短編?読み切り?むしろネタ+毛? | ナノ


ああああ…。



【鬼滅での彼女の生い立ち?】



「家族を殺した奴も見つけるから。俺が全部ちゃんとするから、だから、だから…」


あー…この場面て確か最初の…。
数あるジャンプの中でもここまで悲壮な始まりを迎える主人公って少ないんじゃなかろうか。

そして私はそれをどこで見ているかというと――何故か後ろ手に縛られ…ってか、誰かに掴まれている。

…あれ、妹?わたし妹??

何せ成り代わりだか憑依あるいははたまた転生だかをし(させられ)たのがついさっきなのだ。
おかげで絶賛情況確認中。…と言えば聞こえは良いかもしれないが、つまりは何もわからないという。
というかこれ、今思ったけど初パターンだよね…?(私の転生は大抵が母胎からスタートだった)。

とりあえず素足に雪を何とも思わないから人外路線は相変わらずなのだと思う。(ザ雪女)
あと舌を何とはなしに動かしてみたら尖りまくった歯を舐めたから吸血鬼路線も絶賛続行中らしい。クソめ。
(たまには普通に生きたい)
(…無理か…)


「ガアアア」


あ、禰豆子いたわ。これで成り代わり&憑依の可能性は潰えたな。あっ、焦った。私今まで何気に成り代わりとかした事ないからね。知らない作品ならまだしもこのように既知の場合きっと罪悪感が半端ない。あとどのように振る舞えばいいのかよくわからない。
よく見ると私を掴んでいる冨岡さんとおぼしき人の手とは逆の方に禰豆子は捕らわれていた。

そのあとは私も知る通りに進んでいった。
一見寡黙かと思われた冨岡さんの一喝が飛び、彼と炭治郎が一戦交え、そして禰豆子も気絶させた冨岡さんが彼女に猿轡代わり的なお手製の竹筒を作ってあげていた。
(いや、ここは知らんかった)(いやまあ確かに、候補は彼しかいないだろうけども)。

そしてこの場で未だ意識のある冨岡さん以外の人物……つまり私に視線が移ってきた時、私はあとあと指名手配されようとも悪魔の空間移動術でも何でも使って全力で逃亡したくて仕方なかった。
命の恩人(炭治郎)までほっぽっとくとか何事って感じだけどそれは時と場合によると思うんだ…。

あ、恩人てのは、何故だかはよくわからないけど炭治郎、いかに彼が優しかろうとも今は唯一生き残った妹の危機に切羽詰まってるだろうに余所者の私にも時折注意を払ってくれていたから。私が大人しく事の成り行きを見守るだけだったからか冨岡さんの刃は全くといっていい程私には向けられなかったのだけれども、でもそれでも顔がずっと『心配』と言っていた。

そこまで考えた時、私はふと違和感を覚えた。

――正確には、私の動かそうとした力――純粋な方ではなく、いわゆる魔力だとかオーラだとかが、働かなかった事に。


「……え?」


悪魔の空間移動術が、発動しなかった事に。

逃亡ってのはまあ冗談とするにしても、それでも半分くらいは「やっちゃおうかな…」くらいには思っていた。しかし発動の気配すら見せない、というかそもそも悪魔の力の源が動かせないってどういう事。
普通の人で言うと術というのは自転車や泳ぎと同じで体で覚えるものだから忘れる線はない。まあそもそもの源が感じられないのだからそれはそのあとの話なんだけども。


「……、駄目だー…」


もう一度集中してみるも身体に巡ってる(はずの)悪魔の力の気配は感じられなかった。え、ここに来てまさかの不調?マ??

