例えば、だけど


「もしも今、世界が終わるってなったらどうする?」

「――は?」

前々から馬鹿で阿呆と思っていたが、ついに壊れたらしい。
「だから、世界が終わるんだよ」
「――一度ドライアイスで頭冷やしてこい。取ってきてやるから」
「俺は佐久間を――」
「やっぱ火達磨なってこい」
取り敢えず目の前の茶色を殴っておく。
「つーか何でいきなりそんな話なんだよ」
「いや、ちょっと昨日テレビで見たから」
源田曰く、近々世界は大災害で人類は滅亡するらしい。
………正直、だから何だ。
「……そんなの信じてンのかお前」
「んー信じるの前にたとえ話」
「だからそれを信じるって言うんだろ」
「む……、そうなのか?」
「そうだろ」
はあと一つ溜め息が漏れる。………こいつといると体力使う…。
終いには頭がくらくらしたり痛くなってしまう。
「――もういい。疲れた。寝る」
「あ、まだ佐久間の聞いてない」
ウゼぇ
「だあああっ!ハイハイわかったから黙れ。答りゃいいんだろ、答えりゃっ!」
というかそもそもお前のせいでこんなことなってンだろーがこの野郎。
まるで餌をもらったペットのように目をきらきらと輝かす源田。そんな見んな、視線がイタすぎる。
――うし、さっさと終わらすか。
「俺は、別に特別何もしない」
「え」
「言い終わった。寝る」
「えっ、ちょ、ま」
しつこくやってくる目の前の輩に脚で一発食らわす。
仮にもFWの蹴りは相当きくだろう。
蠢いている物体Gを無視し、眠りについた。




――そう、何もしない。
こうやって愛しい人間と最後までいれるのならば、世界もそう、悪くもないと思う――。



(そのとき、俺は多分一生を楽しかったと言えるのだろう)