それに、イオンがここからいなくなった時に較べれば。 まだ、何て事はないだろう。 だいたい私はフライングしまくってたのだから。独自のもましてやここでも。先取り情報ってヤツ。 …イオン様、言ってたというか、教えてくれたもんね。 だから構える時間の無かった娘達に比べれば何倍もマシだろう。そうして考えてみると、アリエッタはそのショックの度合いの少なさからして薄々わかっていたのかもしれない。 だから、今は解任から間もないせいもありアリエッタに気遣われてしまったけれども、イオンの事情を知るアリエッタすらも含む周囲やこれが第一、敵前での演技はさておき本気で私不幸なんですーなんて顔するのは間違ってる。てか言語道断。だって全然可哀想じゃないし。 何も、零してはいけない。 今の状況に本当は、心底安堵しているのは、他でもない私なのだから。 寂しくはある。だから本音がどうであれ時折思い返しては落胆もするだろう。今がまさにそうであるように。 いくらこうなる事を知っていたとしても5年という歳月はけして短いモノではないから。しかもここ約ニ倍だし。イオンとの付き合いに至っては今でも会えるとはいえ更に倍だ。 けれど結局、喪失感に茫然とする事はあってもやはり私は平穏、つまりは己の命が一番なのである。 …平穏が一番なのである。 そう、こんなたかがしかし原作前なためされどにならない(=コンプもクソもない)サブイベントでしかなくとも…。 「あー私六神将になったばっかのアリエッタの様子見に行きたいなー高いとこ以外にも大変なコト任されまくってるかもだし。きっと人手足りないんじゃないかなー」 「残念だけどあいつらしか入れない部屋の掃除が主にプラスされているだろうからね、アンタじゃ入室の権限すら無いよ。残念だったね」 「残念二回おっしゃいましたわよこの子」 「無駄口叩いてる暇があるならバケツの水でも替えてきてよね。淀んでるよ」 「パシリかコノヤロウ…」 導師守護役解任させられたんだからアリエッタ六神将就任イエーイなのはわかるそんな実はな周辺事情にして時の流れ。だからさっきもアリエッタ神託の盾空けられん的な事言った訳ですね。 そういえば日本ならクリスマスな時期なワケだから(一ヶ月プラスだけど)併せてお祝いするとかどうだろう。イオンのとこでパーティーとか最高だと思うんだよね。 そして楽しい事といえば思い出されるフローリアン。いかんせん普段軟禁どころか軽く監禁生活(つまり孤独)な子だ、かつての家庭科授業(仮)時、めちゃめちゃ楽しそうだったもんな…。 しかし解任と同時に実はというか無論というか総長からご苦労であった宣言(訳・もうお前来なくていいよ)されちゃった訳であるからしてその日を境に全くフローリアンの動向は掴めていない。いや波動は一定量(弱ると当然微弱になる)且つ平穏無事そう(波立ったりすると異変って事だ)なの感じるから、五体満足である事もはたまた位置からして前とは違う部屋に移されたぽ、な事までもちゃっかり把握済みではあるんだけども。 『もうナマエは来ない』事に、ラスボス達はフローリアンをどうやってたしなめたのか非常に気になるトコロである。 しかしフローリアンには悪いが今は考えてもどうしようもない事なため話を戻そう。 …アリエッタ六神将化とはつまるところまた一歩原作開始に近づいちゃったというコトなのだが、しかしそれをうっちゃってでも現況に突っ込みたい。いやもういっそそこいらの箒やこの際モップでもいいから跨がって逃亡したい。ここから飛び降りたい。 「ほら、早く行ってきなよ」 「…はいはいわかりましたよこうなったら1分で行ってきてやるし!」 「あっそ。それと、『はい』は一回なんじゃないの」 「…(誰が教えたんだろう…)」 何で私、この今日も仮面が眩しい――シンクちゃまと教会のエントランス頭上な橋、キレイにしちゃってるんだろか…。 …何て事はない。コトの発端は私が今シンクも言ったみたいにバケツの水を替えに行った際廊下でバッタリ会ったいや遭ったから。 こーゆーイベントはサボりそう(偏見)もしくは部下に丸投げしそう(偏見)とか思っていた私は意外にも大掃除にきちんと参加してたシンクに顎を外された。訊けば「ちゃんとやらないとヴァンがうるさい」そうな。何ソレ間違った教育とか思ったけどシンクがどう生きようとつか育とうと口出し出来る程親しくもないためテキトウに頷いといた。けして反論という名の反撃が怖かった訳ではない。 しかしまあ、一応真面目に考えるならアリエッタと違ってまだ六神将な訳でもなし(仮)、「協力?何ソレ美味しいの?」などと上の命令を無視、一匹狼する訳にもいかんのだろう。 「それに今でも既に手遅れなレベルでツンツンしてるけど多少は…そう多少は、原作時よりマシ…(=素直。…に、似合わねーッ!)なのか、も…?」などなど、そんな事を(勝手に)答え合わせしながら彼を見ていた。 