暗い夜道をひとしきり歩き、

「あ、ここですぅ〜私の家ぇ」

呂律の回らない口調でその子が一つのアパートを指差した。

「あ、そう。もう大丈夫?」

「……う、うぅ〜気持ち悪…」

「……」

そんな反応で、帰ろうと踏み出しかけた足をカカシはまた止める。
一体、こんなことを何度繰り返しているんだろう。

(明日も、一応任務入ってるんだけど…)

早く帰りたいのに。
確か朝八時集合じゃなかっただろうか、と遠い目で思う。
ただでさえ朝は弱いのに。

(仕方ないか…)

放っておくわけにもいかないし。
最悪の場合、ナルト達には悪いがまた遅刻しよう。

結局何だかんだと人がいいので、カカシは終いには「歩けない」と言い出し、アパートの前に座り込んでしまったその子を、
「あーもう後少しだから頑張ろうね」とほとんど抱えるようにして部屋まで送っていった。


着いた部屋はワンルームで、ベッドはそこからすぐ見えたので、どうせすぐに帰るからと電気は点けず、脚絆だけ脱いでその子を抱えたまま部屋に入った。

ベッドに膝をつき、ドサッとそこに下ろして、さあやっとお役ごめんと身体を起こそうとしたところで…


「……何?」

カカシは言った。

ベッドに横たわったその子の腕が、カカシの首に回され

「泊まってけばいいじゃないですか…」

舌ったらずに、誘うような目付きが向けられている。
「ね?」と妖艶に微笑むその仕草で自らのベストのジッパーを下げ、白い肌を晒した。

(ああ…)

なんだ、最初から誘われていたらしい。
ここまでずっと送らされてきたのもそのせいか。

…まあ、確かにどっちかと言えば可愛い感じの子。
カカシよりはおよそ数歳年下だが、忍にしては細く華奢な身体で、日に焼けていない綺麗な肌。
肩下までの茶色い髪をたゆらせ、大きな目を細めカカシを見つめる。

「私、前から一回カカシさんとシてみたかったんです…」

熱い息を吐いて呟いた後、細い指がカカシの顎にかかり、顔が寄せられた。

薄暗い部屋で、しかも呑みの後、おまけに場所はベッドの上で、間近に人肌の感触。
カカシだって立派な成人男性だ。
いやらしい気分になるなと言う方が無理で、当然が如く反応した。

この状況でそのまま肌を重ね、包まれたくなるのは男の性。

なので、首に回されたその子の手を優しく掴み、微笑んで言った。









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