カカシ先生って、近付きづらそうな雰囲気をしている反面、近付いてみると、実は結構柔らかい雰囲気を持っている人だと思う。
よくにっこり笑ってくれるし、場合によっちゃ頭も撫でてくれる。
たまに、考える。
サクラちゃんだとか、ヤマト隊長だとか、ガイ先生だとか……カカシ先生の周りに居る色んな人の中で、もしかしたらオレが、一番カカシ先生に気に入られているんじゃないかって。
でも、それって多分勘違いで、オレもその他大勢の一人……それどころかオレが知らないだけで、カカシ先生がオレ以上に心を許している人間は他にもいっぱいいるんだろうって。


「もー!カカシ先生の遅刻癖っていつになったら直るんですか!」

「ハハハ、悪い悪い」

集合時間に遅れたカカシ先生に怒って頬っぺたを膨らませているサクラちゃんに、苦笑い。
そういう顔、オレにもよくする。

「カカシ先輩、またですか……。この間もボクが報告書出したんですけど」

「固いこと言うなって。オレとお前の仲でしょ?」

カカシ先生にしょっちゅう面倒事を押し付けられてぼやくヤマト隊長に、気を許したような台詞。
そういうこと、オレには言わない。

「カカシ!勝負だ!!先日の勝負では負け越しているが、今度はそうはいかんぞ!」

「あー、はいはい。じゃ、今度もジャンケンでいい?」

事あるごとに勝負を挑んでくるガイ先生に、あからさまに面倒臭そうな顔。
そういう分かりやすい態度、オレにはとらない。

他にも、オレが知らないだけでいっぱい知り合いが居て、それぞれに見せる色んな顔があるんだろう。
でも、そうだとしたら。
オレだけに見せるカカシ先生の顔って、態度って、あるだろうか。

「ナールト、どうした?むすっとして」

「……別に、何でもねぇってばよ」

視線に気付いたカカシ先生がオレを見て、言った。
サクラちゃんやサイも一緒に歩いている里の通りで。
その態度って、やっぱりその他大勢の一人っぽい。優しいけど、別にオレだけが特別じゃない。

「のろのろしてたら置いて行くぞ」

頭をワシャワシャと撫でられ、肩を一瞬だけ抱かれた。
これは……

(特別?)

こういうことは、サクラちゃんにはしない。……いや、オレが覚えてないだけで、このぐらいしたことあるかも。
でも、ヤマト隊長やガイ先生にはしないような。
……いやいや、それだって大人のオッサン同士でそんなことしたらキモイってだけな気がする。
カカシ先生がこういうことをするのは、オレがずっと年下のガキで、教え子だから。
オレはカカシ先生に撫でられて乱れた金髪を整えるふりをして、髪に触れた。

「……」

カカシ先生の横顔を見る。

カカシ先生、こういう接点だってうれしいけど、オレはもっと。
もっともっと分かりやすい形で少しでも、カカシ先生の特別だと思えるような証が欲しい。
オレがじっと見つめると、特段、オレから目を逸らさなかったカカシ先生と見つめ合うような状態になって、カカシ先生は柔らかく、ふっと目を細めた。
その顔を見て、唐突に気付く。
そうか。

(オレってばカカシ先生のことが好きなんだ)

だからこうも、カカシ先生のちょっとした言動に気をとられて、カカシ先生に特別扱いされたいと考えてる。
もっと言えば、きっと、特別扱いされたいんじゃなくて、特別になりたいんだ。

「……何?オレの顔に何かついてる?」

見すぎたせいか、カカシ先生が少し困ったように言う。オレはうんと頷いて答えた。

「額当てとマスクがついてるってばよ」

そんなん、今に始まったことじゃなくて、いつものことだけどな。
でも……なあ、カカシ先生。
いつかもし、オレが今よりもうちょっとカカシ先生に近づけて、もうちょっと特別になれたら、その時はもしかしたら、その下の素顔も見せてくれたりするのかな。
見たいってばよ。










「カカシ先生って、ナルトにはどうも甘いわよね。ああいう顔、私達にはちっともしないのに」

「そうですね」

唐突に自覚したオレと、そんなオレに絡まれたカカシ先生の少し前方。
後目に見ていたサクラちゃんとサイがそんな会話を交わしていたことを、オレは知らない。











FIN(20140506)





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