音もしない真夜中、寝つけずに寝返りを打った。
仰向けになったオレの目にはすすけた天井が目に入ったが、オレは、それを遮るように顔の前に手のひらを広げた。
大きめな手のひらに節くれだった長い五指。もう見慣れたこの手は、或る種、罪深い手だ。

ナルトを『そういう対象』に見るようになったのはいつ頃からだっただろうか。
成長していくナルトを傍で見ていて、恋愛感情だとか慕情だとか、そういったものが芽生えるより先に、不思議と触りたい欲求が強くなっていった。
ふわふわしている金髪や三筋の痣のある頬、まだどこか頼りない肩。そんなものだけにとどまらず、もっと言えば、きめ細かい首筋や細さの残る腰に至るまで。
だから頭を撫でたり、身体を支えたり、軽度な接触は日頃からしていたが、次第に、だが確実にそれだけでは物足りなさを感じている自分に気付いた。
足りない。もっとちゃんと触りたい。
望んでいるのはこの程度のことじゃない。
そんな或る日、増血丸を飲んだナルトが顔を赤くし、俯いているのを見た。
気付いてしまったのだ。ナルトが欲情していること。
思わず、ごくりと喉元が動いた。
常日頃から持っていた欲求は顕著さを増し、具体性を持った。それで――……。

『……っオレ、さっきから……。カカシ先生……、どうしよう』


(可哀想なことをした)

今日、罠に嵌めた。
ナルトが憎くてそんなことをしたのではないし、むしろ逆。ナルトに触る為に、近付く為にそうした。
だが、それはオレの為であってナルトの為じゃない。自分本位で自分勝手なエゴだ。
事実、ナルトは自分の身体の変化に羞恥を持ち、手を貸すと申し出たオレに戸惑い、困惑していた。
可哀想だと思いながらもオレが、ハァ……とついた溜め息は後悔によるものではなく、恍惚としたものだ。

(この手で……)

ナルトに触れ、

『カカ……カカシ先生、お願いだってばよ。こんな……こんなの、誰にも言わないでくれってば』

落ちるように促した。
戸惑いながらも身を委ね、オレに任せたナルトの表情や声を思い出すと、高揚感にかられ、ぞくぞくすらして、先生失格であることを今更のように自覚する。
下腹がじくりと熱を孕み、オレは股座に手を伸ばした。
揺れて騒ぐ葉擦れや、木葉の合間から差し込む柔らかな光。二人分の身体をいとも簡単に隠してしまうほどに大きな巨木のもとで耽った行為は若干現実離れしていたようにも感じる。
ただ、ナルトの体温の高さや感触は今でもこの手に残っているようだ。

(……)

自分の局部を撫でると、既にこんもりと膨らんでおり、オレはズボンと下穿きを引き下ろして自らの手で触り始めた。
日中の、ナルトの表情や、耳の赤さを思い出す。手のひらに包み込んだ茎はオレのものよりも細く、使い込まれていないような若さがあった。
火照った身体に伝う汗や弾んだ息遣い、汗の匂いを回顧して喉が渇く。

「ン……、ハァ……」

いきり立ち、先走りを流している自身をじくじくと擦り、快感に眉を寄せ、目を瞑った。

もしかしたら、ナルトにそうさせることも可能かもしれない。
ナルトに施しをしている最中、そんな考えが頭を過った。
身体が昂ぶっているナルトは思考も回っていなそうで、強いたら無理ではないと思えた。
ひょっとしたら、身体を繋げることだって。

思いはしたが、やめておいた。順序を間違えたら、本当に欲しいものが手に入らなくなる。
オレが本当に欲しいもの。
それはナルトであって、ナルトの身体だけではあり得ない。信頼に絡めた恋情を得られなければ意味がないのだ。
だから、段階を踏んでいく。面倒でも、遠回りでも、手堅い方法を選ぶことにした。

「……っ、……く……!」

込み上げてきた欲を押しとどめることなく、激しく扱きながらくびれを擦る。
手に取ったティッシュに最後の一滴まで精を吐き出し、呻いた。

「ハァ……ハァ……」

垂れた前髪を掻き上げると、額が汗で湿っていた。


翌朝、顔を合わせたナルトは例の行為を恥ずかしがってか、態度がぎこちなかった。
避けるようにそっぽを向く、その耳は赤い。
これも必要不可欠な段階だ。

「ナルト」

オレは確実に、そして着実に取りに行く。
この手でじわじわと浸食していくように。










FIN(20140417)





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