洗面台の引き出しからタオルを取りだし、それをナルトの頭に被せてワシャワシャと撫でる。

それに猫のように目を細めてナルトは言った。

「カカシ先生に会いたくなって、…だって、俺がエロ仙人との修業から帰ってきてから、あんまり二人で会ったことねーよな?だから雨降ってたけど会いたくなって走ってきたら思った以上に濡れちまって」

「……」

ナルトは本当に以前から変わらない。
考えなしで無鉄砲なおバカで、誰よりも真っ直ぐで。

数年とおいて傍にいる、そんなカカシとナルトの関係性は元先生と教え子。兼、現上司と部下。

そしてもう一つ。元――恋人同士。


(いや…、違うか…)

ふと苦い笑みを浮かべたカカシは考え直す。
付き合っていると思っていたのは、きっと自分だけ。

ナルトの頭を拭いている手を止めて、カカシはその子を見た。


『俺がエロ仙人との修業から帰ってきてから、あんまり二人で会ったことねーよな?』

記憶は遡る。

ナルトの言う通り、ナルトが自来也との二年半という修業に出る前はよく二人で会っていた。

「好きだってば」と抱き着いてくる小さなナルトを、「俺もだよ」と笑って受けとめて。

よく家に泊めたし、抱き締めて一緒に寝た。

ナルトは本当にまだ子供だったから、セックスはおろかキスすらもカカシはしたことはなかったが、別にただの馴れ合いのつもりはなかった。

真っ直ぐにカカシを見上げて笑いかけるナルトが愛しくて、慕ってくれる「好き」の意味が、恋愛感情としてだよな?と敢えて確認せずともそうだと思っていた。

付き合っていると思っていたのだ。


それから暫くして自来也と修業に出かけて行ったナルトを待ち続け、二年半の歳月を経て漸く再会したのがつい先日のこと。

成長した恋人の姿に素直に喜び、「おかえり」と笑いかけつつも、年甲斐もなくドキドキした。
ナルトが子供の時には指一本触れることができなかったが、今なら――…と淡い下心まで抱いた。


けれど、任務帰りにサクラも交え一楽に行った時。

「ナルトったら背も伸びて、なんか大人っぽくなったわよね!もしかして、里を離れてる間に彼女でもできたとか!?」

茶化すように言ったサクラにナルトは恥ずかしがる様子もなくカカシの目の前で言ってのけた。

「へへ、まーな!すっげー可愛いんだってばよ!今度サクラちゃんにも見せてやるってば!」


――目の前が真っ暗になった気分だった。

二年半、ただひたすら帰りを待って。他に声をかけられても、見向きもしなくて。ずっとずっとただナルトだけに会いたくて。
やっと再会することができた恋人の口から聞いたのは、他にいい相手ができたという知らせ。


ナルトが里に帰ってきてからあまり二人で会っていないのは、偶然ではなく、カカシがナルトと二人きりにならないよう避けている為だった。









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