200文字SS



赤葦

昼休み。彼氏にフラれたマネちゃんが校舎裏で泣いていると、後ろからぱきり、と小枝を踏んだような音がする。振り向くと、若干顔を顰めてどこか気まずそうにしている後輩の赤葦の姿が。抑揚のないこの人には珍しい表情にふつふつと浮かび上がる申し訳なさから、顔を伏せた刹那。ふわりと視界が暗くなり鼻腔を擽るシトラスの香り。触れた感触はブレザー。「大丈夫です、見てませんから。だから沢山泣いてください。そしてあいつのことなんか忘れてください」あわよくば、俺を選んでください。耳元に聴こえた声に、静かに甘える。


木葉と木兎

昼休み。彼氏にフラれたマネちゃんが屋上で泣いていると、突如視界の端に置かれたぐんぐんヨーグルトと焼きそばパン。いきなりのことに驚きながら顔を上げれば、見慣れた後ろ姿が目の前で腰を下ろしている。「俺たちの大事なマネちゃんは1人で泣いちゃうからなー」「もっと甘えてくれてもいいのになー」「せっかく背中空いてるんだけどなー」と会話する木葉先輩と木兎先輩に思わず小さく笑ってしまう。お言葉に甘えて2人の背中により掛かれば、頭に乗っかる温もりが優しい。



佐久早と古森

部活のない日の放課後。彼氏にフラれたマネちゃんが泣いていると、「どうした!?」と焦燥感のある声。それに導かれるように顔をあげれば心底心配そうに眉を垂らす古森と心底面倒そうにしている佐久早の姿。なんだか申し訳なくて、なんでもないよと首を振ればポンポンと頭に乗る掌。「吐き出していいよ」と閑静な、宥めるような笑顔を見せた古森の言動に救われて思わず「フラれたぁぁ」と嗚咽と涙を零し嘆いてしまう。その勢いで佐久早へと迫れば双眸にティッシュをぐっと押し付けられるけれど、鼻水と涙だらけの姿から離れないでいてくれたことに優しさを感じる。


黒尾と研磨

部活のない放課後。彼氏にフラれたマネちゃんが泣いていると、「あーあ」と聴こえた声。聞き慣れた声と見られていたことに羞恥から顔を伏せると、わしゃわしゃと愛でるように頭を撫でた掌が温かい。「よく頑張ったな」最後に仕上げとでも言うように励ます声は酷く優しく、またもや泣いてしまう。「クロ泣かせたの?」「ちげーよ」全てわかっていながらも普段通りのやり取りをする2人に訪れる安堵感。大きな掌に次いで、それよりも少しだけ小さい掌がまた頭を撫でてくれる。やっと涙が引っ込んだ顔に、「やっぱマネちゃんはそっちの方が可愛い」だなんて。