復活 | ナノ


理科とか意味プーです。



8.嫌味は程々にしないと後で痛い目をみる



銀髪転入生が来て早一日。
今日は理科のテストが返される日である。

一応今持てる実力を出しきった(そして燃え尽きた)私だが…しかし、終わった。相変わらず両腕は頭上に居を構えている。そしてこう言っちゃ彼に失礼かもしれないが、沢田綱吉といい勝負だと確信中。ドングリだ。
しっかし理科か…そういえばこの世界に来た時初めて降り立った場所は理科室前だったっけ。あそこで初めて雲雀さんと会ったんだよな、あの時は気付いてなかったワケだけど。
何だかもう随分昔に思える私は、良い意味でも悪い意味でも充実した日々を送っているんだろう。主に後者の比重が大きすぎだが。

まあ実を言うと理科は魔術に似ているところがないわけじゃない。しかしそれでも所詮は人間とエルフの常識の差。結局は別物だから微妙に参考にはならないのだよ、ワトソソ君。因みに以前この世界においては危険すぎるオタ魂を発揮したドリルは理科だったりします。全力で消したがな。んで一部破けたがな。しかも今回の範囲。

少々魔術(とイヤンな失態)に思いを馳せている間に、根津とかいう理科教師に私とどっこいどっこいであろう沢田綱吉が呼ばれた。そして、彼にちょっと指導者としては失格だと思う言葉の暴力を浴びせられている(そしてそう、それはきっと数分後未来の私の姿)。

いやいやソコは次にもう少し頑張ればいいんだゾくらい言おうよ。いつの時代も頭ごなしに否定しちゃ伸びる子も伸びなくなっちゃうゾ?癪だけど私もクソ神にはそうやって鍛えられたんだゾ?そして人間手放したゾ?笑えねー。


「――次、苗字ー」


呼ばれてしまった。絶対何か言ってくるだろ自信あるよ私。勿論残念ながら底辺という方向で。


「沢田にも言ったが…あくまで仮定の話だが、クラスに点数を半分も取れない生徒達がいたとして、そいつらのせいでクラスのモチベーションが下がるとしよう、」

「はあ」


うざす。


「そんな奴等ははっきり言ってクラスにいる必要はないだろう。ただの空気汚染でしかないからだ。苗字も、別にお前がそうだと決まったわけじゃないが、運動神経ばかり良くても最後にモノを言うのはおつむだという事をよーく覚えておくんだな」

「…」


おおっとムカチンですぞ。つーか私の身体能力の噂出回ってる、だと?いつの間に。…あんにゃろ体育教師め、言いふらしたな。

それより目の前のセンコーだけども。当たり前だが手をあげたり暴言を吐いたりはしない…が、ただ、ちょっとばかり仕返ししちゃおっかなと目論んでたりする。ケッケッケ、ちーっと脅かすだけさ、悪く思うなよ。どっかの悪役みたいだけど気にしない。
それに、今にもぺろりんと私の残念すぎる結果を皆に見えるように手首を捻って角度を変えようとしてるし。そうはさせるかァ!私にもなけなしの羞恥心があるのだよ!

本の、ほんのすこーし殺気手前な怒ってますオーラ(勿論飛ばしはしないよ最低ヤローだけど相手一般人だからね)を目に乗せ、冷えたソレで根津を睨み付けてみた。名前のにらみつける攻撃!


「…ひぃッ!」


うわ、腰抜かしちった。


「…スイマセン先生ー、次はもう少し頑張りマース」


私は教卓に向いて立っていたから、クラスの皆の位置からだと私の目は見えないし、何が根津を驚かせたかわからなかっただろう。
…大人気なかったかね。ま、いっか。ヤツのがよっぽどってもんだろ。けして出来た大人とはお世辞にも言えんだろうて。

棒読みで返しながらサッと根津の手から答案用紙を奪い取り、くるりと180°振り返ってヤツに背を向けた。あばよ。
手にした紙キレが冷気でピキぐしゃ…とイヤな音を立てたが、それよりも周りに私がヤツにねちねち攻撃をされたショボすぎる所以を見られないよう、それを胸へ押し当てるようにして抱え自席を目指す。

あら、沢田綱吉こっち超見てる。ふはは君の仇も取ったどー!なんつって。

視線は合わせず、無表情で自分の椅子へ座る。京子ちゃんが小さくとも失われないそのカワユイお声でそっと大丈夫?と訊いてきてくれたので、あんなのどうって事ないよとこちらも小声(カワユクない)で返しておいた。

それと同時に、教室のドアが勢いよく開く。

転入生が遅刻して来た。根津がいつの間にやらリボーン(復活)して注意しているが、彼はガンを飛ばしただけで一直線に沢田綱吉の元へ歩いていく。あああ相変わらずですね痛いです肌グッサグサ。
しかし昨日の態度とは打って変わり沢田綱吉の目前に来た途端、いかにも従順ですと言わんばかりに彼への挨拶だけで腰を90°近くビシッと曲げちゃった転入生。おおう転入生よ、何だかキラキラオーラが漂っているぞ。ありがとうこれで肌痛くないヨ沢田綱吉キミのおかげだ。ま、おみゃーサンがいない場合はまた敵意まみれになるんだろうがな。しっかりリード引っ張るんだぞボスと言う名の飼い主よヤツは狂犬だ。

そして皆は彼が沢田綱吉の舎弟になったと口々に言っているが、合ってるっちゃ合ってると思うんだ。
…ただ、ファミリーの上司と部下という物騒極まりない関係なだけで。




因みに私の点数は39点でした。めげるな、私。
Oh…それこそ私も家庭教師雇うべき?


