忍として(一部設定)





「カカシ先生!」

後ろから、タックルするようにして体重がかかった。

抱き着かれる前から気配に気付いていたし、ナルトみたいな軽い子に抱き着かれたところで負担になんか全然ならないのに、さも今気付いたようなふりで、重かったようなふりをして、俺は「おっと」とよろめく。

「どうしたの」

「サクラちゃんとサスケ先に帰っちまってさー、デート邪魔したらただじゃおかないから!って言われたから」

言われたから?
だから、先生と帰りたいとでも言いたいのだろうか。
ナルトの手は俺の腹の辺りのベストを掴んだままだ。

「じゃー先生と一緒に帰る?」

「……」

おどけた口調で手のひらを差し出せば、ナルトは俺の顔を上目遣いで見た後、辺りをキョロキョロと見渡して人がいないことを確認し、手のひらにナルトのそれを乗せてきた。

手を繋いで帰りながら、見上げた空は暮れかけて赤い。
繋いでいる体温は子供特有で温かい。

(ナルト……)

俺はね、本当は、お前が思っているような良い先生じゃないかもしれない。

波の国で再不斬や白と戦って、サスケが仮死状態になった時、内心やるせなかった。
忍として、上司として。
俺が傍に居ながらと。
でも、その一方でそうなったのがお前じゃなくて良かったとも思った。
それは、忍としてではなく、上司としてでもなく、はたけカカシという一人の人間として。

お前が無事で、あの後辛い戦いを目の当たりにして小さな手で俺の服の裾を掴んだことや、今こうして与えられている温もりに安堵している。

平等なんかじゃない。
俺は、この子が可愛い。


「なー先生。カカシ先生ぐらいに強くなるにはやっぱりすんげー修業が必要なんだよなー?」

「そうだな。ま、血の涙を流すくらいには」

「でえっ!?マジぃ!?血の涙って……」

「ウソウソ」

……本当は、本当。
忍という職業柄、成長過程で大事な人を一人も亡くさないなんてことはきっと不可能だ。
憎しみも悲しみも、きっと今以上に知ることになる。

可愛いお前にそんな感情を背負わせたくないけれど、それはやっぱり無理だから。
だから、ひどいかもしれないが、俺は再不斬と白に感謝すらしてる。

やつらは敵だったが、根っからの悪人じゃなかった。
やつらがナルトに残したのは、負の感情だけではなかった。

忍というものが、感情のない、辛いだけのものだとナルトに思わせたくなかった。
そうしたら幼いナルトはこの先ずっとそれを心に引っかけてしまうだろうから、そうでなかったやつらに感謝してた。

俺は、やっぱりナルトが基準で、積ませる経験が如何に今後のナルトの糧になるかといつもそればかりを考えているから。
忍として一流だと言われても、上司として平等だとは言い難いかもしれない。

……すまん。サスケ、サクラ。








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