眉間に皺を寄せて両手をぐーぱーぐーぱー等と繰り返していると…ってあれ、私の爪こんな尖ってたっけ?牙や耳はまあすさまじかったけれども爪はそうでもなかったはずだ。もちろんずぼらな私がアートなネイルを嗜むべくもない。女子力って何ですかそれ地球語ですか?
(あれ、涙が…)
(あ?涙は気を抜くと凍るな)
(どーなっちまったんだこの身体)


「お前のも作ってやるから少し待ってろ」


それはともかく、一先ず害はないと判断してくれたらしい冨岡さんが私にも禰豆子とお揃いのをくれる的な事を言い始めた。
そしてそれはそう、鬼に対して言うであろう内容で――。


「ってー!いやいやいや、とみ……じゃなかった、お兄さん。せっかくですけど私猿轡的なモノは必要ないですよ。だってどこからどう見てもヒトじゃあないですか、私」


幻術は完璧!…の、ハズだ!どっかでうっかり悲しい装備の如く溶かされたりしてなければ。
だからこの爪(ドラゴン並)さえ頑張って無視出来れば人間に見えなくもない。…ハズだ!
…さっきから不確かばっかだな、私。


「…お前も鬼だろう。人の血肉を口にしない自信があるとでも?」


血に関しては正直自信は皆無なんだけどこれは言わぬが花だよね。


「……も、勿論」

「…」


ああああ正直すぎる自分…!何どもってんだよ冨岡さん元からつり上がり気味な目を更に鋭くさせてるよ怖ッ…!
一般人ならこの時点でトイレに直行してそうだ。殺気に負けて。いや時代的に厠か?


「ちょ、そんな怖い目で見ないで下さいよ。私だって人の肉とか嫌ですよ、仮にも人なんで……って、あれ。お兄さん今さっき私の事何て言いました?」


なんか先程冨岡さんの口から変な単語聞こえた気がするんですけど空耳ですか。そうであって下さいお願いします。


「だから、鬼だろう」

「え、ええ?いやいやそんな、ですから私、ただの人間で――って、いたッ!?」


いやまあ、確かに吸血鬼って鬼の字入ってるし割と同列に扱ってる作品も私の世界で見た事あるけど、鬼かどうかと訊かれたら微妙に違うよう、な?

そう思いながら自分の手を見ると、先程の衝撃()でやらかしたのか掌からうっすら血がにじんでいた。わお。
…爪が尖っていた事はないからうっかり食い込ませていたらしい。わー流石不器よ…じゃなくて人外。

…いやでも、希望は最後まで捨てないでおきたい。確かにと、とんがってるなァー!?とは自分でも思ってたけどでも、それだけで鬼と判断される謂れはない!
(と、思いたい)(…いやでも、この世界的常識ではそこんとこどうなんだろか…)。


「ま、まあ確かに普通の人より爪は尖ってるかもですけど、それだけで…」

「それを見ても人間だと言い張るつもりか?」


冨岡さんにつられて自分の手を見ると、傷はあっという間に塞がっていた。
……。

いや、だからなんで空間移動術は発動しなくて異常な治癒能力とかはご健在なんだ。意味がわからない。


「それに両の瞳も深い紅。まるで、血の色だ」

「えっマジ…いや、本当ですか?…わ、ありがとうございます」


親切に手鏡を手渡してくれた冨岡さん。(てか何で持ってるんだ…?あれか死角にいる鬼を確認したりするため、か?)。
じゃあ、とちょいと失礼して覗き込むにここに来るまでにしっかり解けていたらしく真っ赤な瞳の少女がこちらを見返し……年の頃は13、4といったところだろうか。え、若くね…?

顔はそのままだった。…助かった。


「ああ、これは…まごうことなき人外ですねえ…って何言ってんの私!お兄さん、今のはなかったコトに!」

「それでも人を喰わないと言い切れるのか?」



「名前だって人を喰ったりしない!」


空間移動術を使える可能性は消えたものの、経験はこれといって消えたわけではないようだ。
ぶっちゃけ「ナイスタイミングだ炭治郎!」とか内心思いつつ、過去なんちゃって軍人していた事もあったため然程驚くこともなく音源の方向に顔を向けると、いつの間にか炭治郎が起きていた。そして、先程まで気絶させられフラフラだろうにそんな体を押して私の前に立つ。

まるで禰豆子を庇うのと同じように。


「……まさか、」


その時、ある考えが頭をよぎった。

もしかして、これは、
この展開は……。


「炭治、郎?」

「大丈夫か、名前!この人に何かされてないか!?兄ちゃんが守ってやるからな」


ア"ーー!!
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