長年、先生として上司として許されない想いを抱えつつ、だがもうそれも限界で、ダメ元の玉砕覚悟で思いの丈をナルトにぶつけたのはつい昨今の任務終了後のこと。 『ナルト、あの…ちょっといいかな？』 『？何だってばよ？』 自分を見つめる不思議そうなナルトの表情にバクバクと、命をかけた戦闘中にもないくらいに心臓が鳴った。 『……その…』 『…？何？俺ってばもう帰りてーんだけど』 一世一代の命がけの告白を急かされ、でも、勇気が出なくて。 『何だってばよ…？用がねーんなら、俺帰るから』 待ちきれないと身を翻したナルトの背中に、言った。 『――好きなんだ』 『…は？』 振り向いた碧の瞳が大きく見開かれた瞬間、ダメだ、と思った。 これは、間違いなくフラれる。 また“キモいこと言うな”って言われるかも(前どさくさに紛れて告白したらそう言って思いっきりヒかれた)。 勿論それは最初からわかっていて、 わかっていたけれど… ゴクリ、と口の中に溜まった唾を飲み込むと、カカシを見上げたナルトが静かに口を開く。 『別に、俺もカカシ先生のこと嫌いじゃねーけど』 『…あ、いや、そういう意味じゃなくて…』 (やっぱり、理解できないよな…) けれど、今になって後にひくことはできない。 『特別な意味で、好きなんだ…』 ナルトのリアクションが怖く、目を伏せて反応を待った。 さぞかし驚くだろう。叫ばれたり逃げられたりは覚悟の上。 しかし、数秒たってもこれといったリアクションはなく、恐る恐る目線を上げると、思いの外静かなナルトの目と視線が合った。 『…で、俺はどうすりゃいいんだってばよ？』 『え？』 『カカシ先生は俺にどうして欲しいんだってば？』 こういうのよくわかんねーんだけど、とナルトは困ったように頭を掻く。 どうって、決まってる。望みは一つだけ。 でも、それを口にしていいものなのか。 躊躇ったあげく、カカシは結局望みを口にした。 『付き合って、欲しいんだけど』 無理でも。だってナルトが訊くから。 様々な不安を抱えた告白。 それは、やっぱり相手がナルトだからだろうか。 告白の返事は思いもよらないものだった。 『わかったってば』 『え？』 あっさりした言葉に耳を疑い、いや、そうじゃないんだと狼狽する。 『ナルト、俺が言ってるのは行きたい所があるから付き合ってくれとかじゃなくて…』 『恋人としてってことだろ？わかってるってばよ、そんな、ギャグじゃあるまいし。俺そこまでバカじゃねーってば』 『……』 呆れたようにナルトに言われた瞬間、本当に天にものぼる気持ちだったのだ。 前へ 次へ戻る2/13 |