そもそも、アオイの髪を結んでいるピンク色のゴムだってサクラからプレゼントされた数色の色違いのヘアゴムの一つなのだが。
今日も

「すんごく可愛い子供服見つけて、アオイちゃんに似合うんじゃないかと思って」

とプレゼント持参でサクラが久々にカカシとナルトの家に訪れたところ、またも腹が大きくなっているナルトを見つけたというのがこれまでの経緯だ。


「もう二人目?ちょっと早くない?」

片手間にアオイの遊び相手をしてくれるサクラに眉をひそめて言われ、嫌というほど他の人間にも同じことを言われたナルトは「分かってるってばよ……」と項垂れる。

「カカシ先生は?」

「任務。俺が任務復帰出来なかった分働けって綱手のばあちゃんにこきつかわれてんだってば。最近ほとんど家に居ねーし」

「じゃあ旦那の居ない隙に好き勝手出来るんじゃない。いいなあ」

「アオイの面倒見てくれるから居る方が助かるってば」

返していると、アオイが突如ナルトに向けて「かー!うんご!」と叫んだ。
サクラは困惑したような表情を浮かべる。

「え?お漏らしでもしたの?」

「いや、最近果物が好きなんだってばよ。アオイ、りんご食べるか?」

「んー!」

「あぁ、なんだ。りんごね。……『かー』って何?」

「母ちゃんってことだよな?最近ちょっとずつ喋るんだってばよ」

賢いってば、と抱き上げて頬を擦り寄せると、アオイは目を細めて「バババ!」と叫ぶ。

「バナナも?じゃあちっさく切らなきゃなー」

そんなナルトの姿を見て、サクラは感心したように頬を両手で覆った。

「なんか……ちゃんとお母さんしてるのねー。意外……。一年ちょっと前まで男だったのにね、あんた」

「だろ?俺も自分で信じらんねぇってば」

ちょっと抱いてて、とサクラにアオイを預けて、籠から林檎を取り出し、すりおろしにかかっていると「ただいまー」と玄関から声が聞こえた。
カカシである。

顔を出し、サクラを見つけ「よ、来てたの」と軽く挨拶したかと思えば、カカシはすぐにサクラの手元に居たアオイの元に行って腕の中に抱き上げた。

「アオイ、ただーいま。今日は一日何してたの?」

カカシに抱き上げられ、アオイは「キャー!」と声をあげて大喜びだ。

「んせー!ああーうーう!」

「そっか、良かったねー。楽しかった?」

何か分からないが、何かしら伝えようとしているアオイにカカシは相槌をうって、頬を緩める。
元々いつも飄々としている上司としてのカカシの顔しか知らないサクラがその姿に衝撃を受けているとナルトが後ろから間の抜けた声をあげた。

「なんで先生今日こんなに早いんだってばよ?」

「最近あんまり残業ばっかりだったから、他の同僚に代わって貰った。あんまり会ってないとアオイに顔忘れられちゃいそうでしょ」

「そりゃねーだろ。今だってちゃんと『先生』って言ってたじゃん」

恐らくナルトの影響なのだろうが、アオイはカカシを『先生』と呼ぶことがある。
実際先程もそうだったのだが。

「ま、それも問題だよね。我が子に『先生』って呼ばれるってどうなのよ」

とカカシはそれに対して複雑そうだ。
しかし場合によりけりで『とー』と呼ぶこともあり(父さんの略だと思われる)、今は全てが見よう見まねといった感じだ。









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