実は今回はサクラもサイもおらず、カカシ、ナルト、ヤマトのみの任務。
とはいえ結局、こうやってヤマトも別に行ってしまったのだからナルトとカカシの二人きりのようなものだ。

何だかよくわからない、木の葉には似つかわしくないような洋風の屋敷に、ターゲットの男はいた。
カカシと二人、建物の陰に身をひそめて様子を窺う。

男は結構若く、甘いマスク…つまりなかなかのハンサムで、そんなこともあってか、テラスにて美しい女性とイチャコラしていた。

こんな寒空の下、上司のカカシと物陰からそんな様子を見ているナルトとしては面白いわけがない。

「……カカシ先生、もうアイツ捕まえちゃダメなのかよ?」

「隠密って言っただろ。中ではパーティーも開かれてるらしいしね、他に悟られて騒ぎになるのはマズイ。暫く様子を見るぞ」

「………」

様子を見るったって、ただ彼らがイチャついているのを見るだけではないか。

(何が楽しくて…)

あーあ、つまんね、と溜め息が出そうになったナルトは、ふと男が女の腰に手を回したのに目がいった。

そのまま二人の顔が近づき、口づけが交わされる。

それだけで終わればいいのに感情が高ぶったのか何なのか、二人の口づけはより濃厚なものとなり、かなりディープなものになっていった。

(………、すっげえ…)

ナルトはそんなの見たこともしたこともなかった。
続けられる男女の接吻に目を丸くし、みるみる顔を赤くしていくが、こっそり隣を窺うと隣のカカシは特に顔色を変えることもなく涼しい顔でそれを見ている。

これが経験値の差なのか。

だが、落ち着きをなくしたナルトに気づいたらしい。
「どうした?」
とナルトを見た。

「へ、…や、べ、別に」

このくらいのことで動揺したと気づかれるのは恥ずかしい。
目を逸らし素知らぬ振りを通そうとするが、屋敷から照らされる明かりはどうやらナルトの顔すらも照らしたようで。

「クク…。お前、かわいーね」

カカシは頬を真っ赤に染めているナルトを見て、可笑しそうに言った。

「う…」

とんだ子供扱いである。

(カカシ先生、今絶対俺のことバカにしたってばよ!)

カーッとなったナルトがカカシに何か言い返そうとした時、ピク、と動いたカカシがナルトに手をやって顎でテラスの方を指し示した。

見れば、女の方はもう屋敷に戻ったらしく、テラスにはターゲットの男一人だ。

「…行くぞ」

カカシが低く言って、ナルトはコクリと頷き、シュッとカカシと二人、テラスに降り立った。



――任務は、本当に簡単だった。
男はその後、カカシとナルトによってあっけなく確保された。
もっとも、どう考えても隠密向きでないナルトが外されなかったのだから簡単であることは元々わかってはいたが。


「……で、ナルトはなんで機嫌が悪いんだ?」

合流したヤマトが、目に入ったナルトの表情に少し困惑したように言う。

「あー…、ちょっとね、今回の任務、コイツには少し刺激が強かったみたい」

それに答えるのは、なぜかナルトではなくカカシで、口布をしているが、笑いを堪えているのは見え見えである。









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