「やっぱりケーキが悪かったのかしら……」

「……クゥン」

ソファに腰掛けたクシナが一人呟くと、隣の銀色の成犬がその顔を見上げて鼻を鳴らした。
立派な尻尾は今はすっかり垂れてしまっている。


ペットショップを営む波風ミナトと、その妻クシナ。
そして、そこで飼われている銀色の成犬……カカシと金色の子犬……ナルトは現在、動物病院に居た。

昨夜、カカシの誕生日であった為、ミナトは誕生日ケーキを買い、それを二匹に与えたのだが、どうやらそれが合わなかったのか、夜寝る時は普通だったのに、
朝方、ナルトの方が嘔吐し、下痢を催したのだ。

ナルトの行動を逐一見ているカカシはその異常に気付き、吠えに吠えてミナトやクシナを起こし、今こうやって連れ立ち、動物病院にやってきていた。
ミナトやクシナはとりあえずカカシは店に置いていこうとしたのだが、ぐったりしているナルトの周りをカカシはグルグル回り、心配そうに鳴いてどうしても離れようとしなかったので一緒に連れてきていた。

現在はミナトがナルトと共に診察室に入り、クシナとカカシが待合のソファに座って、一人と一匹が出てくるのを待っているところである。

「でも、ケーキが合わなかったんなら、なんでチビだけなのかしら。カカシも食べたわよね?」

「ウォン……」

「小犬だし、デリケートだったのかな……」

しばらくしてミナトが診察室から出てきて、カカシはすぐさま腰を上げ、ミナトの下に駆け寄った。
ミナトの腕に抱かれて眠っているナルトを見上げ、キュウンキュウンと悲しそうな声を出す。

「どうだったの?」

クシナに問われ、ミナトは困った顔で答えた。

「食べ過ぎだって」

……それもそのはず。
カカシの誕生日ケーキだったのに、昨夜、ナルトはそのスポンジ部分含め、ほとんどを一匹で食べてしまっていた。
カカシはナルトが食い散らかした残骸や顔につけたクリームを綺麗に舐めとった程度だ。

身体の大きなカカシが食べるのであれば食べ過ぎという量でもなかったのに、小さなナルトが食べたものだから、身体に見合わない量を食べてしまったのだ。
たまに二匹の様子を見ていたミナトやクシナは、カカシがケーキの残骸を食べているのを目にし、何だかんだと二匹仲良く食べたものだと思っており、まさかほぼ全部をナルトが食べたとは思っていなかった。

最後らへんナルトはゲップしながら食べていたから、カカシもさすがに

『お前、食べ過ぎじゃないの?』

と口元を舐めてやったりしたのだが、ナルトは

『だってうめえんだもん!』

と嬉しそうにしていたので、まあいいかと思っていたのだ。

「とりあえず一食分抜くように言われたよ。それで元気になってきたら水だけ与えて……元気にならなかったら、また様子見」

「チビってば身体に似合わず頑張って食べちゃったのね」

クシナがハァと息をつく。
ナルトの状況が分からないカカシはワウワウと下から二人を見上げ、鳴いていて、ミナトがナルトを抱いたままカカシの前に腰を下ろした。

「大丈夫だよ、カカシ。食べ過ぎだって。すぐに元気になるよ」

「……」

ミナトの顔をじっと見たあと、カカシは腕に抱かれているナルトの匂いをクンクンと嗅いでその耳を舐めた。








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