短編?読み切り?むしろネタ+毛? | ナノ


私はギリ滅されない。…と、思いたい。



2.途中までの自分だったら多分フェードアウト



『…アノー。私、何モ見テマセン』


とりあえず天使の血、もとい特性をバンバン発揮させてみる。これで音自体はバリバリの日本語でもとりあえず意思疏通は可能だろう。と、思いたい。

まず最初に、私の人外仕様しかも異常に鍛えさせられてる五感が異変を察知した。

…察知はしたのだが、いかんせん来たばかりで逃げようにもいい道がわからない。いや、確かに走るんではなく飛んだりいっそのコト最終手段にはテレポートなんてぶっ飛んだ(まんま)手もあったにはあった。(因みにそんなどこでもドアだが、毎度おなじみ・悪魔の空間移動術の事です。好きな場所に狙って移動可とかいう、これまたズルいというか非常にこざかしい術である)。

しかし、いかんせん目撃者が面倒だった。あと優しさ(あるのとか言わない)をチョロリしたのも悪かった。

気づけばあらよあらよとまことに怪(略)なグループに行き止まりまで誘導されてしまっていた。…いかんせん地の利は向こうにある。何たって地元民なのだ(ろう)から。
人間じゃないけど。

そう、人間じゃない。
ココ、超重要。

というのも、じわじわ距離をつめてくるその集団つまりの複数達。数は10体ほど。ソイツらはみな、揃いも揃って何とも形容しがたい成りをしていたのだ。異様に大きいボールみたいな体躯、体中から飛び出るキャノン砲のような無数の筒。…アッ、なんかどさくさに紛れて形変わったのいる…。今さっきの乱射で進化したらしい。四肢が生えてる。さながら道化みたいな。ピエロか?あってかアッチも…。わ…わお。わおわおわおぉ。

見た目完璧人外のこの人達。唯一人間だったというのがわかる点は、ボールの真ん中に浮き出る顔が、人の顔をしている事――。

そう、ここが私の知る所だとするならば“元”人間と言うのが正しい…。
…ふっ、“元”って。私と同じじゃないか。…あれ仲間?発音も…。

あと、何でか苦もなく中身を見れちゃってるっていうのもあって元々は人なのだとわかったのだ。何でだろうと一瞬思うも、ああ波動感知の賜物っつか、副産物か…と納得する。あと気配が人となんか違う。…うん、なんかあんま美味しくなさそうだなーと……げふんごふん。

そんなヤカラに囲まれてるこの絶対絶命の状況。

そもそも何でこんなピンチってるかというと。

殺人衝動に駆られてたらしいこの人達。キャノンてのはまさにそうで、街中でしかもこんな真夜中に、住民に向かって無差別に発砲しまくっていたのである。

私がこいつらの視界に突入してしまったのが運の尽き。途方に暮れつつも歩みを止めないでいたら、街も端に来ようというところで、回れ右をしとけばいいものを、そうする前についうっかり視界に入れてしまったのだ。

凶弾に斃れそうになっていた、最後の生存者を。

ハッとしたのは、道脇に飛びずさってからだった。
勿論その人を小脇に抱えて。

因みにお礼超言われた。「いつか恩返しを…!」って言うから、じゃあまた会えたらその時はご飯でも奢って下さいって言っておいた。ちょっとこのままでは餓死の危機なので。その前にこの目の前の困難はどうすんのかって話だが。

付近でドンパチやってたというなら私が(耳とかのせいで)気づかないはずもない。…ないのだが、そこいらからあがっていた悲鳴や断末魔に、見捨てきれず、いらぬ仏心を発揮したのが悪かった。
あと天使心とかな。天使は食事も含め殺生を嫌うものだ。しかしこういう時は全くもっていらんと思う。まあ無いなら無いで治癒術の底上げが図れなかったから私をそうしたあのクソやろう(神)の前でも下唇を噛んじゃうしかないんだけど。私の半分どころか4分の1以下のエルフの血だけじゃ魔術も限界があるからな…。

