セックスレスという言葉はこの場合当てはまらないと思う。
だって、カカシにシたい気持ちはある。

ただ、相手が相手だけにその一歩が踏み出せないだけなのだ。



「カカシ先生!」

おっせーってばよ!と目を吊り上げる部下に、スマンスマンと苦笑いしながら今日もいつもと変わらない一日が始まる。

「今日の任務は――……」

切り出すと、顔を引き締め、真面目に耳を傾ける金色と桃色と黒色の少年少女達。
カカシの恋人は、この『金色』の少年である。

任務中は本当にただの上司と部下で会話も接触も最低限。
むしろナルトが会話を交わすのはカカシよりもサクラやサイの方が多いと言えるかもしれない。
別に、それでも別にいいのだ。
目の端に元気に喋り動き回るナルトの姿があるだけでカカシは満足だし安心出来るから。


そして、任務を終えれば……

任務を終えれば、会話や接触が飛躍的に増えるかというと、特にそんなこともない。

ナルトとの関係や交わす会話は任務中と全く変わらず色っぽさの欠片もない。
敢えて違うところをあげるなら、数日に一度はカカシが、或いはナルトが互いの家を訪れるくらいである。

それって本当に付き合っているのか、という声がどこかから飛んできそうだが、一応互いにしょっちゅう会いに行くのだし、あっけらかんとした感じではあったが「好きだ」という言葉も交わしあった仲だ。
まさかそれが恋愛感情ではなく、ただ仲間としての好きだとは……流石に考えたくない。
カカシの記憶が捏造したものでなければ、そう言った時のナルトの頬はうっすら赤くなっていたはずだ。


「……」

一緒に一楽に行った後、ナルトの部屋に帰って二人でのんびりとテレビを見ていて、カカシはナルトの横顔を盗み見た。
他国の俳優や女優による恋愛ドラマが放映されているブラウン管をナルトは可もなく不可もなくといった様子で眺めている。

カカシは視線を前に戻し、テレビに目をやった。
テレビの中では好き合う男女が切なく擦れ違っているシーンが繰り広げられており、よろしくないことに別れ話なんぞをしている。
どうせならいっそラブシーンなどをしていてくれた方が有り難いのだが。

そもそも、何故カカシがこうもナルトに指一本出せずにいるかというと、師弟関係が背景にあり、同時にナルトの性格も大いに関係している。
付き合っているとはいえ、仮にもナルトの師であり、歳もだいぶ上のカカシが男のナルト相手にいやらしいことを考えているというその事実を、もしさらけ出した時にナルトはどう思うだろうか、という考えがカカシに制止をかけるのだ。

カカシを好きだと言うものの、ナルトの中でカカシが身体を繋げるとかそういう対象でなかったらドン引きされるだろう。
大体がナルトの頭には色気のイの字もなさそうだし、見ている分にはカカシとそういったことをしたいとはまるで考えていないように見える。

それ故に指一本触れず半年が過ぎた。
放っておけば、半年どころか数年が経ちそうだ。

ナルトの頭には色気のイの字もなくても、カカシからすれば惚れた相手だったらやっぱり触れたい。
男だったらやっぱりたまには人肌に身を埋めたいし、付き合っている相手をそういう対象に考えるのは当然のことだ。





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