200文字SS
黒尾『GWの過ごし方』
 あちぃ、な。溶けるような声で項垂れた鉄朗は、言葉通りご自慢の寝癖がぺたりと額にくっついている。
 たしかに鉄朗が云うように、5月のはじめにも関わらず夏かと錯覚してしまう暑さは身体を蝕み、おかげでダラダラと汗が流れていくこの状況は酷く煩わしい。こういう時はプールにでも行きたいが、悲しいことにどこも閉まっている。何より、水着を着るのならば3か月前から準備をしなければいけないのだ。
「なぁ、」
 刹那、熱を孕んだ鉄朗の声が耳に触れた。舌を添わせたのは絶対わざとだ。私はこの鉄朗の甘ったるい声の真意をよく知っている。
「一緒に冷水浴びね?」
 その提案は余計に汗をかいてしまいそうなものなのだけれど、暑さによって頭がおかしくなりそうな私は大人しく頷いてしまうのだ。






赤葦『GWの過ごし方』
 目が覚めて、カーテン越しに差し込む陽光に照らされたあどけない寝顔を堪能するのが好きだ。柔らかい頬の感触はいつまでも触っていたいと感じるほどで、起こさないようにと気遣いながらもどこかで起きてほしいと願う自分もいる。
「んぅ、けいじくん……おは、よ……」
 案の定、色付いたピンクの唇が尻窄みになりながら俺の名前を呼んだので、呼吸を止めるように噛みついた。息苦しさに元より大きな瞳をさらに瞠目させるこの顔が今日も好きだ。
「おはよ」