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ただいま。さようなら。

……こんにちは?



【マギ?での彼女の生い立ち】



自分にとっての故郷に酷似した世界にいた私が、またもやある世界に吹き飛ばされ。

しかし酷似ではなくある二、三点程を除くならば寸分の狂いもないと言える、真の意味で自分の世界へ帰ってきて早数年が経過し。

私は現在、肉体年齢17、18歳。ぶっちゃけ、魔界から人間界にブチ込まれた頃と外見年齢(だけは)、ほぼ同じ。

生活は質素だけど保障されていて、とても安全なもの。

今のところは。




毎度の事になるがどの基準でどの世界かを判断するのかは経験上微妙な差だったりするのだけれど(異世界混じってたりとか)、今回は第一にまず自宅があった点。勿論その家は生前のまま。

しかしそのままと言うには語弊で、ある点を除けば、だった。
あろう事かその唯一が、既に他界して魂も成仏してしまっていた両親の事。

魂がまだこの世をさ迷っていれば悪魔能力なり霊能力なりで会話くらいは出来るのにと頭では冷静に考えたけど、やっぱりショックは大きかった。自分が死んだ時もう会えないと大泣きしたのは遠い過去だけど、それでも置いていかれたと改めて目の前に突き付けられると正直堪えるモノがあった。

死因は何て事はない、交通事故。…生前の私と同じって。
家の中を嘘でも冗談でもなく半分発狂しながら漁ったところ、私が帰ってきた年で丁度二人が死んで5年が経つらしい事が判明した。当時の私の肉体(だけ)は12歳くらいだったから、7歳そこらで両親を失った設定になる。

狂いの一点目はつまるところ、両親の死だった。

、何でわざわざ心を抉られる様な世界に戻ってこさせるかなナニやらかしてくれとんじゃワレェ。誰って?アレだよ神様もといクソ神さ。今更ながらに生前吐こうもんなら何てバチ当たりなって叱られる事間違いナシな呼び方だけど、残念ながら転生後の私には許される。…ハズ。だって名前はふきとばされた!とかこれ何回目って話だもんね。
話が逸れた。そう、普段ならクソに対し略しすぎたクソ神に対しそう罵るところなのだけど実は今回、相手が違うので素直に憎めないのが、辛い。ましてや私を生かす為の代償だったから尚更。

――前置きが長くなったが、要するに今の私は世間一般で言う女子高生をしながら、一人寂しく暮らしているのである。

因みに学年は3年。奇しくも、生前全う出来ず散った年に追い付いていた。

時は冬。外でしんしんと降り積もる雪も相まって、物悲しさを一層感じさせた。
…雪女でもあるってのに、何だかここに来てから――いや、戻ってきてから?折角の雪も手放しに喜べなくなったように思う。
始まりの転生以来、雪といえば私を最もはしゃがせる材料であった筈なのに。実は人の生き血は二番目なんだ(食べ物としては無論一番だけどねー)。




そんな私がこの度、一人暮らしせざるを得ない状況とはいえ元の世界で平穏無事に学生なんぞやってられるのは、前述の通りある人の決死の行動のおかげ。

ある人とは、冒頭で述べた“ある世界”での一人の美しい女性。すぐわかる事なので言ってしまうが、身内でもやはり私にとって最初の人ではないせいか客観的に見る事が出来ていた訳だ。だからよく思ったものだった。私が言うのも何だが、傾国の美女とはよく言ったものだと。
……その血を引いてしまったがために、私もこの先“色々な”目に遭うワケですが。まあそれはおいおいまたの機会に。

そんな天女のような女性とは、その世界での私の新しい母、その人。


***


一応17、18年前になる。
私は名も無いようなどことも知れぬ貧民街、いわゆるスラムの片隅で新しい母の一人娘として誕生した。

母の母胎で目を覚ました瞬間そこが羊水に囲まれた地(?)と察するやいなや冷静に状況を分析したところ、まず周りの言語が理解出来なかった事からとりあえず外国だろうとアタリを付けた。
他にやる事もないので聞き取りに専念し漸く言語を理解する頃、私は彼女の許にて転生。

しかし、生まれてすぐにまたか、と項垂れた。

スラムという陰気な土地柄故かあまり数は見かけないものの――キラッキラした鳥っぽいモノがチビチビ浮遊しているのを目撃し、多分、世界ごと違うんだろうなと気づいたからである(余程死んだような目付きだったのだろう、母に物凄く心配された。ごめん)。

その鳥モドキに紙越しに見覚えはあった訳だが、その時点では生き抜くのに必死だったし、周りにそれらしい人物も居なかったので無視していた。
うん、多分光の屈折とか反射だとかそんなんだよねと自分を納得させながら。ムリあんだろって?…言うな。

