ゆらゆら。
さらり、するり。
「どうした、豪炎寺?」
何でもない、と首を振ると、そっか、と安堵の声が聞こえた。
昼休みの屋上。
初夏の風は爽やかに頬をかする。
手に持つ飲料水が太陽に照らされ、光を纏う。綺麗と思うが、生憎更に美しいものが眼中を過っていた。
「涼しいな」
「今日は風があるからな」
そんな他愛ない会話。
きらきらと光を帯、風に揺れる空色の髪。
深みがあり、大きく宝石のような淀みなき瞳。
それに自分より小柄でしなやかな、華奢なその身体。


きっと今までの人生で、一番きれいなもの。


ふわりふわり。
くるり、そろり。
その姿は何処かで視た蒼い蝶。
光も闇にも融ける、そんな、


「風丸」
「ん?」


そんな貴方を愛している、と言えば貴方はどう思うのでしょうか?


ゆらゆら。
さらり、するり。
ふわりふわり。
くるり、そろり。
蝶は今日も風と戯れる。