元々、少し前、カカシが自宅にて任務の所用でパックンを口寄せしたのが、そもそも間が悪かったわけで。
居間で口寄せした後、用件を済ませ、パックンが消えようとした時に後ろから声がした。

「ぉー?」

それは、言わずと知れたカカシとナルトの愛娘、アオイで。
ナルトの後ろからトコトコついていっている途中にこちらに気付いたらしく、初めて見るパックンに目を丸くして瞳をキラキラと輝かせた。

「ああ、アオイ。パックンだよ、『初めまして』しな」

大体が家に呼び出すことはあまりなかったので、パックンとアオイは初対面。
カカシに言われ、アオイは頬を紅潮させ、ふんふんと鼻息を荒くした。

「ぱっくー、じゃーして!」

「……」

パックンとしても、カカシの娘のアオイを見るのは初めてだった。
パッと見は髪の色がカカシと同じ為、アオイはカカシに似ているように見えるが、無邪気さや天真爛漫さはどちらかというとナルトそのものだ。
ファーストコンタクトの時に、もう嫌な予感はしていた。




「……カカシ、お前の子は拙者をペットか何かと勘違いしとるんじゃないか?」

予感は当たり、パックンは一目でアオイのお気に入りになったらしい。
任務とは関係なく呼び出されたのはこれで三回目で、今も首を絞め落とされんばかりの勢いで小さな手でギュウギュウと抱きしめられている。

「まーまー固いこと言わずに付き合ってやってよ。アオイはパックンが好きなんだから」

主要点をごまかすカカシだが、アオイがパックンをペットだと思っているのはまず間違いない。
見かけが犬だからそれはもう仕方ないと思うが。

「いつもごめんなーパックン。先生が横暴なのは今に始まったことじゃねーから諦めてくれってばよ」

「フォローになっとらんぞ、ナルト……」

カカシの隣にドッコイセと胡座をかくナルトはいよいよ腹が出てきている。
お腹の中の二人目が男の子だと判明し、カカシと大喜びしたのはつい数日前の話だ。
よってアオイはあと半年も経たない内にお姉ちゃんになるのだが、とはいえアオイ自身がまだ幼いので、毎日が新しい発見の連続である。

ペラペラとパックンの耳を掴んでめくったかと思うと「こんちゃー」と中に向かって叫び、やられたパックンは飛び跳ねて「たまらん」と逃げだそうとしたが、今度は尻尾を掴まれて引きずり戻された。
パックンがそんな災難に巻き込まれている中、呼び出したカカシは、ナルトが「あっ動いた」というお腹に「本当?どれどれ」と耳を押し当てていて、気付きもしない。

しかし、ふと顔を上げて目に入ったパックンの表情があまりに悲痛なものになっていたので、流石に可哀相になって
「アオイ、ちょっとおいで」
とアオイに手招きした。

「ぐえっ」

ポイッと手放されたパックンが潰れたような悲鳴を上げる。
アオイが言われた通りカカシに向かって素直にちょこちょこ歩けば、カカシは自然な動作でアオイを抱き上げて自分の膝の上に乗せた。
子供がいることに慣れて、近頃すっかりお父さんの顔が板に付きつつある。









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