短編?読み切り?むしろネタ+毛? | ナノ


まあ彼の部下はお守りって言ってくれたけども。



4.手品って言っとくべきだったよね(フラグ)



元々私の精神はズタボロの灰寸前だった。
そこへ来てあの光景。

私のストレスゲージが振り切ったのは覚えている。私の頭の中で何かが切れたと。
(因みに間違っても血管ではない。死んじゃう)。

…勢いって怖い。我慢って怖い。溜め込むとああなるんだな、参考になった。自分のコトだけど。

…とまあそんなコトはどうでもよくて(ピエロはあんま良くない)、そういえばこの場にはもう一人人がいた事を思い出す。

駆け寄って様子を見てみると、


『ねえぼく、大丈…』

「……」

『まじか』


うん、子供も気絶してました。
…って、いや!違うよ!?まさか子供まで背後から蹴り上げ顔面からずっこけた所をこれは「クリリンの分〜」とばかりに再び蹴り上げ当然文句言ってきたから顔の横に思いっきし脚ダァンてして地面にめり込ませてついでに思い付く限り物騒な言葉を羅列してトドメに「バルス!」とか言いながら胴体踏みつけたワケじゃないよ!?(答え)

まさかこの子まで放置するワケにもいかないため、寝てるならそれはそれでよし、という事で軽く診察してみる。先程はピエロをのすのに忙しくてあんまり見てなかったが、茶髪を一個結びにしたけっこうカワイイ子である。うむ、これは将来になかなか期待出来そうだ。じゃなくて。


「…あれ?」


確か盗み聞きの時点でもかなり殴られたか蹴られたかしていたはずだ。しかしパッと見目立つところに外傷が無いのが謎で…あー、いや。さっき言ったようにもし同じとこの人間だとしたら他の仲間にバレんよう目立たない箇所を狙ったのかもしれない。即ち服で隠れるところ。例えば腹とか、背中とか。陰湿なのとかちょっと頭が回るヤツのイジメによくある話だ。…セコいなオイ。

目に見える範囲の傷は転がされた時に出来たのであろう頬の傷と、服の袖から覗く左手が異様に赤くって年齢に合わずしわがあるくら……ん?左手?ピエロ?

おや?
脳内で検索をかける。

一件ヒットした。


「……いや、ないな、うん。ない、ないない」


…が、アレは確か優しいピエロだったはずだと思い直す。

違うよどっかの主人公の特徴によく似ているだなんてそんなコト。左手が赤いのもアレだよ多分特殊メイクか何かだよ。チラ見した魂が普通の人間とちょっと色模様が違うなんてのもただの偶然だよ。十中八九何かが身体に巣くってるからなんだろうけどこの世にはそんな人なんていっぱいいるんでしょそうなんでしょ。そりゃそうじゃないタイプの人よりは少ないんだろうけどもね確か。
大体髪の色が違うしね!え?いやいやまさか、今は色の変わる前だとかそんな(以下略)。

自分で自分に言い聞かせつつ、しかしこのままここにいて屍が目を覚ましてきても困るため、とりあえず子供を抱えた私はその場からさっさと撤退する事にした。




…つってもお金ないから病院には行けない、よねえ。だからやっぱ、うん。手当ては私がするしかないんだろうねー、ねー。

ああいや、別に私がやるのはいいんだよ。術だとて減るもんじゃなし。いや腹は減るけども。そういや今の私空腹全開だったわ。こりゃいつもの力の半分も出ないだろーなー、ハハ。ってそうじゃなくて。
そうじゃなくって、

今、私には拠点なるモノがないんだよ…。

…ヤベーどこ行こう。


◆◆◆


暴行はいつもの事。
サーカスの団員がただの雑用係で厄介者でしかないオレを助けに来る事なんてない、これもいつもの事。

だけど、今日は違った。

コジモに殴られ蹴られいいように転がされ、ああ今日こそオレ死ぬのかな、なんてぼんやり思っていた時だった。

コジモが一瞬にして吹っ飛んだのは。

とりあえずやったのはサーカスの人間ではないだろう。今までコジモがいたはずの場所を見てみれば、片足を上げた女が一人。

…大の大人を離れたとこまで飛ばす程蹴り上げたのだ。てっきり男だと思ったのに。

そして瞬きをした次の瞬間、女の姿が消えた。

何が起きているのかわからなかった。

意識がもうろうとしていたからじゃない。女が何をしているのか見えなかったからだ。

唯一わかったのは音。さっきは自分の身体から出ていた音が――いや、それより数倍はすさまじいだろう音がコジモの身体から出されている事だった。
他にかろうじてわかったのは女の脅迫の数々と、異国の言葉で叫ばれていた『これはクリリンの分〜』とか『バルス!』という、よくわからないかけ声?くらい。

