事の始まりは、今回の任務内容。

木ノ葉の内部事情を記した密書が盗難に遭ったのは少し前のことで。
土の国のお偉方が裏ルートを通じて隠し持っている、という噂の元、今回ナルトたちが請け負ったのが、それの偵察アンド奪還任務だった。

総じてそこに入ってきたのが、そのお偉方が大の女好きだという話。

そうなると、勿論女がいくにこしたことはないわけで……そうして、先程のやり取りに戻る。


「サクラちゃんが行ったら、万が一の時危ねーってばよ。俺なら男だし、いざって時は変化解けば大丈夫だってば」

「でも…」

渋るサクラに合わせて、カカシも眉を寄せた。

「ダメだ、今回の任務はある意味隠密に近い。お前、そーゆうのどっちかといえば苦手でしょ」

潜入は俺とサイで、と続けるカカシにナルトはムッとする。

それってつまり、信用されてないってことだ。

「ナメんな!俺だって少しは成長したってとこ見せてやるってば!」

言って、ナルトは印を結んだ。

「新・お色気の術!」

ボフン、と煙が立ち、現れた姿。

「「「……」」」

サクラやサイ、カカシまでもがポカンとしてナルトを見る。

「どーだってばよ!?」

一拍置いて、頬を紅潮させたサクラが口を開いた。

「すごい!すごくキレイ!本当にナルト!?」

感嘆の声を上げて、ペタペタとナルトに触れてくる。

それもそのはず、ナルトが変化したのは、絶世とも言える程の美女だった。
碧い瞳と金色の髪はそのままに、けれど長さを持った綺麗な髪を一つに結って流していて……以前のお色気の術のような、ただのボンキュッボンの女の子じゃない。
どこか、妖艶な色気を纏っており、勿論頬にある三筋の痣も消していた。

「………」

「カカシ先生、これでどうだよ?」

未だ何も言わずナルトを見ているカカシを見返すと、カカシは眉を寄せて小さく「どこで覚えてきたの、それ」と言った。

「え?エロ仙人との修業中」

「……」

実際、それは本当で、“お色気の術〜”なんて面白がってやっていると“可愛いけど、もうちっとだのお”と鼻の下を伸ばした自来也が信憑性もなく言ってきて、早い話、色気が後一歩だと言われたのだ。

それには三筋の痣を消すことは勿論、腰つきがどうだ喋り方がどうだ仕草がどうだと事細かに指導され、ナルトは若干辟易した程だった。

まあ、そんな苦労の甲斐があって今があるのだが。

「とにかく、これでいいだろ。俺が行くってばよ!」

胸を張って言えば、カカシがハァ…とため息をつく。

「しょーがないね…。でも、ま、俺も行くから」

「え〜!?」

「…なによ、“え〜”って」

「だって」

せっかく腕の見せどころだと思ったのに。

「カカシ先生ってば俺のこと信用してねーんだな」

「あのね、信用してるしてないの問題じゃないから。隠密ってのはたいていチームを組むもんなの。いざという時のフォローの為に俺が入るんだよ」

「サクラちゃんやサイは?」

「同じくいざという時の為に、外に待機しててもらう。…ま、つまりは全部お前の腕次第ってことだよ」

「俺次第?」

「そ。任務がうまくいくかどうかは、お前にかかってる」

(俺次第…)

その言葉に、ナルトは俄然やる気を増した。

そして

「よっしゃー!!やってやるってばよ!」

と、今が絶世の美女の姿であることも忘れて、がに股で拳を突き上げたのだった。









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