山吹さんちのイーブイさん※奴良さんじゃない所がミソ…かもしれない | ナノ


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全く、苦笑するしかないよねーホント。メガシンカだなんてとんだ勘違いだった。いや当たり前なんだけども。

前世ではその暗黙の了解が絶対でも、確かに今は本当にありえない事なのかと問われて「ない」と言いきれるだけの根拠は既になかった。自信も当然ある訳ない。
私が前世の記憶を持ち続けている事、ポケモンでありながら妖化した事、前の世界では到底無理だった人の姿を取れる事……これら数々のミラクル起きまくりなんだもん、進化後から進化前に戻れるのも考えられない事ではなかったのだろう。

結論。アレだね、もうこの世界何でもアリだよ間違いない。ウーン、流石妖の世界。
…え、関係ない?




そして件の次の日だが、朝お母さんは昨日の思案顔は何だったんだろうってくらい全く普通だったので、私は着せ替えポケモンならぬ進化替えポケモンと化していた。

時は数分前に遡り、ウチの庭(森)の開けた場所。何で外?ってのは単に「折角だから技とかも見てほしーなあ!」なーんて欲張ったから。いやだって、進化したらイーブイって基本タイプ変わるしね!無属性とでも言えば良いのかな、まあそんなイーブイのタイプであるノーマル以外の技も見てほしかったワケよ。まあイーブイでも昨日ボヤいてた「『かみつく』お見舞いすれば…」ってのも実は悪タイプだったりするんだけども。つまり全く出せない!って訳でもないんだけどそれはそれ、流石にイーブイのまま「かえんほうしゃー!」とかおかしいからね。
因みに前の世界での仲間(お年寄り)に聞いた事があるそれは、その昔悪タイプが見つかる前はノーマルと見なされてたらしいというなんちゃってマメ知識。


「フツーポケモンってのは進化したら前の姿に戻る事はないってのが私達ポケモンの間での常識…の筈、だったんだけど。何かね、私はどうやら外れちゃったみたいなんだよねえ。でもまっ見てて、お母さん」

「ふふ、皆どんな姿になるのかしら」


お母さんのわくわくしたような顔の前が私のステージだ。
ではでは、3、2、1…。


「パチパチパチ」

「…エへ。じゃあまずは最初になったシャワーズから!――エイヤッ!変化!」


手でやりつつも口で言っちゃうお母さんなんか可愛いなとか思いながらイーブイの人型からシャワーズの原型になり、そしてその後は私の知ってる限りの進化後全てに順繰りに姿を変えていった。
別に、イーブイの原型もしくは人型に一旦戻んなきゃ他の原型または人型になれないー、なんて縛りも特にないらしい事は昨日の内にお母さんの見てないとこで予行演習とばかりに実験済みだったから。…というか、擬人化時ですらこれといって一旦イーブイの人型に戻る必要もないらしかった。…何て便利な!
つまり、昨夕の私を鑑みてみたところであまり意味はなく、お兄さんの前でやったような手順は要らないという事らしい。

ただ私が極端に疲弊するとイーブイに戻っちゃうみたいだから、そこだけは注意が必要みたいだけど。マラソンがいい例だ。

勿論技もそれぞれ簡単には見せていった。シャワーズならみずでっぽう、サンダースならでんきショックってな具合に。…ただ、妖気はお母さん曰く強いらしいがサバイバルしてるだけで修行してるワケではない私はポケモンとしては未だにビミョーなため、ある意味簡単なモノしか見せられなかったが。
…戦うの好きじゃないけど、もちっと何とかしよう、うん。先の例に続けるなら誰が常にガス欠みたいなブースター要るよいやお母さんはショボい火吹いただけでも喜んでくれたけれども。

原型にしても人型にしても、基本はイーブイの姿でいる事にした私。いやま、あんま深い意味はないんだけどいきなり急成長したままの姿でうろうろするより折角戻れるんだから見慣れた姿のがお母さん的にもいいんじゃないかと思うんだよね。

でもまあ要望があったら変えるべきなんだろうし変えたげたいのは山々なんだけどね…「ホニャララの姿でいてほしいな、」とか。…しかしながら、私には昨日家を飛び出す前にもボヤいたよーにかねてからそれこそ生まれてからのヤボーがあるワケよ。しかも私は幸いにしてレパートリーに富んでいて実際ありえない事に全てを手に入れた。これをフル活用しなくて何のためのフル進化。

予想はなんか合ってそうな予感?


