短編?読み切り?むしろネタ+毛? | ナノ


私悪クナイ。



3.へんじがない。ただの…



あえて波動の感じない方感じない方へと進んでいた。何故ならこちらに不時着(むしろ沈没)してたのは深夜。あのおじさんに隣町までの距離を訊き忘れた以上どんだけ歩かされるかわからず、野宿するしかなかったからだ。夜通し歩いてもいいんだけどかつての修業のこれまたの副産物でもはやどこでも寝られるようになってしまっている。無駄に体力を削るのは得策ではない。

明日(つか今日)は街に加えてレオパレス探しをせにゃならんのだから!
…その前に就活だけども。

街に留まらなかったのは後から来る人達がいるであろう事に気づいた、てか思い出したからだ。回収うんたらーって言ってたやつ。それに仮に見つからないように留まったとしても、まさかの私が街を均してしまったからな…。宿どころではない。
こんな時のどこでもドア。魂の密集場所を漁る、という名の波動感知からの空間移動術で飛べばいいんでしょうけど、うっかり敵の真ん前に出ちゃったら事だ。何せ誰かを判断するには一度会う必要がある。つまり沢山人がいたとしても誰が誰だかわからない。下手したら敵のアジトとか支配地域に出てしまう可能性もあるというコトだ。…まあこの世界の敵さんなら普通の人と魂の構造は違いそうなものだがここまで来ると一々確認するのもめんどくさい。あとアテが外れた場合その後どうなるか予想がつかない。よくてオモチャか?
可能性を捨てきれない以上ドアも使えない。よって普通にサバイバルするしかなかった。


「意外と辺鄙な場所ってゴロゴロあるんだな…」


森といい林といい。
辿り着いた小さな林。(流石にさっきの森には戻る気にならなかった)。
この際ベッドは木の上でもいいんだけど、どちらかと言うまでもなく平地のが寝やすい。いつぞやかのようにミニマムってるワケでもないし。しかし下にそのままでいて誰かに見つかっても困るため、適当な結界+幻術をこさえた。前者は防御術の広い版みたいなものだ。これで誰もここには入ってこられず、そして誰もいないように見えるだろう。ついでに雑音も遮断。こんな時間にこんな場所をフラフラしてるのとかいないだろうけどいたらいたで絶対危ない人だし。今のところ波動を見るに大丈夫そうだったけど念には念というやつだ。爆睡通り越して昏睡とかして接近に気づかないかもしれないし。

とはいえもはや癖。
熟睡はしつつ、何かが来たらすぐ起きられるよう頭の一部は覚醒させておき、周りの気配のみ敏感に、眠りについた。


***


絶食一日目。
レオパレスの前にまずは花屋でも探すべきなんじゃないかと思うがいかんせん先立つものがない。(吸血鬼は生き血代わりに薔薇の精気を吸う)。
月光で(これは悪魔な)お腹いっぱいにしようにも昨夜は生憎の曇りだったのだ。ついてない。風系?それで雲を晴らせと?…その前にくたびれちまうがな。

持ってないわけではなかったため武器の一つでも一緒に来られれば良かったのだが(※売る)、ここに来る以前これといって金目のモノを身につけていなかったのだ。何故なら私室でどーでもいい術使ってただけだから。たまたまオフだったのよ。因みに大した術でもないのに暴発とか恥ずかしいので何に何の術を使ってたのかは言わない。
何にも持ってこられないワケでもないというのは今回のでわかったけども共にこれたのは半壊気味の机のみ。イジメかそうか。

旅立ちの勇者だって三千円くらい持ってるぞ!

