――六、神、将(予定)、と。 キラリと輝く鳥のクチバシ(?)みたいな仮面に気が遠くなりそうだった。 くそうわかってたとはいえ不機嫌極まりないお声(でもちょっと楽しそうとかどんな仕掛け?や、死のニオイ?)もカワユスじゃゴルァァ! 「アンタのウワサは聞いてない訳でもないし」 「…それってもしや、」 チラと壁を見た。 「ああ、さっきまで壁らへんにいたと思うけど」 彼もチラと壁を見た。 「…空破爆炎弾の刑に処す!」 あんにゃろうも大体私も格闘家なだけに。 「へえ、ボクそれまだ使えないんだよね。教えなよ」 「まさかの命令形!?」 「て」じゃなくて「な」かよ!「て」でせめて下さいを付けろよ! えっ原作でヨユーで使って…たっけ?…やっべ忘れた。 とりあえず、アニスと割と似た技をちょいちょい使ってたのは何となく覚えてんだけども。 あと嫌味眼鏡(譜術)。 …えっまさかの(今日『まさかの』多すぎだと思うんだけどその辺どうだろう?)その技のティーチャーは私ですか?いやいやまさか、これっきりだからね。 そら、性格的には一番好きなタイプだけどね!エル・オー・ブイ・イー、ツンデレLOVE! ……だけど、デレなんてこのコの場合所詮私みたいな恋するいやしてないけど、オトメの妄想だと知ってるからね。 特にこのコのツンときたらまるで息をするように簡単に人を害し時に命をも奪う。 だからここは穏便に済ませる他ない。手酷く断ってこの先根に持たれちゃたまらない。 「ハァ……もういいよ。どっからでもかかってくればー」 修練場のド真ん中で割と無防備に力を抜いてみた。 多分さっきのからしたら難易度ノーマル(兵士さん達ごめん)からハードかマニアに上がってるワケだけど、まさかアンノウンてこたああるまい。うん。 仮にも生まれて彼数ヶ月。私、仙人。 「本気で行くよ」 二つ名はまだの辺り、少なくとも殺されるような事はないだろうそうであってくれ、と今から確かそんな感じの二つ名を貰うのも頷ける素早さの片鱗が伺えるスピードで以てこちらに肉薄する彼――シンクに、私も腰を低く落とした。 てゆか、なんかこのセリフ聞き覚えある!ナマで聞いちゃったよキャー! …こんな時までミーハーな自分がなんか悲しい。 甘かった。 「……わた、私、何て事を、」 私はよけていた。ただひたすらに。 多分見えてたら躍起になって段々ギラギラした目に変わってったんじゃないかなーと思う。真実は仮面の中だけど。 薄ら笑いが舌打ちとともにまたへの字に戻っていってこちとら生きた心地がしなかった。 だけど、そんな時だった。 女だからとか。 何の躊躇もなく間合いに飛び込んできた拳に一発、一発にだけ私の拳が反応した。いや、させてしまった。保身のあまりに。 あ、コレ受けたら多分内臓破裂じゃ済まねえかも、なんて空気を抉るような凶悪な攻撃がお腹の辺りに飛んできて。 …よけらんなかった。 腐っても毎日、きっと彼と同じように訓練している私も、けしてなまっている訳ではない。けれど。 たとえ、この上なく落ち込んでいる最中であったとしても。 でもきっと死に物狂いで強くなっている最中の彼は、もしかしたらそんな私より数段上を行っていて、発展途上の階段を一段どころか二、三段飛ばしなんていう速さと勢いでかけ登っていたのかもしれない。だから、甘くみちゃいけなかったのだ。 けして。 彼も、一度は殺されかけているのだから。死にたくないと思ってるかどうかはわからないけど……いや原作の限りではあまり死に頓着しているようには、思えなかったけれども。 むしろ簡単に命を放り出していた気がする。 だけど原作前である今は少なくとも、強く在らなければまたあの溶岩へと捨てられる――。 そういった考えの元、こうして強さを手に入れつつあるのではないだろうか。 じゃなきゃこんなにも短期間でここまで上り詰められた意味がわからない。 だから、私は咄嗟に、彼が狙ったみたいに腹を殴り、先の兵士さんなんかと比べ物にならないくらいの勢いで壁に叩きつけてしまっていた。 「っシンク!」 手に残る嫌な感触に血が冷たくなるような感じを受けながら、直ぐ様傍にかけ寄って傷を調べた。 否、調べようとした。 「、――え?」 たとえぐったり目を伏せてようが気づいたらきっと彼の性格上そうするかもしれない。いや絶対に。心配すら煩わしいと仮面の下から睨み上げるのではないだろうか。 だから振り払われてもめげずに治癒術をと思っていたのだけれども、それは随分と無用の気構えだったのだ。 お腹を見ようと伸ばした手が、止まった。 「嘘、でしょう?な…んで、身体ッ、消え……え?」 明滅する彼の身体が、そこにはあった。 |