深淵 | ナノ


ところで、そんなフローリアン育成事情はさておき…ってなんかこんな言い方するとまじもんのなんてゆーの?美な少年を自分好みに育て上げちゃえとかなんてステキなシミュレーション。少々(大分)内臓は出かけるし骨も軋ませられるものの基本装備は無垢そしてココ大事、イオン顔(イオンフローリアン二人ともごめんだけど他に言い様がない)。たぎる乙女心ならぬ萌心、お口(端)の第四音素は今日も元気に液体を垂れ流しついにはお口(中)の第三音素まで暴れてハアハアあれコレ元からじゃね?…あ、自分本気でキモいな。
おかげでゴミでも見るような目を向けられてたり…、

…は、一応してない。ただイオン曰く思い出し笑いの酷い版(ちょ)が増えたらしくそのたび不機嫌そうにこっち見てくる。
イオンの前ではレプリカネタは御法度だと思ってるのでなるべくニヤニヤしないようにとも思うんだけどいかんせんフローリアンは可愛いやつなので、一緒にいる時間に比例するかの如く私の顔は頻繁にだらしなくなるというか。

…ああ、うんイオンにね、フローリアンの事とか総長に託されただとかヤツの執務室でのやり取り洗いざらい吐きましたよ流石に。吐いたっつっても至って穏便に自主的にだけど。
ただイオンの目は全くもって穏便じゃなかったがな。私への罵倒「はあ?誰も近寄らない部屋にわざわざ忍び込んでしかも隠されたレプリカと鉢合わせとかバッカじゃないの?」(返す言葉もございません)と、総長への悪態「いくらレプリカってナマエに明かす訳にはいかないからってよりによってアレより劣化してるレプリカを僕扱い?ふざけるなよ老け顔が」(アレって多分原作の…だよね?ていうか老け顔て)と、フローリアンへの…、何だろうこれは「…まあ、また見捨てて何かあったら僕は自分を許せそうにないから、容赦しない訳にはいかないんだろうけど」(…ええと?)、といった具合に。
…何つーか、最後が謎すぎる(教えてくんなかった)。

だって総長にフローリアン見せられちゃ、いや見せるハメにしたの自分だけど黙っておいてふとした瞬間どっかで綻びが出るよりイオンに結託してもらった方が生存率上がるかとかね(心配の配分は言わずもがなフローリアン<私ですごめん)、あと後になってー、なんて表すくらい月日が流れてからバレちゃった場合その時が怖いよなあとか…ね?(何ってイオンが)、それにフローリアン(ともう一人のコ)生きてるの、総長経由で流石に知ってんじゃないのって思ったんだよね。でもキレ具合からして知らなかった、というか頓着してなかったみたいだった。
きっと自分の身体の事で精一杯なんだろうね……待っててね、と心底思う。

余談だが、二人の命を拾ったのはイオンは私室を飛び出しただけに過ぎない火山に距離のありすぎた私になす術(すべ)ある筈もなく自力か大方ラスボスの息のかかった奴による犯行(?)だと見てるようだった。まあ当然だわな。すべ、というかまさに文字通り術(じゅつ)が私に実はあるだなんていくらイオンの勘が鋭敏でも無理だよ空間移動術の事は今でもこの(アビスの)世に知る人はいないのだから。

こうして『片方の子イオン扱いしかも私家庭教師生活再び』任務は、表へ出る事叶わないイオンは導師守護役な私とは遮断設定なのだから敵さんらに私から仕入れた情報に関しては文句どころか向こうがとっかかりを作ってくれない限り話題として挙げる事すら出来る筈がないので何にキレてるかイマイチわからんイオンには申し訳ないけれど実質肯うしか彼に選択の余地はなく、比較的容易に家庭教師の案件への許諾を私は得(ないと困っちゃう訳ですけども)たのである。「厳しくしごいてやれ」的発言もお約束の音素とセットに飛ばされつつ。
そしてこの時のイオンなのだが本気でキレててもしもフローリアンの事言わずしてバレたらー…、どころじゃない既にマジで怖かった。「レプリカも人間、レプリカも…人間」とか何とか必死に自分に言い聞かせるようにして(どんな呪文だ)何とか殺気は納めてくれたから良かったんだけど、久しぶりにイオンの本気(と書いてマジギレと読む)を見た。
それだけ快復に向かってるって事ではあるから、はて喜んで良いのやらなんなのやら。ハハ。

