カカシSIDE





「俺、カカシ先生の教えちゃんと守ったってばよ!」

そう言って無邪気に、満面の笑顔でカカシを見上げてくる教え子。

それには確かに

(コイツ…、可愛いなぁ)

と思ったものの。


「ナルト、誤解だ!」

「来るなってばよー!」

その後、周りが言い出した。
男同士でも…とか、カカシとナルトの二人は前から怪しいと思ってた…とか、勝手なことばかり。

そんなのカカシだって考えたこともなかったのに、言われて思わずナルトを見て、目が合った瞬間、カカシは一瞬そんなことを――…

つまり、ナルトと抱き合ったりだとか、もしくはそれ以上のことをしたりだとかを想像してしまった。


「向こう行けってば!」

「だから、誤解だって言ってるでしょ!」

そんなやり取りの末、今、カカシは自分から全力で逃げているナルトを追っているわけで。
ちょっとそれってどうなのよ、と思ってしまう。

「ナルト!」

グッとナルトの腕を掴んだ時には、だいぶ走ってきたからか。
気づけばもう他の皆からは姿が見えない所まで来ていた。

「離せってば!違うんだったらなんで追っかけてくんだよ!?」

「なんでって、お前が逃げるからだろ?…ていうかそんなに俺が嫌なの?ちょっとショックなんだけど…」
「……」

そこまで拒否されるとは。
見下ろすと、ナルトはカカシを睨んでくる。

「当たり前だろ!?だって…男同士なのに!」

「そりゃまあ…。でも実際違うんだから周りの言うことなんか気にしなきゃいいじゃないの」

「気にしなきゃって…できるわけねーってば!」

でも、この状況ではそうするしかないというか。
何て言うべきかね…と思っていると、ナルトが俯き加減に窺うようにして訊いてきた。


「…カカシ先生は、ヤじゃねーのかよ?」

「……うーん…」

少しの沈黙の後、

「……ま、人の噂も七十五日って言うじゃない」

カカシは答える。

「七十五日!?ながっ!!」
「まあまあ。ほっとけばその内飽きるって」

言い分としては「ムキになって否定すればするほど怪しまれるもの」。
焦って「違うんだって!」と言う方が却って真実味がある風に見えるものだ。
ナルトは納得のいかない顔をしながらも、カカシの言い分にしぶしぶ従った。


――けれど、人の噂は七十五日。

一ヶ月後には、そうでもなかったかなと思うカカシがいた。

「お、来たぜ。お二人さん」
「ヒュー!今日も仲いいわね!」

「……」

「……」

そんな仲間たちの言い様に、やってきたナルトとカカシはの二人は顔を見合わせる。

「どういうことだってばよ!?」

「ん〜…。俺にもよく…」

「カカシ先生の嘘つきーーっ!!」


騙された!と隣で叫ぶナルトの顔は真っ赤である。

そう。一ヶ月後には、里全体に知れ渡り、すっかり公認となっている二人がいた。


…だけど、カカシにはまだ答えていない質問がある。

『…カカシ先生は、ヤじゃねーのかよ?』


(……嫌じゃないよ)

なんて、今のナルトにはまだ言えそうもない。












END(20090817)







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