レジグネイション | ナノ


レジグネイション


世の中、どうしようもないことってあるじゃんか。
明日の天気とか、物価の上昇とか、その他諸々。
そういうことってさ、俺の力なんか及ばないわけよ。俺がすっげぇ頑張って、すっげぇ祈ったってしゃーねーの。
当たり前だろ、なるようにしかならねーんだから。

つまり何が言いたいかってーと、人の心もまた然りってことよ。
毎日全く同じもの見て過ごすわけでもねーし、そりゃ価値観も心情も変わるだろ。もちろん、恋心もな。
だからさぁ、あいつが浮気してんのってむしろ自然の摂理じゃね? 特にあいつみたいに、こう、世界に対してオープンでいる奴はさ。次から次に新しい情報が流れ込むから、興味も関心もそっちに移っちまうの。古い俺は、そりゃまあ見向きもされなくなるわな。
うん、やっぱりあいつの浮気癖はどうしようもない。






「――と、俺は思ってんだけど」

「お前なぁ…」


客の引いた昼過ぎのファミレスでメロンソーダを啜りながらつらつら語れば、向かいに座る友人は呆れたように息を吐いた。


「お前はそれでいいのか? つか、お前がそんな態度だからあいつも調子に乗るんだろ」

「だーかーら、どうしようもないんだって。そもそもお互い男だぞ? 束縛とかしたくねーしされたくねーし? 女に触りたいのも分かるしな」

「…お前ら本当に恋人同士か……?」


ついに頭を抱えた友人にからから笑う。


「いや、もともと幼なじみの延長だし。告ってきたから頷いて、まあそれで1年もったんだから充分だろ」

「そんなものか?」


グラスの中の氷をストローで掻き混ぜながら、俺はただ笑顔を返した。



ああ、そうさ。
結局、その程度の想いだった。

あいつの突拍子もない発言に振り回されるのはいつものことで。
『好きだから、付き合ってよ』
その軽い告白に、はいはいと流すように返事したのもいつもと同じ。

ただ、それからしばらくは、あいつは俺を本当に愛おしいというように扱ってくれて。
――その声に、眼差しに、ほだされてしまうなんて。

ああ、なんて滑稽な喜劇。
芽生えた想いすら、始めからなかったかのように語らなければやってられない。


「で、あいつは今日も浮気か?」

「ご明察。可愛い男の子だったよ」

「…お前、今日誕生日じゃないのか?」

「おー、よく覚えてんな。友達がいのある奴…」

「いいのかよ」


予想外の言葉の鋭さに目をしばたく。真剣な瞳に怒りと心配を浮かべる友人に、知らず頬が緩む。

いいのかって?
そんな訳ない。

だけどさ、


「言っただろ、」


どうしようもないんだって。







Resignation
(きっと最初から諦めていた)







浮気性×サバサバ系幼なじみ。
浮気を許容してる訳じゃないが仕方ないと諦める受。
攻にはちゃんと愛があるはず。



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