向こう側から発せられた声は聴きなれた女の子のものだった。そう、先ほど噂した――。

「ルネ?!」
ユメは顔を真っ赤にさせ、慌てるようにドアを開けた。勿論、そこに立っているのはルネだ。ルネはあぁーやっぱり、あんた達だったのねー。なんて言いながらユメをじろりと見る。僕に言わせれば“やっぱり”はこっちのセリフなんだけど。

「ずいぶん疲れてんのね。仕事おわったとこ?オツカレサマ」
「うぇ?!そ、そんなにわかる?ありがとう…」
「ルネも仕事終わりなの?」
「ううん、あたしはここで待ち合わせしてんの。日にち間違えちゃってしばらくここにいるけど」

クロックスもひどい顔ねー、なんていいながら部屋に入るルネは心なしか楽しそうだ。そのままルネは手前にある椅子に座った。しばらくここに居たという事は、話し相手がいなくてつまらなかったのだろう。今のルネは、おもちゃを見つけた子供と同じだ。しかし

「せっかく話し相手が見つかったと思ったのに。」

僕たちの顔をゆっくりみて把握したらしい、この状況では楽しめないと。
女の子にそれを感じさせてしまうのは男として情けないけど、そんなことは言ってられない。今は勘弁してほしかった。
続けてルネが僕に聞く。

「ねぇ、明日には行っちゃうの?」
「うーん、まあ次の依頼が入ってないからこの街で探そうとは思ってるよ」
「じゃあ明日でいいわ!」

飛ぶように立ち上がるとルネはばいば〜いと手を振って僕らの部屋を後にした。
本当に嵐のように現れて去っていくな…。
後ろの方で顔を赤らめいる友人に目を向けると、口元が緩んでいた。重症だねこれ、それはそれで微笑ましいけど。

「良かったねユメ」
「からかわないでよクロ…」

ユメはそう呟いて僕お風呂入ってくる、と備え付きのシャワールームへ姿を消していった。
一人になった僕はそのまま目を閉じる。空気を肺に押し込めば眠気がぐわっと押し寄せたのでそのまま身をまかせようと思う。シャワーは朝にでも浴びればいいや。







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