しかし萌えに生きる私はそれでは終わらない。 廊下の音素灯は大の男が背伸びしてようやっと届くか否かといったところに軒並取り付けられている。シンクとてそれは例外ではないため脚立に何とも軽やかに飛び乗った彼。そこまでは良かった。たぶん。心の中で拍手してただけだから、うん。 慣れない手付きで(壊さない力加減がわからなかったのかもしれない)廊下の音素灯を拭き始めたシンクに、私は口を滑らせた。 「何このシンクレアすぎ…心のカメラに永久保存するコトにする」と。 (本物は邪魔になるため流石に持ってきてなかった)。 テンション控えめなのは導師守護役クビの事もあるが、一応一対一でもなかったから。オトメにしてミーハーでもある私は萌えが高じた際叫ばずにはいられない宿命を背負ってたりするのだけれどもこの時はたまたま抑えられたとかいうそんなどうでもいい余談。 耳聡いシンクから雑巾が飛んでくるのは早かった(つまり小声とかまるで意味が無かった)。 (因みに避けたら背後の兵士さんの顔面に直撃した)。 そして一人じゃなかったつまりはマジごめんな兵士さんが佇んでたってのもあるが、たまたま通りかかったラスボスに目撃されたのが極め付き。もしくは運の尽き。恐らくいや絶対、シンクの様子を見に来たと思われる。 総長は言った。 『こらシンク。ナマエ謡手の邪魔をする暇があったら彼女を手伝わないか』 …何て事なくなかったよね、うん。 ……どうも施術に動揺しても“彼”という存在自体には動揺皆無だった事から(ホラ(欲望はともかく)疑問顔で顔じっと見たりとか)この程度の接触では問題ないだろうというのがラスボスの見解らしい。全て想像だけど。 これでも元導師守護役どころか親代わりですらある訳だけど、そんなん言ってたらイオンと腐れ縁的な感じでけっこう付き合いの長いアッシュとシンク組ませんの?とかなるって話で。確かえっと、ザオ遺跡かなんかがそうだったよーな…おとんいたけど。…いたよね? まあでも原作でイオン、つまりは被験者とアッシュがどれだけ接触あったか知らんのだけどあいや忘れてるだけなんだろうけど。…あれコレ私がいたせい?過多なの…え? ……見なかったコトにしよう。 パシりパシられパシるれろ、なんてどっかで聞いたよーなフレーズを口ずさみながらバケツ(清水)を手に戻ると「なんか磨耗してね?」ってくらい手摺に当たるシンクに至極ご尤もな話題をフられた。 「ねえ、どうでもいいけどさ。何でここがそれ程広くはないとはいえ……アンタ以外人がいない訳?」 「あー…実は昔、はりきりすぎるあまりこっから落っこちちゃった人がいてね…」 「ださ」 「そゆコト言わない!」 「何、説教のつもり?アンタも落とすよ」 …シンクのおかーさまァァアッ!!アンタ、アンタどないな教育し…や、親(多分)ヴァンだわ。そこからして終わってたや。…終わってるのか?その法則で行くとリグレット奏手もヤバイというコトになるんだけど。ラスボス荷担とか抜きにすれば良いママンになりそうなんだけど。しかし真実は魔界の中である。 それにしても12歳とかって成長期においてケッコー重要な時期でしょうにヴァンさんや。(生後◯ヶ月とか言わない)。 しかしコレが拗らせると…ゲフンゴフン成長するとツンデレ(んけど)になるのかそうかわかった。…ナマエはまた一つ賢くなった! あ、因みにその犠牲者だがあいや生きてるけど、そー言うってコトはつまり幸い(アニスではない)人形士(パペッター)が下にいてぼよーんとね、うまい事キャッチしてくれたんで大事には至らなかったりするんだけどもね。 しかし君、私がここに配属された理由はだね。 「神託の盾ならまだしも預言士の人だったからねー」 それってつまり後に「(※戦えない)」とか付くって事なんだよね教団員は教団員でも神託の盾ではないから。受け身もへったくれもない。 因みにこれは馬鹿にしてる訳でも何でもなく、音素の扱いはともかく肉体は言ってしまえば一般人とそう変わらなかったって事だ。 「そんなこんなでそこから『やっぱ高所に対応出来るヤツにしよーぜー』と上や周りの全体的な満場一致となりまして。で、今に至る」 「ふうん…なら、アンタは平気なんだ?」 「…まあ一応は」 少なくとも治癒術師さんに迷惑はかけないと思う。まさかの私自身がそれだけどな。 だから実は落っことされてもあんま意味はないんだな。むしろ無事。だからそこの少年よじりじり後ずさるしかないよーな不穏な動きは取らないでいただきたい。 しかもっつか大体、落ちたところでその辺の柱とか適当に飛び移りながらまたここ舞い戻っちゃうから。いちいち階段は普通としてもワープだのを使わんでも戻って来れちゃうから。まァそれでもいざやるとだいぶ見せ物状態だけど。神託の盾の中ですら。 みんな忍者なのにね。一発木登りつか木乗りだの高いとこから落ちて無傷だのとかそれなんて人外。 |