最初の一撃だってコジモが飛んだからわかっただけ。次に気づいた時には、コジモは白目をむいて倒れていた。

…オレは夢でも見ているのだろうか。けれど、全身をおそう激しい痛みがこれは現実だと言ってくる。

コジモが倒された事に安心したからかもしれない。
オレが覚えていたのはそこまでだった。

意識を手放す瞬間、オレに駆け寄る女の姿が見えた気がした。


◆◆◆


サーカスにはあんなのがいる以上近寄らない方が良さげだったしさあ。まあこの子がそこの子と決まったわけじゃないけど。

そんな事を考えながら広場からはおいとませんと、ってコトで今私は歩いている。せめてベンチとかどこか腰を落ち着ける場所はないだろうかと片手に治癒術片手に少年状態で。そんな時だった。

少年の目がパチリと開いたのは。

…ば、バッドタイミング…!
(せめて治癒術終わってから起きてくれよォォ!)。

…いやでも当たり前か。雑ではないハズ(多分)な揺れの中にいるだけならまだしも頬に始まり腕や足、胸に腹等、いたる所になんかあったかいモノが「ぺたぺたー」ってな感じに触れてるんだし。それ即ち治癒術なわけですが。

子供がギョッとしたように目を見開いた。


「っ!?お前、さっきの……うっ」


うん、やっぱ顔くらいは覚えられてるよね。…変化するべきだったか?
あとまだキミ怪我残ってるからね。何故ならいつもより治癒術スローモードだからね。何故って名前さんの中心でグオオと叫ぶのに尋ねてくれよ。


「うんそう……じゃなかった。」

「…」


いかんいかん、まだ私に英語は早すぎる。子供が死んでたタイムラグにうっかりそのまま日本語で話し始めちゃったよ。ホレ見ろ子供が変な目で見てきてるぜつら。
さっさと天使モードに切り替えて口を開く。


『そうそう、さっきの……ええと、ただの通りすがりデス』


…そしてまさかホームレスとか言えるワケないし言いたくもないよね!
私の怪しすぎる自己紹介に子供は胡散臭そうに見てきてたけど「ふーん…」と…よっしゃ子細と何より名前とか訊かれなくて助かった。

あ、あー…そういえば、もし、もしもこの子が(そうあってほしくないが)仮説の子だとするならば、この時点では名前が無かったり何だったりしたんだっけ?…いやソレ答えじゃね?いやいやまさか。
……まさかね。 

一般にもうこの年頃(多分10歳は行ってないと思うけども)の男の子にだっこ(しかも姫)は恥ずかしいのか「てゆうか、お、降ろせよ!」と暴れ始めた彼に一言(じゃない)。


『いてて、ちょ、落っことしちゃったら困るから。それにキミまだ怪我人なんだから暴れちゃ駄目よ、傷開いちゃうよ』

「!」


「落っことし〜」と言った瞬間とっさに服を掴んだ少年は素直で大変よろしい。その服の真実はただのボロ布なためあんま強く握られると悲しいコトになるけども。
そして仮にもクラスは天使だったり治癒術師だったりするから万に一つもそんな事はありえないんだけどもね。しかも相手子供だし何より怪我人だし。あとよっぽど酷くない限り開く事もないんだけどね一度治癒したら。だって魔術だしねつまりほぼほぼ魔法。

なんか可哀想なくらいガリガリなのは癪だったしおかげで抱き心地はお世辞にもいいとは言えない(しかも、アタタカイ…)けども、顔はカワイイんだしそういう意味でも絶対に落とす気なんてないけどね!
…知られたら殴り飛ばされそうだな。偏見だったら……すまん。


『うんうん、いい子いい子ー』

「ちょっ、子供扱いすんな!っつかこの手当て、いや怪我が……治って、る?……お前が、やったのか?」


アッ、余計なコト言った?私。…こうしてポロポロこぼすからついに大事に至ったりすんだよな、気をつけよ。私如きの注意などたかが知れてるけども。何度も言うが私のおつむは残念すぎる。
そして10歳未満(仮)は一般に子供だからね君。電車賃は半額だしお子様ランチだってフツーにイケるからね。


『まあ見えないかもだけど一応私医療かじってんのね。だから勝手で申し訳ないんだけど、手当てさせてもらいました。あと怪我が治ってるのはえっと、アレよアレ。私が…………うん、神の使徒だからだよ』


因みに一瞬「私実は天使だから〜」と言おうかどうか迷ってやめた。私には元より似合わなすぎてるし痛すぎる。貰える称号は電波か痛いオタクか。ホームレスに続いてそれとかほんとどうしようもない。


「はあ?…意味わかんね」


そして少年の「何言ってんだコイツ」的な視線とこの寒さにも負けぬ(であろう)(いかんせん私は感じない)冷たいいらえが痛い。…結局違う意味でも痛いじゃねーかァァ!

…それはともかく、何で神の使徒なんぞ口走ったかというと『今はそう言っときゃとりあえず切り抜けられるんじゃね?』とこの世界の理を鑑みてピコンとなったからだ。勿論私は全然違うしこの先も、やはり身体が悪に染まりすぎててありえないのだろうけどもね。
まあある意味では神のパシ……使徒と言えなくもないワケだが。超不本意。

そんなわけで、少年にはこう言って、笑っておいた。


『いつかわかる……かもね』


まあホントにそうだと私がぶっ飛んじゃうワケですが。
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