ペチュニア。
可愛い可愛いお馬鹿なコウモリ。

俺らの出会いはこれからペチュニアが成し遂げる事のためにあるべくして会ったのかもしれない。

森に小さな小屋を建ててからすぐの事だった。気配を消しているつもりなのかコソコソと窓からこちらを覗き込むコウモリがいた。たまにしか来ないけど、来るときはいつも俺以外の何かに警戒しているようだった。

ある日好奇心で家の中で姿を消してみた。これくらい造作もない魔法だ。予想通り、コウモリは家へと侵入したのだが、一番最初の行動は図々しくも机の上に置いてあった俺の菓子を食べる事だった。次の瞬間、コウモリは変幻を披露した。人間に化けてみせたのだ。女性だ。ピンク色のミディアムヘアーに黒とショッキングピンクの服……コウモリってセンス無いのか?そして散らばっていた本を持ち上げるとそれを読み始める。俺は思わず声をかけた。

「…君、本読みに来たの?」
「?!」

いきなり現れた事をびっくりしたのか、それとも家の主人が帰ってきたからなのか。いやどっちもか?人間だった姿の彼女はポンッという音と煙と共にコウモリの姿へと戻ってしまった。慌てて逃げようとするので、素手で捕まえて小瓶に放り込む。キューキューと鳴き、小瓶から出ようとパニックになっている。

「大丈夫、とって食ったりしないさ。君と違ってね」
(ご、ごめんなさい悪かったわ…!わ、私エネルギーがないと上手に変化出来ないの!)

驚いた。超音波なのか?コウモリの姿のまま彼女は喋り出した。落ちこぼれの人間だったらその言い訳も聞こえないというのに。

「俺が魔力を持ってるとちゃんと分かったのか」

コクコクと頷いて彼女は続けた

(人間って元々魔法が使えるんでしょ?今は殆どの人が忘れてるらしいけど…。どうしても魔法が知りたくて、私ここに来てたの。直接会うと追い払われると思ったから隠れてたけど…)
「ふーん、君たちの間じゃ、アレを隠れるって言うんだ」
(気づいてたのね!悪趣味よ!)
「健全な男性の家を覗き見しといて悪趣味よはひどいな。エネルギーって言ったね?コウモリは食事もとらないのかい?」
(しょ、食事くらいキチンととってるわよ!ただ私変化得意じゃないから、無駄に体力を使っちゃうの!)
「コウモリにも不向きはあるのか」

あまりコウモリの生態に興味がなかったので、知らなかった。少し言葉を交わしたあと、小瓶から出して余ってた焼き菓子を出してやった。コウモリはクッキーをちびちび食べていると少しずつ話し始めた。このコウモリ、ペチュニアは奥深くの森に群れを作って生活しているらしい。森や洞窟にそれぞれ集落があるらしく割と快適に暮らしていたそうだ。ところが最近街の近くの洞窟に、コウモリの住処があると気付いた出来損ない供が、邪魔と思ったのか洞窟ごとコウモリを埋めてしまったらしい。ペチュニアの知り合いはいなかったもののコウモリはほぼ生き埋めになり、一匹だけ生き残ったとか。
そんな惨劇を今後出さない為にもペチュニアは出来損ない供と話し合いがしたいそうな。

「それはご苦労な事だね。他の仲間には反対されなかったのかい?」
(勿論人間が嫌いなコウモリだっているわ。そっちの方が多いわね。反対されたし、人間なんて殺した方がいいっていう意見も出てるほどよ)
「じゃあなんでまた」
(争ったって犠牲が増えるばっかりで全然いい事ないわ。話し合いで解決できるならそれが一番でしょう?)
「平和主義者だね」
(平和主義よ!だからお願い、わたしにも魔法教えて欲しいのよ)

その言葉に俺は腹を抱えて笑った。

それが始まりだ。




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ちなみにペチュニアとセレステはそういうのじゃないです。

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