しかも何でかこっち来たら粗末…というかボロボロのワンピース+裸足になっていたのだ。爆風だけでなく服もとか世界は私をどうしたいのか。墓には入ってたけど誰の体に入ったわけでもないのに。一体これはどこのどなたの私物なんだ?まあ十中八九あのお墓の方の物なんだろうけどさ。仕方ないからそのままお借りしているけども。でもずっとこのままってのもなあ。ってコトで外見だけでなく服もしょっぱなに新調しといた(忍術)んだけどさ。これじゃあ入れるお店も入れんと思ってね。
足は防御術で弾いてるから怪我などはしていない。因みに汚れからも守られてる。勿論ここも靴をはいてるように見せかけてある。
…いやね、ここだけの話ぶっちゃけ昨日の街の仏さん辺りから追い剥ぎでもしようかと思ったんだけどサイズ合うのなかったんだよねー倒れてたの男性ばっかだったしねーアハハハ。…バチか…前後してるけども。

転生ならともかくマッパもしくはそれに近しい状況でトリップとかそうそうないだろうしつまり、衣食住の三つの内比較的揃えるのが簡単っつか揃ってるコトも多いであろう衣の最低レベルすら維持出来てないこの状況。…いやホント、装備まで簡易にされてるとかマジなんのイジメ?

旅立ちの勇者だって初期装備くらい(以下略)。


「ここも…だ、と…」


そんなゲームで言うところの新たな街である隣町には入れたのだけども、おかげで立ち往生したまま頭抱えてる。実はアルバイトフラれたの、今出てきた店で何と20軒目。…せ、世知辛い。世知辛すぎる。
…現代かよコノヤロー!履歴書百枚書いてもダメ的な?こんなトコまで来て就職難とか何!?

ヤバイ、そろそろ心が折れそうだ。あと一撃…あと一軒断られたらもう砕ける。
ついでにやさぐれる。理由は朝から奏でてる腹の大演奏だ察してくれ。

何せ素性の知れぬ外国人。言葉は何となく通じてはいるものの多分口の動きとか合っていない。まあそんなとこまで見てるかはわからんが。…しかしここの世界で生きていくのなら言葉、いずれは何とかしないとだよな…。
まさか外国とはいえ「ここで働かせてください!」がここまで通用しないとは…。いやそんな直球で行ったわけじゃないけども。

そもそもここどこ?いやマジで。ヨーロピアンなのは建物でわかるけど英語圏なんてどれだけあると思ってるんだ。…こんなコトなら世界史ちゃんとやっとくんだった…。
「ここどこの国ですか?」は何度も言うようだが裏社会云々が気になって未だにやってない。夢脳万歳。そうじゃなくてもしっかり入国しておきながらそれを尋ねるのは些か、というか割と不審者だと思う。

あと時代。原作は確か…あー何世紀だったっけ?とにかく、現代よりは前なカンジだったハズだ。日本が出てきた時確か江戸とか言ってたし(自国だから覚えてた)。

つまり何が言いたいかってーと…あれですよ。「差別!?」って話ですよ。
現代より前ならもっと酷いはず。

実はそろそろ夕刻になりそうなのだ。何故なら隣町まで距離があったのと、フラれた軒数がちょっと異常だったから。あと寝坊した(ほぼ原因)。
冬の日本とどのくらい日の入りどきが違うのかはわからんが何かもう辺り全体薄い闇。一軒、また一軒と明かりを灯す家がチラホラと…マジ誰か家入れてくれ。出来れば泊まらせてくれもっと言うなら住まわせてくれ!自分で言うのも何だけど炊事洗濯なら長い歴史に死ぬ程鍛えられてるし何ならちょっと人に言えないようなコトも出来るよ!闇討ち、暗殺!お手のも…じゃなくてェ!

でも平和に暮らさせてくれんなら(やってるコトは平和じゃないけど)多少の悪事も目をつむるってのは本当だ。変化しちゃえば完全犯罪なんてそれこそお手のものだし。生きるためには仕方ない。この世は清い事ばかりではないのだから。勿論、出来る限りは真っ当に生きられるようにするし今までだってそうだったけど。(戦闘系の任務とかバンバンあったけども)。
世間から逃げ続けるだとか後ろ暗く生きていくのは疲れるから。たとえバレなかったとしても。
あと私ぶっちゃけ養ってくれんなら体だって平気で売れちゃうからね!そんなゲテモノ好きがこの世にいるならの話だけどね!