***


突然ですが、私は只今校長室に呼び出しをくらっております、まる。

ちょ、一体私が何をした…!や、確かにちょいと睨み据えたけど、それだけデショ?!
しかしそれすら根津には耐え難かったらしく(まあびびって尻餅だしな…こうかはばつぐんってか?)、転入生&沢田綱吉共々、私まで罰を受ける羽目になってしまったワケでして。

退学ダァー!と叫ぶ根津(耳イタァー!)。私に暴力をふるったのですぞとか何とかぎゃいぎゃい騒いどるが、さっきも言ったけど沢田綱吉や私に対する行為も一種の暴力だと思うんだよね、言葉と言う名の。事態をややこしくさせそうだからじっと突っ立ったまま無言を貫くけどな。冷気ぶつけてやろうかコンチクショー。

校長が宥めていたが怒りが収まらないらしいヤツは、何やら今日中に15年前校庭に埋めたタイムカプセルを掘り出せば退学免除、というよくわからない難題を吹っ掛けていた。

…私を除く、二人に。

私は退学ではなく(まあ一応は彼らとつるんでるわけではないし)――、

…何やら、ある恐ろしいお方の元へ大量の書類運びをするという、些か普通の女子中学生にやらせる仕事ではないのでは?と言いたくなる様な罰を言い渡された。いや、だからこその罰なんだろうが。

…何だかね、その恐ろしいお方っていうのが嫌な予感しかしないワケだけども、私の勘ってここに来る直前でもそうだったっしょ結構当たっちゃうのよ何てったって長年それこそ生き地獄どころか文字通り血みどろ人生で培われたモンだかんね。コレを働かせなきゃいけない時なんてそれこそ星の数だった、よって当たるも八卦当たらぬも八卦レベルじゃあないんだ…!残念ながらドンピシャ感が否めない。
この後、職員室へ向かってその書類とやらを受け取りにいかなきゃなんだけど――逝く、だよね?もしかしなくても。憂鬱通り越して何らかのフラグゲットだぜ!コース?いやいや何も考えるなかえって何か呼び寄せそう。思考ヤメろ私。

短気は損気とはよく言ったもの…か。




廊下を三人で移動しながらひたすら後悔と不安に苛まれる。何ってだってまたもや主要人物との接触しかも良からぬ罰則付き。私の背後に縦線は元より哀愁と共に冷気が寂しげにひゅるーっと木枯らしの如く吹き荒ぶ。一枚の枯れ葉が幻覚で見えてきそうだ。
一応二人には当てないけど。関わっちゃったのは今回は完全に私の短気と言う名の落ち度だし。

一人どよよんと落ち込みきる中、沢田綱吉が非常に申し訳なさそうな表情と声色で私に話しかけてきた。


「な…何かごめんね、苗字さん。君まで巻き込む形になっちゃって」


一応会話するのは初めてだったりする。余談だが避けに避けてたのもあるし、どうしてもって時は京子ちゃんに伝言を頼んでたからだ。彼女に対し心苦しいのは当たり前だが、些細な内容だろうと嫌な顔一つしない彼女は私と違い中身からして天性天使なのだと痛感した。てか好きなコをけしかけるとか私それ何て恋のキューピッド。中身のせいで似合わなすぎて笑える、目から氷だ。
そしてそんな私の行動を私が気を抜いた瞬間沢田綱吉本人に目撃された事があったが、それこそ本日の転入生が彼に対峙した時みたいなキラッキラな視線に晒された。胃が痛かった。彼への良心の呵責もあるが無論主に主要人物の接点とかそんな意味的に。こっちは精神的(物理的とも言えるか?)に目から氷だ。


「こいつがどこのモンかは知りませんが、こんな奴に頭下げる必要ありませんよ、10代目!」

「別に君のせいじゃないでしょーよ。それと獄寺君。私の名前は苗字名前、一応……フッツゥーの、女子中学生。ま、別に忘れても構わないから」

「(何か一部イントネーションに違和感が…)クラスメイトなのに!?」


おおっと出たァ必殺(?)沢田綱吉のツッコミ!感動している場合ではないけどな…!
因みに忘れてほしいのが私の本音ですええそうですとも。さあ私の細かい原作知識のようにレッツ!忘却の彼方!特に昨日!
というか獄寺君、君は私の事を何だと思っとる。アレかやっぱ昨日の爆弾事件のせいか、うむ自覚はなきにしもあらずだからレッツ、レッツ!


「それに根津の沢田綱よ…じゃなかった沢田君に対する言い方もあんまりだと思う。獄寺君が怒るのもわかるよ。根津もぶっちゃけざまあって感じだったし?」

「おっ意外とわかってんじゃねーか!」

「何でフルネーム!しかも言い直した!っていうか苗字さん結構辛辣ゥ!」

「あはは忙しいね沢田君。…あ、じゃあ私職員室に行かなきゃいけないからこの辺で。二人とも絶対タイムカプセル見付けて根津をぎゃふんって言わせてやりなよー」

「へっ言われなくてもやってやらー」

「あっ苗字さん、あの…」


フーいかんいかん、獄寺君は昨日の今日だからそうでもなかったけど沢田君はずっと脳内で沢田綱吉呼びしてたからつい癖で出てしまったがな。
そして沢田君キミは何を訊こうとしたんだ。いや多分昨日の事だろうけども。ホレ、キミもレッツだ頼むから…!

ハァ…さて、気を取り直して職員室へ向かうとするか。




…逃げちゃおっかな。駄目?
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