恐る恐るとジャージのジッパーを引き下ろしていると、低い声と共に後ろからヌッと手が伸びた。

「緊張してんの……?脱がすの、手伝ってやろうか」

「わあっ!だ、大丈夫!一人で出来るってばよ!!」


GUN・DOG/藤貴様

後ろから密着し、ナルトの上着のみならずズボンの留めまで外すカカシに、ナルトはギャアと叫び声をあげてズボンを引き上げる。



すると、

「カーーーット!!」

と高らかな声が響いた。

「ダメダメ。うずまき君、そこは『うん……』と恥じらって先生に身を任せるとこだろ」

NGを突きつけるその声の主は、椅子に腰掛けて帽子を深く被り、眼鏡をかけている。
最近巷で流行りのボーイズラブを主に取り扱っている売れっ子小説家だ。

任務帰りにナルトとカカシが二人で歩いているところに、報酬を弾む代わりに少しでいいから協力してくれと依頼してきた。
今度の小説のテーマは「先生と生徒」なのだそうで、たまたま見かけたカカシとナルトがそのイメージに近かったのだそうだ。

「報酬って?」

ナルトがカカシを見上げて、カカシがその小説家に目をやると、

「十万両でどうだろう」

と交渉され、充分だと二人は頚を縦に振った。

しかし、ナルトは今現在、顔を真っ赤にして座り込み、嫌々と頚を横に振っている現状だ。

「だって、なんかハズ過ぎるんだってばよ!そんで、カカシ先生がヤらしすぎる!!」

与えられた台詞と行動の通りにしているカカシは特にそんなつもりはないので、過剰に反応を示すナルトに少し困り顔だ。
しかし、カカシの演技はどこかリアリティーがある、と認めたのは恥じらうナルトだけではなかったようで。

「うーん……。本当に絡むわけでもなし、今後の展開を考える為の掴みだけでいいんだよ。なんでそう恥ずかしがるかな」

と腕を組んだ小説家は
「もう少しでいいもの浮かびそうだってのに。先生は上手いのに、残念だなぁ」
と続けた。

「そうだな。じゃあ、こうしませんか。生徒は私の方でまた別な人間を見繕ってくるんで、先生役ははたけさんのままでもうちょっと付き合って貰うってのは……」

「「え」」

言ったのは、カカシとナルトほぼ同時だ。
カカシがナルトに目をやると、座り込んだままのナルトも同じようにカカシを見て、すっくと立ち上がり、小説家に向き直った。

「それは、ダメだってば!!」





結局、断ってしまったので十万両の話は水の泡になり、

「惜しかったな……。十万両」

帰り道、歩きながらポケットに手を突っ込んだカカシが隣でポツリと呟いた。

「お前がもうちょっと上手くやってくれたら良かったのに。恥ずかしがり過ぎでしょ」

「っ誰のせいだってばよ!」

「え、俺のせいじゃないでしょうよ」

「カカシ先生がいちいちヤラシ過ぎるせいだってば!」








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