本棚に仕舞ってあったアルバムを引っ張り出し、ルネは嬉しそうに思い出を語る。ひょいと覗いてみれば丁寧にデコレーションされていたので、ルネらしいやと言うと恥ずかしそうに僕の事を睨んだ。別に茶化したわけじゃないんだけどな、褒たから照れてるのかな。昼下がり、僕らはソファの上でゆっくりと話をしている。 笑いながら僕も一緒に眺めているとふと一枚の写真が目にとまった。真夏に遊びに行った海の写真だった。あまりにも肌が露出していてルネを直視出来なかったっけ。写っている僕は顔が火照っていた、恥ずかしいな……。ルネがソレに気付いたのかあんたこの時バテてたわよねぇ情けないと一言言う。違うよ、ルネが…と返すと意味が分かったのかサイテーと顔を背けられてしまった。 「今年も何処か行こうよ」 「ふん」 あんたとは話してやんない、そういう事なんだろうか。子供みたいにそっぽを向くルネは相変わらず可愛いし、よく考えてみれば素直だ。不機嫌になる理由は、よくわかんないけど。そいうえば、噴水の近くで涼んだ時もルネは急に怒ったな。空気に湿り気があって生暖かい風が体にまとわり付く蒸し暑い日だった。街中の噴水広場にはちらほら人が集まって、談笑してる、ちょうどいい休憩場所を見つけた。噴水は涼むのに最適なのとお昼頃だったので、ここで座りながらごはんを食べようという話になったんだけど、ルネは僕が座った途端不機嫌になった。ルネの隣に座ったのがまずかったのかな、あの時全然口をきいてくれなくて…。ルネが少し文句を言った後だんまりしているので僕が問いただすと立ち上がり「わかんないの?!最低!!」と怒って走ってしまった。もちろんすぐに後を追ってルネを捕まえたけどあそこにいればよかったじゃないだの、あたしなんてどうでもいいんでしょなどと言い出して僕は本当に訳がわからなかった。それも理由を話してくれなくて、今じゃ結局わからずじまいだ。 「ルネって時々不思議だね」 「はぁ?」 「考えてる事がわからなくて面白いなって」 「あたしアンタのおもちゃじゃないんだけど」 いつの間にか僕の腕の中にすっぽりとおさまっていたルネは僕の手を抓った。痛いよと伝えると痛くしてんのと返される。むすっとした顔をプリントさせて、ルネはまた一人アルバムに向かう。ちょっとの事ですぐ不貞腐れる癖に僕の側を離れないんだから。まぁ、そこがとても可愛くて好きなんだけど。 「……どこいくの?」 「え?」 「さっきユメがどっか行こうって言ったんじゃない!」 「あぁ、うん。どこ行きたい?」 「どこでもいいわよ」 「じゃあー、えっとそうだな…。前に花火見たいって言ってたでしょ、それは?」 「…花火?」 「そう」 「……うん」 「なら花火の見えるところにしよ」 きゅっと僕の腕を掴むとルネは縮こまった。照れてるのかな?大切そうにアルバムを握りしめてルネは僕を見た。まゆげが垂れてて可愛い。そう思っているとルネは真っ赤になりながら、んーと声を出す。んー? 「ん?」 「……」 「どしたの?」 「……」 ルネ?と声をかけるとなんでもないと顔を戻してしまった。なんでもない感じじゃなかったんだけどな、真っ赤になってたからルネが照れてるような事か……。んー……んー、か…。あー……もしかして 「…あの…、キスしてほしかった?」 「ばっ!違うもん!!!違う違う!!ばかじゃないの、ばーか!ユメのすけべ!!なに勘違いしてんのよ!!」 「痛い痛い!ルネ!ご、ごめんってば」 ポカポカと僕を叩きながら暴れだすので静止を促す、じゃなきゃルネがソファから落ちそうだよ!顔から足の先までルネは身体を真っ赤にさせもう一度僕に馬鹿と怒鳴る。ふーふーと威嚇しているルネは可愛らしい……いや怖いけど、うん…。ルネの反応を見るに外れてないと思う、んだけどな。そう思ってそっとルネの髪をかきあげておでこにキスを落とす。一瞬ビクッとなったけど、手を握られた。これで正解だったみたい。僕に体を預けたルネはそのままおとなしくなったので、クスリと笑うとそれが気に入らなかったのかまた馬鹿と呟いた。もう、照れ隠しで言うのが馬鹿なんだから…。 「そんなに馬鹿馬鹿言われると流石に傷つくというか…」 「…あ、あ、あんたが、そうなんだから言ってるんでしょ」 「ルネのばあか」 「ユメのあほ!!」 「いてっ!ほら、ルネだって言われたら怒るじゃないか!」 「あたしは怒ってないわよ!ユメが怒ってるんでしょ!」 「僕怒ってないよ!」 「あたしは怒ってるわよ!」 「ええぇ」 「ユメなんてばか!」 「ルネいい加減にしてよ」 「ぅっ…」 「ほら、なに?」 「ユメなんて……」 「うん?」 「すぐ女の人に優しくするくせに!!」 「…は?」 |