一の幸福者だと思ったのだ。





(朝が来ても、ずっと繋がっていたいなんて)



お題拝借:hmr




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