弱音 カカシ先生は、いつだって強くてかっこよくて、俺の憧れ。 それは多分、いつかもし俺が先生より強くなって、先生以上の忍と言われるようになったとしても変わらないだろう。 だって俺の尊敬する先生の強さは、腕や忍術から派生するものじゃなくて、その心。 仲間を思う姿勢やその優しさからあるものだから。 同じ班で、先生の部下。 それは俺にとって誇らしいことだけど、先生は俺のことをどう思っているのか。 俺は最近それがやけに気にかかっていた。 先生も、俺を……俺のことを自慢の教え子だって、誇らしい部下だって思ってくれているだろうか。 俺は任務中、あまり先生に任されたり頼られたりした記憶がない。 それは先生からすれば、やっぱり俺が忍としてまだまだだからなんだろうか。 「ナルト、下がれ!」 空気が、斬れたように冷たくなった。 敵が俺に切り付けた武器は、二重刃。 俺は避けたつもりでいたけど、その陰から二つ目の刃が顔を出した。 先生が、俺を庇った。 「カ、カカシ先生」 今……。 今、刃は、先生の胸元を切った気がする。 傷が……。 「……かすり傷だ。油断するな」 「……」 良かった。 先生の言葉に安堵する一方で唇を噛んで、俺は自分を悔いる。 経験、知識、裏を見抜くに長けている目。 あらゆるものが足りなくて、先生に言われるまでもなく俺はまだまだだ。 強くなったと思っていても、それは忍術や仙術といった技術面だけ。 隙を狙われて仲間を危険に晒すようじゃ、ダメなんだ。 サクラちゃんは別の任務に引っ張られていて、先生と俺とサイの三人での任務を終えたのは、夜。 空は暗くて、先生はいつになく疲れてるみたいだった。 戦った敵は強かったし、先生は写輪眼を使っていた。 きっとまたチャクラ不足に陥っているんだろう。 同じように気付いたサイが、気遣って先生を見た。 「里までまだ結構距離があります。今日は近くの宿で休んでいきましょう」 「……あぁ」 答える先生は、何だか顔色が悪くて、 次の瞬間、ふらついた。 「カカシ先生」 慌てて支えた俺は、ハッとする。 「先生……」 辺りが暗くて、良く見えなくて、気付かなかった。 先生のベストは湿っていて、血の匂いがした。 まさか……、なんで。 『……かすり傷だ』 あの時の。 俺を庇った時の。 「サイ……」 「……失血のせいだ」 助けを求めてサイを見れば、サイが眉を寄せた。 カカシ先生のベストを引き下ろすと、中のアンダーシャツは血でぐっしょりと濡れていた。 前へ 次へ戻る1/5 |