ヘルプミーマイプリンス
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昔から、柄にもなく童話を読むのが大好きだった。
可愛らしいお姫様と、凛々しい王子様。二人が出会えばハッピーエンド。
童話を読んでいる時は、幸せだった。どんなにいじめられていた女の子だって、魔法ひとつで幸せに。
いつか自分にも魔法がかかって、素敵な王子様が迎えにきて。
ハッピーエンドをむかえるんだと、信じていた。
代わり映えのしない1日がまた始まる。
実際には自分はお姫様でもなんでもなく、魔法なんてあるわけもなく。どっかの王子様が、この状況から連れ出してくれるはずもない。
けれど、頭のどこかで期待してる自分もいて、ため息をつく。
傷口を消毒してから手際よく包帯を巻いていく。
手当てはお手の物だ。何年もやっていれば、わかってくる。
医者にでもなれるんじゃないかとも思ったが、金も頭も必要だと聞いた。金はない。頭もない。頭をよくするための金も、まともに払えていない。
苦笑すると、ずくずくと傷が傷んだ気がした。
毎日朝早くに家を出て、学校が終われば日付が変わる頃まで外をうろつく。
家は嫌いだ、これ以上傷が増えたらそろそろ学校の人達に怪しがられるだろう。
毎日毎日、変わらない日々を過ごしているはずなのに、傷と、痛みだけがふえてゆく。
路地裏の壁に寄りかかって、星も見えない夜空を見つめていた。
昔から、柄にもなく童話を読むのが大好きだった。
童話を読んでいる時は、幸せだった。
読み終われば、現実が舌なめずりをして待っている。
そこから出る勇気もなく、方法もわからずに、ずるずると、飲み込まれていく。
ハッピーエンドはやってこない。
ヘルプミー、マイプリンス。
どうか、願う事だけは。
願いながら、今日も飲み込まれていく。
迎えなんてくるはずないぞと笑ったのは、確かに自分だった。
2011/12/29 00:40