恒例のイオン往診時、数日前、フローリアンの家庭教師を始めて1週間程が経った頃の事だった。




…とまあ、こうして私の一連の行動を客観的に眺めてみると何だか私だけ美味しい思いをしてる感が否めない。いつでも治癒術に頼るかといえばそういうワケでもないので胃薬とはどんどん仲良しになるとはいってもだ(要するに不本意)。
フローリアンは誰に遠慮といえば会った事もない名付け親様くらいなので今は除外させて頂くとして、ここではつまりイオンについて。

――そう、お互いが深く想い合っている、アリエッタの存在が私の良心に暗い影を落とす。
私への薔薇のお見舞い以来、イオンとアリエッタはただの一度も会っていないのである。

思うに、毎日イオンの身を案じそして寂しがっている彼女に私の往診は巧みに隠すようにして「イオン最近調子良いらしいよ」といかにも伝聞らしくさせた上での一言くらいは伝えるべきなんじゃなかろうかと……実際イオンは着実に快方に向かってる。治癒術だ。

それなのに何にも伝えないせいでアリエッタの笑顔は減るばかり。ちょっと微笑む、なんてのも今や見られなくなった。最近なんてもう崩壊寸前の堰、確かに普段から泣きそうに困った顔をしていたとはいえいつ泣き始めたっておかしくないような状態だ。おかげで周りの人達はあたふたしてばかり。たまたま目撃したがあのアッシュでさえまさかのタジタジだった。

そこで私は、今日もハナマル元気なフローリアンと悲劇(フローリアン的に)のお別れをした後、そんな任務を任されてしまったばっかりに最近自室で作る機会も殆どなくみんなバラバラ食堂通いが通常運転となりつつあるため、そこでアリエッタを見つけるべとええいメンドクセー!ってコトで人垣に神経で以て切り込んだ。
無論アリエッタとは今日は食堂で夕飯ご一緒しましょと約束済みではあるがいかんせんここは広い。人も多い。もはや狙おうなんて考えすら起きない程行き当たりばったりでテキトーに席を確保するしかないパターンが定番なため、夕飯渡してくれたおばちゃんに背を向けマーボカレーお盆に乗っけて周りを見渡し一応視力にも頼るかとピンクいロングどこかにないかなと一瞬立ち止まった末の行動だった。

が、それが何やら不味かったようだ。


「きゃっ!」

「ギャッ!?」


女の子らしさ?知らん。てなワケで後者が私。


「どこ見て歩いてんだボケぇっ!……あ、いえ、何でもないですぅ」


なんか凄まじい裏表を見た気がする。確かに余所見してたのはこちらなのだがそれぶっちゃけぶつかった向こうも同じなよう、な?…こりゃ言い返してたら後が怖かったな。チキンはこんなトコにも健在なのさ。おかげでボケ!の瞬間ビビって黙ってしまっただよ。
なんか前半背後に般若が見えた気がするんだけど後半はもれなく語尾からハートマークが飛んできた気がする。怖い(切り替えようが)。
とりあえず私を見て何やらハッとしてごく普通の少女化…かは怪しいトコだが裏か表かの顔を引っ込めてくれたので良しとしよう。多分私の軍服が判断材料。ここは少々上下関係に煩い。私は気にしないけども。逆に相手の不興は買わんようヘコヘコはめっちゃするけども。我が身が大事すぎて。

前方不注意、ここ神託の盾の食堂は食券制なためこれからそれをカウンターにいるおばちゃんに渡そうとしていたのだろう声と制服からして女の子と呼ぶが相応しき小学生で言うなら4年か5年くらいだろうか、ここ神託の盾では幼い部類に入るであろう子とドスッと正面衝突してしまった。…やっべ、これ戦場なら私もこの子も死んでんじゃね?
とりあえず、相手にマーボカレーシャワー浴びせるなんて大変な失礼かまさなくて良かったぜ…。

アリエッタ(の魂)に神経向けすぎたな、自分。


「あっ!」


うお、ハモった。今の驚いた声は私とこの娘のもの。
マーボカレーを降り注がずに済んだ理由、私は何とか踏ん張れたものの私の身長がどうであれ年齢差により絶対的に生じる体格差により尻餅をついてしまった女の子の手から吹き飛ぶ食券。

…食券?


(2/3)
[back] [top]
- 74/122 -
×