新しい母は、スラムらしくというのもあれだけど、元は美人だったろうにガリガリに痩せこけて見る影も無くなってしまっていて、しかし性格においては――貧乏は心をも貧しくさせるというのは有名な話であり無理からぬ事だと実際目の前に見続けていて私もよくわかったものだったけれど――全くスラムらしくなく心の美しさは濁らぬままの優しい女性で私をとても可愛がってくれた。

しかしそこでちょっとした問題があった。父は最後まで、私がこっちに戻ってきてしまうまでわからないままだったのである。

父は母が語らなかったため生死すらもわからずじまいで終わったからだ。私も私で話したくないのだろうと訊きはしなかったのも要因していた。
こんな事になるなら、もう少し食い下がっておくべきだったのだろうと今、思う。全ては後の祭りだけれど。

ただ母は、一言『立派な人』と誇らしげに教えてはくれた。
…当時の私としては、どんなフラグも立てられないただのモブであれば何だっていいやとか、母にも元よりまだ見ぬ父に対し中々に失礼な事を祈るだけだった。

彼女は父の事どころか自分の事もあまり話さない人だったので、私は、スラム出身にしては立ち居振舞いがどことなく気品があるし勉強も教えてくれたりと、恐らく生まれはそこそこ裕福な家庭だったのでは?と勝手に推測していた。因みにその教えがなかったら文字は読めないままだった。だって文字うにょうにょチョンチョンってな具合にアルファベットですらなくてだな…。

そして色んな意味で極めつけ。
ここスラムで、『魔法』を駆使出来るのは母ただ一人だった。…あいや、私も違うのなら何といっても命綱だから魔術持ちではあるがそれは抜いて。

それより、私もそうして魔術を扱う身、彼女のそれは独学でどうこう出来るレベルではないと見た。つまり、どこかそういうモノが発達した環境で育ったか、あるいはそういった施設に通うだけの財産があった筈だと。

魔法という通常ならまず有り得ないその存在にも鳥モドキ並に戦慄モノだったが、母がスラムにおいて娼婦もせず生きながらえて尚且つ私も生活出来ていたのは彼女がそれを使って狩り(幸い近くに山があった)や占い(予言とか得意らしいしかも当たると評判)で生計を立ててくれたおかげなので、私は深く考えずまた無視を決め込んでいた。

微かな予感は生じつつあったが。

私も何があるかわからないスラムで生き延びるためそして何より母に少しでもラクをさせようと早々に魔術が使える事を明かし(驚愕する母には見よう見まねで修得したと何とか誤魔化した)、ささっと狩りでも手伝おうとしたのだが、どういう訳か母は私が遠くに行くのを酷く嫌がるきらいがあった。
彼女自身も何となく世間から身を隠している雰囲気で私にも常日頃あまり目立たないように口をすっぱくしていた事から、ワケありというヤツかと、ただの想像でしかないのに予感は悪い方へ働くばかりだった。

そうして、鳥モドキの事もあるしイヤな想像も膨らむわで、ちょくちょく遠い目になる私を心配してしょっちゅう日々の糧を探しに行こうとする母を押し留めつつも、極貧ながら優しい母と楽しく(“こっち”の魔法を教わったり披露したり、そして問い詰められ誤魔化す)逞しく(隠れて狩りをしたり、そして叱られる)生活する事約12年あまり。

私の想像はそれこそ最悪な形で上回っていた事を、知った。


***


夕暮れ時だった。
その日、私は恒例の狩りでゲットした本日の獲物(何かドでかい鳥っぽいもの。名前は知らん)を引き摺りながら飢えた人達に絡まれたりしないよう、人目を避け道を選びつつ帰路に着いていた。
もうすぐ自宅(という名の掘っ建て小屋)、また今日も怒られるだろうナァとか暢気に考えつつ足早に歩いていた。

その途中途中で、スラムは私と母以外私から見て外人的な顔立ちの人達で溢れてるってのに、その日は何でだかヤケに私達と同じ人種じゃね?ってな顔立ちの人間をチラホラと見かけた。
ここでの人種は明かすと要らん影を呼びそうなので割愛する。噂をすれば影ってやつだ。

身なりも良い人々。街の人に話しかける彼等の会話内容を珍しさからつい足を止め、しゃがんで獲物を脇に置き盗み聞きの体勢に入った。物陰で息を殺しながら。いや雰囲気的に。
…まあ距離があっても私の発達したエルフ耳(ちゃんと人間の丸耳に忍術で変化済み)が拾っちゃうからどちらにしても同じ事なんだけど。

近所の人達に聞き込みをしているらしく、貧しさを前面に押し出すしかないここスラムでは何とも浮きまくる彼等は、とある女を探してこんな僻地まで来たらしい。

その“女”の名は――


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