「うう、いい匂い…どこのお宅だよー…」


そうこうしてる内にますます薄暗い。ついでにどこからともなく夕飯であろう美味しそうな匂いもしてきて色々悲しい。メニューもわかるしで2倍悲しい。そしてどこも何もこの時間帯、色んなおうちからしてくるワケだが。
歩を進めるごとに(ニオイにつられた)漂ってくるカレーにシチュー。ミートパイやフィッシュアンドチップス、ハンバーグエトセトラ、エトセトラ。鍛えられた嗅覚には勿論鳴り響く腹にはダイレクトですよ奥さん。

いっくら天使は殺生を嫌うっつっても、食に関しては獲物を仕留めたり捌いたりだのの過程はともかく出来上がった結果を戴かないコトにはいくら私(人外)でも動けなくなってしまう。天使は普通は光合成が食事なのだが、色んな血の入れられてる私ではそれじゃあ腹は膨れんのだ。むしろ日光とか超天敵。何の影響(弊害)って?吸血鬼とか悪魔らへん。

…仕方ない。こーなったら変化を解くか、はたまたより西洋寄りな美女にでも変化するか――。

もんもんとしていたと思う。てか半分変化剥げさせてたかも。
そうして次の変化をどんなものにするか悩め迷わせていたら、遠くから大きな声と音が聞こえてびっくりした。いや一般人には聞こえない範囲なんだけども。しかし私の耳は自動的というか勝手に音を拾ってしまうという。戦闘以外だとほんと弊害でしかない。
…ヤバイ完全に気ィ抜いてたわ。仮にも軍人やってたコトもあるのにそんくらいでビビるとか。ここが戦場なら死んでるな私。それはさておき。


「…カツアゲか?いや、それにしては…」


片方小さすぎる気がするんですが…。

男の人の声と今言った通りの子供の声。もし虐待とかならバッチリ聞きつけてる身としては見て見ぬフリというのも寝覚めが悪いため、音を頼りに近づいてみた。

それらは拓けた場所から聞こえていた。どうやら広場のようだ。そばには何で今まで気がつかなかったのかというくらいドでかい縞模様のテントがある。一階建ての家なら軽く入りそうだ。お芝居かサーカスだろうか?大きいからサーカスかな。サーカス見るのとかいつぶりだろ。外側だけど。
大通りを歩いてた時は良さそうなお店を探すのに夢中だったからなー、ハハ。

路地裏…つまり定番ってわけでもなさそうだったから、とりあえず緩んでいた変化を元に戻し和顔になりつつ物陰からこっそり覗いてみた。

見なけりゃ良かったと思った。

待ってヤバイこんなの子供に見せらんない。本来子供に夢を見させる立場であるハズのピエロが、笑顔は笑顔でもいやらしい笑顔で暴力を振るってるとか…。(そして私からしてみれば笑顔の恐怖再びっていう…)。
その光景を見てピエロもののホラーを想起したのは多分私だけじゃない。

そう、子供をイジめてたのは大人の男それもピエロ。いや比喩とかじゃなく。ピエロの格好してたんだよその人。
(ってピエロな比喩ってどんなだ。某奇術師とかか?)。

サーカスという予想は当たってたらしい。きっとそこの人間なんだろう。スカーフつけた子供…男の子もそんなカッコからしてサーカスの子だろうか。裏方的な?安易だけども。

表からはテントでうまいコト死角にでもなっているのか誰かが助けに来る様子はない。まあすぐそばのテントの中のピエロの愉快な仲間達には聞こえているハズなのだが。それってどうなのって感じもするが。あるいは日常茶飯事なのか。
しかし何にしても、それはウラを返してみれば目撃者の心配はないというコトだ。

そう、だからこんなコトになってしまったのは仕方ない。仕方なかったのだ。

気づけば私はパンパンと手をはたいており、その足許には泡吹いて気絶したピエロが転がっていた。
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