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 嘴平伊之助が目を覚ました後、鼓屋敷で亡くなられた方々を埋葬した彼らは鎹烏の指令により、藤の花の家紋の家に辿り着いた。賑やかな道中、善逸がうっすらとにやけを浮かべていたことに炭治郎と伊之助は気味悪がっていたがなまえは何やら楽しそうに微笑んでいた。


「お食事で御座います」
「お布団で御座います」

 ぬるっとオバケの様に姿を現した家主の老婆は異様に全てが速かった。妖怪だと言い張る者にクスリと笑みを溢す者と拳骨を落とす者、自分の興味ものに夢中な者。道中に限らずこの面子で過ごすと賑やかなようで笑いが絶えない。

 夜の帳も過ぎた頃。
 寝静まり、寝息がかすかに聞こえてくる部屋でなまえはむくりと体を起こした。視線だけで回りを見渡すと物音を立てないようにゆっくりと布団から抜け出す。
 ぴた、と足裏に伝わる冷たい床にふうと息を出すとそのまま縁側へと足を向けた。
 夜を見渡せば月に雲が覆いかぶさっている。百入茶色の瞳に映る闇は一層濃く、深い。
 腰を下ろして足をぷらぷらと揺らしていると、ふと気配を感じて視線を向ける。

「……なまえ、ちゃん?」
「我妻くん。どうされました?」

 目を擦りながらくわ、と欠伸を拵えた善逸は「隣、いい……?」と承諾を得てから腰を掛けた。

「物音がして。そしたらなまえちゃんが隣にいないから」

 眠れないの? ええ、少し。
 そんな会話を交えて空を見上げる。

「月、隠れちゃってるね」
「ふふ。今日は雲が多いですから」


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