「名前、勿論皆可愛かったんだけれど妾、特に『ニンフィア』が気に入っちゃったわ」


それぞれの人型も含め全部見せ終わった後での一言である。


「そ、そう?でもごめんねお母さん、私色々画策…じゃなかった、狩りとかお手伝いに合わせて姿変えたいってか変えなきゃだから、あんまニンフィアではいられないかも…」

「あら良いのよそんなの!ただ色合いが特に可愛らしいなって思って言っただけだから」

「えへへ…」


ヤボーってのはつまりは衣食住、というかサバイバルに合わせてその都度進化後の姿を変えちゃうぜ!って事で…魚ならシャワーズで捕るに限るし焼くならブースターだし。…って、今思ったけど料理やあとお風呂とかも『水用意する→沸かす。』ってカンジでこの二種類はうってつけだなァオイ!
なんか聞こえた単語についてはつっこんではいけない。

そしてニンフィア云々についてだが、まあわからないでもない。だって女の子!って形に色合い前面に押し出してるもんね何となくだけど。私にヒトの好みはわからぬよ。とはいえ、この三年培ったお母さんとの生活で何となく想像出来はするが。じゃなきゃお母さんの娘として名折れだろう。せめてお母さんの好みくらい把握しとかないと!

とりあえずそのリボンな触角…これは私の大好きなトレーナーのために空けておくのさ。勿論お母さんの特等席だけどな!いやね、ニンフィアってのは無性に好きなトレーナーにその触角を巻き付けたくなる性分(?)なんですよ。しゅるしゅる。
そりゃ、お母さんは私のトレーナーとは厳密に言えば違うんだろうけれど、でも、お母さんの傍を離れるつもりは一生ないから同じようなものだろうと私は解釈する。

たとえお母さんが丈夫になって私が常についていなくても平気になる事があっても、私はお母さんが何より一番だから。

それにしても…あんま詳しくは、ていうかお父さんと同じく殆ど聞いてない訳だけど、お母さんこーゆーピィィンク!みたいなのはお父さんのお母さん――つまり、お義母さんを思い出すみたいだった。呟いてたのを昔聞いた事がある。だからこその気に入ってくれた発言、な気がする。

――でも、それってつまり、私のおばあちゃんて事だよね。どんな人なのかな。まだ生きてるだろうか。
生きてるのなら、会ってみたいな…。

妖じゃないという。
猶予は、あまりないのではないだろうか。


***


トリだったニンフィアの姿とそれの人型も見せたし私のショータイムも無事閉幕。その姿のまま縁側にお母さんと戻って座っていた。
床板に乗る髪はほんのすこーしサーモン寄りに見える青みがかりはしない、けっこう派手めなピンク。…絶対浮くなと思う。どこでとは言わない。しいて言うならさっきの画策云々かんぬん。

隣でお母さんが私の髪を一房掬い上げながら、感心したように言う。


「それにしても、イーブイの時からしてやっぱりどの子も人の姿になると髪は身体の色のどこかしらを取っているのね。目はそのまま進化形、って姿の目からだけど。でもほらこの髪もこんなに桃色」


…とまあ、お母さんの言うように人型はそれぞれの進化後を何となく連想出来るような、一部を取られてるらしい色合いだった。まあきっと擬人化ってのは皆そんなものなんだろう。じゃなきゃ擬人化とは言わんだろ。

で、だ。一応カンタンにまとめとくと、

イーブイ=茶髪+黒目(茶混じり)。
シャワーズ=水色髪+黒目(紫混じり)。
サンダース=金髪+黒目(紫混じり)。
ブースター=赤毛+黒目(青緑混じり)。
エーフィ=薄紫髪+紫。
ブラッキー=黒髪+赤目。
リーフィア=薄めの緑髪+茶目。
グレイシア=薄めの水色髪+碧眼。
ニンフィア=ピンク髪、薄めの水色目。

ってな具合だった。うーんカラフル。

…やっぱ街はブラッキーで行くしかないね、うん。この中ではまだ無難な方だもん。え?まだ行くのって?

愚問である!

そしてイーブイで行かんのかって?

愚問である!

…いやまあ、行くの諦めてないのは冒頭でも宣言してるように言うまでもないんだけど、イーブイを除外してんのは進化形の何かしらで行かないと昨日も言ったけどお店見にくいがな!って話でだね…。まあ画策よ。

私は昨日みたいに空を確認した。よし、まだまだお天道様は万歳してる!


「お母さん、今日は付き合ってくれてありがとう!それでね、私早速近くの川とかでお魚獲ってきたいんだけど…実はね、シャワーズなら水に溶ける事が出来るの。息も当たり前だけどずーっとどこまでも続いちゃうんだ!だから溺れるなんてまずありえないし…だから、ね?いいでしょう?」

「まあ凄い!じゃあお願いしようかしら。…だけど、いい?名前。危ない事は…」

「うん、わかってるよ!ていうか、溶けるって事は言い換えれば敵には水中にいる限り絶対見つかんないって事だしね!じゃ、行ってきまーす!」

「フフ、行ってらっしゃい。…遅くなっちゃ、ダメよ?」

「…ウグッ!は、はーい…」


うむ、今日は流石に昨日の今日だし、自重して裏山の川だけにしとくかな、アハハハ!…意思弱っ。
…でもまあ、今度こそしくじったら雷落ちかねないしねー…。

因みにマジもんをシャワーズで受けたら黒コゲおコゲなワケですね。
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