カカシがアオイを抱いたまま連れ出した外は、天気が良く、絶好のお出かけ日和だった。
吹く風が爽やかで気持ちいい。
カカシと同じ銀色の、カカシとは違う猫っ毛、アオイの髪が風に靡き、ソヨソヨと揺れる。

「風が気持ちいいね」

「?」

意味が分からないアオイは、カカシの声かけに頚を傾げてみせる。
ナルト譲りの空色の瞳が不思議そうにカカシを見つめて、その仕種がとても可愛らしい。

「風」

「??」

「まだ分かんないか。『先生』って言ってみて」

「んせー!」

「その勢いは絶対ナルトの影響だよねぇ」

せっかくこんなに良い天気なので、一人でちょこちょこ歩けるようになったアオイにも歩かせてやりたいが、アオイは何せ手足が短い上に全然応用が効かない為、ちょっとした段差などで高い確率で躓いて転んでしまう。
その辺の路地では危ないと、カカシは近くの公園に足を向けた。


そこまでは良かったのだが、時は昼下がり。
いざたどり着いた公園は、多くの若いお母さんやその子供達で溢れていた。

砂場やブランコ、滑り台で遊ぶ幼い子供達から少し離れたところで井戸端会議をしている女性達や、その反対側のベンチで話に華を咲かせている女性達。
大人の男は一人も居ない。

「……」

その光景にカカシは圧倒され、立ち竦んだが、腕の中のアオイは他で遊んでいる子供達を興味津々と見ている。
なのでカカシも気を取り直して砂場へと向かい、アオイを下ろした。
砂場に下ろされたアオイはカカシを振り向いて、どうしたらいいの?という風に見上げる。

「遊んでいいよ」

言うと、アオイは砂場に向き直り、ちんまり端に座ったかと思うと小さな手でワシャッと大胆に砂を掴み、口に近付けた。

「アオイ、それは口に入れちゃダメ」

小さな子は何でも口に入れようとするから目が離せない。
アオイの隣にしゃがんで話していると、

「あれ、写輪眼のカカシじゃない?」
と近くから声が聞こえた。

井戸端会議をしている女性達である。
元くノ一が大半を占めているからやはりカカシのことを知っているし、平時にもアンダーシャツに口布の出で立ちをしている銀髪のカカシは目立つらしい。

「カカシって、はたけカカシ?」

「見て、女の子そっくりよ。同じ髪の色」

「えっうそ!子供いるの?」

「知らないの?有名な話じゃない」

「やだ、見て見て、砂遊びしてる」

(……)

噂話をするのなら、もうちょっと聞こえないように話してくれればいいのに。
大体、やだ、砂遊びしてる、と言われても別にカカシが砂遊びしているわけではなく、カカシはただアオイに付き合ってやっているだけだ。

恥ずかしくなり、固まっていると、何も分かっていないアオイが砂を弄りながらカカシを見上げた。
公園に来た当初、アオイは何をどうしていいやらといった様子でいたが、次第にテンションが上がってきたのか「エヘヘ、エヘヘ」と満面の笑みだ。
笑うと無邪気な笑顔がナルトに良く似ている。









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