「――ギャン!」 暗い森の中に、掠れた鳴き声が響いた。 …しまった。 やってしまった。油断してたんだ。 ここ最近、全然飯にはありつけてなくて。そんな時、巣穴からフラフラ〜と出たら、ぐったりと身体を横たえた鳥が目の前に居た。 天の恵みとばかりに思わず勢い良く飛び付いて――… ガシャン! その後、今の状況に至る。 俺の金色の毛に包まれた足には、人間が仕掛けた獣用の罠。食い込んで、刃に挟まれたそこからは血が滲んでいる。 ……ああ、なんで俺ってなんでこんなにバカなんだってば。 こんなんだから仲間からもバカにされるんだ。 森を照らすは綺麗な満月。 明日の朝にはきっと人間が来て、俺のことを連れてゆく。連れて行かれた先で、もしかしたら殺されちゃうのかもしれない。 早く。どうにかして逃げないと。そう思った時、 ガサッ…! 茂みから物音がして俺は身体を強張らせた。 草木を掻き分けて近づいてくる気配。人間の匂い。 ガタガタと身体が震え出す。 嫌だ。まだ死にたくない。こんなところで。 だって、本当は心の奥で決めていた。 いつか、俺と同じ同族の誰よりも幸せになって皆を見返してやるって。なのに、こんなところで… 「……」 ガサッ… 暗闇から姿を現したのは、大きい人間だった。 俺とおんなじ、多分雄。 不様にも罠に引っ掛かっている俺を見て、驚いたように目を見開いている。 「…」 「……」 俺も、その人間も互いに動かず見つめ合った。 いや、俺の方は睨んだといった方がきっと正しい。 ぐぅ、と小さく唸り肩をいからせ牙を剥く。 こんなんやったって、俺ってば身体がちっさいから多分迫力なんて全然なくて。 仲間内でも 「お前がやったって怖くねーんだよ」 なんてよく言われてた。 でも、これは精一杯の虚勢。 身体の震えを誤魔化す為の、なけなしの俺のプライドだった。 腰を屈めた人間が俺に手を伸ばす。 「…キャン!」 捕まってたまるものか。 そう思うのに、俺はいとも簡単にその手に捕われた。 前へ 次へ戻る1/20 |