頭が真っ白になったという表現が正しいかもしれない。

カカシがそれまでもっていたナルトのイメージというのは、多少やんちゃなところもあるが、素直で真っ直ぐで優しい子。
幼い頃から知っている為か、十七という大人に近い年齢になっても未だに子供扱いして世話をやいてしまう、そんな存在だった。

実際、その日だってふざけ半分で酒を飲み、自分の足で帰れなくなったナルトを、やれやれ…と思いながら家へと送ってやっているところだったのだ。

その最中、ナルトはふらついて、それを支えた──カカシへの告白。

目の前には、「好きだってば」と普段は白い頬を赤く染め、必死な様子で、潤んだ瞳で、不安そうにカカシを見つめる、教え子としか思っていなかった相手が居た。
カカシは驚き、言葉を無くして立ち竦んだ。

何故ならそれは、今までカカシがナルトにもっていたイメージを全て崩すものだったからだ。
それまでのナルトとはリンクしない、想像もつかない一面。
どこか頼りなげで愛らしい様子。

──庇護欲を煽られた。
愛しさが込み上げた。
…他に、どんな表現方法を用いれば納得して貰えるだろうか。

数分前までただ教え子としか思っていなかった相手を、ほとんど自分でも自分が何をしているか分からない、そんな心境で気付けばカカシは抱き締めていた。

もしくは、どんな表現方法を用いても納得して貰えないかもしれない。
自分自身でも理解出来ない。

戸惑うその子を掴まえて、その場で自らキスまでしてしまった自分は。


こうも心が変わるものなのか、自分でも不思議なくらいだった。

もしかしたら、気づいていなかっただけで元々自分も好きだったのだろうか。

カカシは上機嫌で家路へと着き、枕に顔を埋めつつ、知らず緩んでしまう頬をいさめながらそう思わずにいられないくらいだった。
ナルトからの告白が単純に嬉しかったのだ。

その日から、カカシの頭の中は花が咲いたようにナルトのことばかりだ。

ナルトはカカシに好きだと言ったものの、カカシが受け入れるとは思っていなかったようで、カカシと二人きりで過ごす時はオロオロと頬を染めて俯くことがほとんどで、
カカシからすると、普段と違うそのギャップがまた可愛くて堪らない。

誰かと付き合うこと自体久しぶりだからか、妙に浮き足立ってしまう。
ナルトが戸惑っているのは分かっていながら甘い顔をしてしまう自分を止められない。



「遅かったね」

「あ、おう!一回家に帰ってて」

家に来るように誘って、暫く経ってから訪れたナルトをカカシは両手を広げて迎え入れた。
背中に腕を回して金髪に顔を埋めると、何だかシャンプーのような良い香りがしてクンクンと鼻を鳴らす。

「シャワー浴びた?なんか良い匂いがする…」

「え、えと、うん…」

腕に抱くと、耳まで赤くなり、躊躇いがちに俯いてカカシの背に腕を回すナルトは、まるで小動物のようだ。

(ああ、ヤバイ……)

カカシはナルトに気付かれないように、ふ、と息を吐いた。
金髪を空気がふわりと揺らす。

……ナルトに告白されたあの日から、自分はおかしくなってしまったかもしれない。
ナルトのことが、可愛くて愛しくてどうしようもないのだ。









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