ギシ、とベッドを軋ませて身体を起こし、立ち上がった。

振り向いて後ろを見れば、まだお休み中の恋人が寝入ったままだ。
昨夜、結構遅くまで付き合わせてしまったからお疲れなのだろう。

眩しい朝日が入り込み始めた中、眠気覚ましにコーヒーを煎れていると、毛布から少しはみ出ている寝癖のついた金髪がモゾモゾ動いた。

「……先生?」

続いて覗いた目はひどく眠そうで、呼んだ声は掠れている。

「あぁ、ナルト。起きた?おはよ」

シンクに腰を凭れ、マグカップの中のコーヒーを飲みながら言えば、恋人……ナルトはこちらの姿を見て、顔を真っ赤にした。

「何でまだ全裸なんだってばよ!服着ろってば!!」

確かに全裸だけど、強いて理由を言えば起きて早々服を着るのが面倒臭かっただけで。
昨夜ベッドの上に脱ぎ捨てたままだった自身のワイシャツを投げつけられて、熱いコーヒーを飲んでいる最中だったカカシは「危ないでしょ」と言いながら避けた。

「ったく、お前っていつまで経っても慣れないんだね〜。初心なところは可愛いけど」

マグカップをシンクに置き、床に落ちたワイシャツに素肌の腕を通す。

「これでいい?」

ベッドに寄っていって膝をつき、ナルトに近寄ると、

「隠すとこ間違ってるだろ変態!!」

と今度は枕を顔に押し付けられた。

「だってナルトがシャツだけ投げて寄越したんじゃない。下はまだ穿かないでってことでしょ?今から使うもんね〜」

「使っ……!わ、あ、ちょっと!カカシ先生、もう七時!遅刻するって!」

覆いかぶさって首筋に吸い付いたところでナルトが叫んで、仕方なく「えー嘘……」と時計に目をやったら本当に七時を回っていた。

「はぁ……。せっかく楽しもうと思ったのに」

「……」

警戒するように鼻の上まで毛布を引っ張り上げたナルトに睨まれ、後ろ髪引かれるような思いで身体を退けた。
仕方ない。
楽しみはまた今夜にとっておこう。





八時半になり、始業開始のベルが鳴った。

「じゃあ、出欠とるぞー」

受け持ちのクラスの教壇に立って、カカシは言う。

職業は高校教師なのだ。

生徒達はもう皆揃っているようだが、唯一教室の一番左奥の席だけが空いている。

(あいつ……、二度寝したな)

思ったタイミングでドタバタと騒がしい足音が廊下から聞こえてきた。
次いでドアがガラリと勢い良く開けられる。

「すっすみません!遅刻しました!」

ハァハァと息を切らせて顔を見せたのは金髪の少年。
余程走ってきたらしく、汗だくで肩を上下させている。
肩からずり落ちかけた学生鞄を手に持ち、席につこうとしているその少年にカカシは言った。

「寝坊でしょ。夜はちゃんと早く寝ろよ、うずまき」

「……」

軽く注意した後、出欠確認に戻った担任を、少年は恨めしそうに睨みつけた。

(夕べ、無理させたのは誰だってばよ……)


同じクラスの担任と生徒。

関係は誰にも秘密だが、開始してからもう半年近く。
誰にバレることもなく、二人はうまくいっている。












END(20110213)





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