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初めてお前に会ったのは、修羅場だったね。








あいの言葉





「いい加減にしてよ!あなたなんかいらないって言ってるのに!」


怨霊退治を今日も終えたヒノエが、六波羅の隠れ家に立ち寄ったのは、日も暮れかけた秋の事だった。


(――女の声?)


目立たない路地の奥から、男女の言い争う声がした。

「俺が悪かったって謝っているだろ!もう他の女に会わねェから許してくれよ!遙香!」

(冷めちまった相手にすがりつくなんて‥‥‥情けないね)

ヒノエの足がそちらに向いたのは、気紛れか好奇心。

ただそれだけだった。

(ま、姫君が危ない目に会うのは止めないとね)

「別に他の娘の所に行ってもいいのよ?――私はあなたなんていらないもの。愛なんてない」

「なっ‥‥‥お前こそ、俺には何もさせねェと思ってたら‥‥‥他に男でもいるんじゃねェか!?」


(うっわ、最低野郎。
自分の非を相手に擦り替えるなんて下衆だね。そりゃあ姫君の心も離れて当然じゃん。)



ヒノエは暗がりに身を置いて、暫く様子を見ていた。


その時、切れた男が手を振り上げようとしたのを見て、風の様に走り込む。


パシッ、と男の拳を片手で掴み、ニヤッと不敵に笑った。


「誰だよテメェ!!」


怒り狂う男を空いた手で押し退けて、先程、男が口にした名前を呼ぶ。

「遙香、怪我はないかい?」


「は‥‥はい!」






振り返った瞬間彼の目に飛び込んだ、








黒く揺らめく眼










息が 止まる 気がした。



「テメェ!!人の女に何を―ッ!?」



気が付いた時には、柔らかい身体を抱き締めて、貪るように唇を重ねていた。


彼女―遙香―も一瞬だけ身を強張らせたが、背中に腕を回してきた。










一目惚れ、だった。







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