銀髪をカリカリと掻いて、立ち竦む。


…カカシとナルトがこういう関係――つまりは性別も年の差も乗り越えて恋人関係になったのは、かれこれもう一年近く前の話だ。

ナルトが自来也との長旅から帰ってきてすぐのこと。
久しぶりに再会した教え子を「成長した」と讃える一方で、カカシは部下としてだけでない特別な感情をナルトに抱いた。

込み上げる愛おしさに自分だけのものにできればと、世間一般的に許されないことだとわかっていながら思いの丈を伝え、手を出した。

その時、ナルトも言ってくれたのだ。

『俺も…カカシ先生のこと好きだってばよ』

照れながらも、はにかんで。

そうして付き合うようになって、長い時間一緒に過ごして――…
いつの頃からだろう。


ナルトの独占欲が強くなった。



「…会う約束をしてたわけじゃなくて、偶然会ったんだよ」

「楽しそうに話してたじゃん」

「別に普通だって…」

今だって、困り顔のカカシを前に唇を尖らせたナルトが俯く。

最近、こんなことが多い。

一昨日はカカシが暗部時代の後輩とちょっと話をしていただけで機嫌が悪くなったし、この間なんか綱手に報告書を提出に行った際、シズネと世間話をしていただけで怒った。

愛されていると言えば愛されているのかもしれないが、反面信用されていないような…
なんてカカシは思っていたのだが、ナルトに言わせれば

「浮気とか、そういう問題じゃねーんだってば。俺はカカシ先生が他の誰かと二人きりで居るだけで嫌なの!」

…だ、そうで。信用云々の話じゃないらしい。
それどころか、二人きりで居るだけで嫌だなんてどれだけ愛されているのか。
ものすごい独占欲である。

この一年で自分の愛は充分に伝わったのだ、とカカシも嬉しくは思う反面、でもソレはソレ、コレはコレで。


「嬉しいけど…、現実問題として無理でしょ」

と答えるしかない。

どうやったって、日常生活や任務を過ごす上で誰かと二人きりになることはあるのだし。
バカップルじゃあるまいし
「わかった。じゃあお前以外とは二人きりにはならないよ」
なんて盲目めいたことを言うほどカカシは自分を見失っていないつもりだ。

こんなやり取りは最近ではよくあることだったが、今日のナルトはやけにしつこくて。
好きなんだから、こうして一緒に居れてるんだからそれでいいじゃないか。とカカシは少しウンザリしていて、だからこそ、地雷を踏んだとも言える。

「なんでそんなにアッサリ言うんだってばよ」

「だって、実際無理だろ?お互い何だかんだとそれぞれ生活があるんだし」

子供じゃないんだから、と付け加えた言葉。

それは、どう考えても付け加えない方が良かった。
実際、ナルトはまだ大人にはなりきれてない年齢で…

しまった…と思った時にはキュッと眉を寄せて、唇を噛み

「…どうせ俺は子供だってば」

ナルトは低い声で言った。









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