叶わない願い(未来設定)





将来の夢は火影。

サスケを取り戻すことは諦めない。

どっちの夢も、俺は初めて聞いた時、半信半疑でナルトを見た。
こいつならって思う気持ちと、いくらこいつでもって思う気持ちと。
どちらの夢も、あまりにも難易度が高く、口先だけで叶えられるようなものじゃなかった。

だけど、あれから数年が経って、ナルトは火影になった。
サスケは里に戻ってきた。

ナルトが、ナルトの手で掴み取った夢だ。

叶わない願いはないってことを俺はナルトのすぐ傍で目の当たりにした。

俺にも願いがある。
他者から見れば、馬鹿なことをと一笑されそうな願いだ。
それでも、ナルトならがむしゃらに突き進んできっと実現するんだろう。

だけど……俺は、自分のことになると、やっぱりダメだ。
まだ何もしていないのに、最初から無理だと決め付けている自分が居る。
俺は、今はもう火影となったお前の元先生なのにな。

情けない。





久々に顔を出すと、振り向いたナルトが「カカシ先生」と笑みを浮かべた。
窓の傍に立ち、眩しそうにこちらを見るけど、俺にはそんなナルトの方が眩しい。
羽織が、良く似合っている。

「六代目。先日の任務の報告書です」

「あぁ……、うん」

ナルトは席へと向かいながら俺の顔をチラリと見たが、渡した書類を受け取ると椅子に腰掛け、真剣な顔でパラパラと目を通し始めた。
こんな日が来るなんてね。
本当夢のようだよ。

バサリと書類を置いて「問題ねぇってばよ」と顔をあげる。

「そうですか。では……」

「先生」

俺の声を遮るようにしてナルトが声をあげた。
整った眉が下げられている。

「普通に話してくれ」

「……」

……もう、確か二十四だっけ?

いい大人のはずなのに。
相変わらずこんな時は捨てられた子犬のような顔をする。

「……ま、ケジメはある程度つけとかなきゃならんでしょ」

「分かるけど、周りに誰も居ない時くらいはいいだろ。今は二人きりなんだ」

「それはお前が人払いしたからでしょ」

俺と入れ違うように側近の者が離れるのを見た。
恐らく、少し離れたところで様子を探ってはいるだろうが、わざわざこんな風に二人きりとかにされたら俺が気まずい。

「……」

「……」

久々に元上司に会って、懐かしかったのだろう。
ナルトは昔を語る流暢な会話を俺に求めたのかもしれないけど、生憎俺にはそんなもの最初っからないんだ。
沈黙は金、雄弁は銀とは良く言ったもんだ。

望むようなやり取りが得られなかったからか、ナルトは溜め息をついて椅子の背に凭れた。

「……引き留めて悪かったってばよ」









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