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夕餉の時だった。


「あっつん、これ食べて?」

「遙香。好き嫌いをしてはいけない」

「え〜‥‥‥つれないなぁ‥‥重衡さぁん‥‥」



右隣のあっつんが食べてくれないので、私は左隣の重衡さんを見る。

重衡さんも私を見ていたので、すぐに目が合った。


「可愛い遙香の頼みとあれば、仕方ありませんね」

「ありがとう!重衡さん大好き!!」

「私も遙香が大好きですよ」


重衡さんは優しいなっ!!


「‥‥‥クッ‥遙香は、まだまだお子様だな‥‥‥」

「は?何か?知盛」


いちいち突っ掛かる正面の知盛にムッときたが、左手に持った刀が怖いからあまり言えない。


苦手だわ、コイツ。



そんな事を思った時だった。



頭に梅だの桜だの挿してる男の一言で、全てが変わったのだ。




「そろそろ、遙香殿の嫁入りの相手を決めねばなりませんね」

「うむ。そうであったな!」










嫁入り?


誰の?




‥‥‥‥‥って私!?




【平家式妻問事情】









「ちょっと待たんかい!!」


勢いよく立ち上がった私に、全員の視線が注がれた。



「惟盛!!何言ってんの!?
頭に花挿してるからって何しても許されると思うな?
清盛様も勝手に同意なさらないで下さい?」



惟盛が「キィィ小娘が!」とか言っていたがスルーして、清盛様をじっと見た。

「しかし、そちは今年で‥‥」

「二十歳ですね」


私の代わりに爽やかな重衡さんが答えた。
そりゃあ将臣と平家に来て三年だから、二十歳だけどさ‥‥



「そうであろう?このままではそなたは、一生独身で寂しい余生を送らねばならぬ」

「‥‥‥ほっといて下さい‥‥」


むしろ一生独身でいい。


「それでの、そなたを欲しいと思うものに譲ろうかと思ったのだが」

「‥‥景品?私は景品ですか?清盛様」

「クッ‥‥‥景品でなく、粗品だな‥‥」


コイツいつかぶちのめす‥‥‥!


「‥‥‥無理だな‥」

「考え読むなぁ!」

「‥‥‥‥と言う訳で明日、遙香を最初に捕まえた者が嫁に迎えると言う事で良いな?」





「はぁっ?」
「叔父上!?」
「父上っ!!」
「クッ‥‥‥」




一日中逃げるのは大変だからと、条件は付けられた。

食事時と、自室にいる間は免除。




こうして私の逃亡劇は始まったのだ。







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