とはいっても、前述した通り、その人以外手遅れで、治癒術うんたらの出番は今回はなかったけれど。
既に亡くなっている人は、例えば人魚の万能血肉を以てしても生き返らせるとか流石に無理だし、何故って今更だけど厳密に言うと、魂が肉体から剥がれた後はどう頑張っても無理なのだ。そのまま魂は天界なり魔界なりに転生や裁きを待ちに行っちゃうから。それらを止める権限も力も今の私にはない。

そしてこう言っちゃかなり何だが、結果として、私はたった一人分の命と引き換えに危険に身を踊らせたのだった。

話が逸れたが、そうして生存者も殆ど消えた(何せ魂の波動がもう感じられない…)この不毛と化した地で、突っ立ったままの私は、まあ当然、こいつら的に言えば文字通り標的、的になる運命しか残されていなかった。
因みにさっきの人は幻術で隠した。運が良ければ隣町まで逃げきれるだろう。けっこういい歳したおっちゃんだったけど走りきれるって私信じてる。


「で?いい辞世の句は思いついたかよ?」


ちょ、待っててくれたのかおい。何でちょっと律儀なんだよ。そして辞世の句とか何ちょっとカッコいい言い方してるんだよ。


「つーかさっき何も見てないとか言ってたけどよおお前、目の前飛び出してきておいてそりゃねーだろ!」

「たとえ見てなかったとしても見逃すワケねーけど、なッ!」


…うう。これだったらまだ裏社会に狙われた方が良かった気がする…。

自我がある…芽生えたといえば良いんだろう。そいつら二人(多分)の内片方が攻撃をしかけてきた事で戦いの火蓋が切られた。もとい、再開された。
まあさっきまでのは戦いでも闘いでも何でもなく一方的な虐殺だったが。

飛び上がったおしゃべりしちゃう感じの片方の振りかぶってきた腕を軽くジャンプして避け、倒壊せずに残っている5、6階はありそうな建造物の上に着地した。

ここの住民がさっきの人を残すのみで全滅してしまったのは悲しい事だが、こう言っちゃほんと最低だけど、目撃者がいない分やりやすい。

あと言語だがよっしゃ、通じてる通じてる。
言われてる事は許容出来ないがな。

何があるかわからないためエルフお得意・魔術の一種、防御術を身に纏っておく。まんまな名前だが、これが今まで私の命を救ってきたのだから使わないテもワケもない。余談だが、私だけでなくドーム状等の広範に渡らせる使い方とかも出来る。

屋上から勢いをつけてそいつの脳天目がけて踵落としをお見舞いする。体重は天使とか悪魔の空を飛びやすいようにってんでか元々軽いから、変化系の忍術で最大限重たくして。一瞬のデブ完成である。


「…あれ」


しかし手応えがない。
いや、脳天直撃したしあるにはあったのだが「んー?効かねえぞお?」…ピンピンしておりまるで効いた様子がない。後ろに跳び、一旦距離を取る。

そこではた、と思い出す。
確かこいつらは、普通の攻撃は受け付けず、特定の攻撃や武器でなければ倒すのは不可能ではなかったか、と。

しばし悩む。

と、そこへ、後ろの取り巻き(違う)である進化前のボールから無数の何かの塊が飛んできた。目撃者がいないのなら、と今度は垂直に文字通り飛び、宙に留まる。さっきまで私のいた所とたまたま背後にあった建物がもれなく蜂の巣になった。
…まともにくらったら完ペキお陀仏の予感である。いや、ここが私の知る通りならレンコンにされるどころではない死に方をするのだったか…。
そして進化進化言うと何かあの有名すぎるRPGみたいだなとか思う。どうでもいいが。そういえば取り巻き達はあのデカい貝のヤツに形が似ているな…。


「……」


弾幕を見て思う。
こいつらへの攻撃もさることながら、私の防御はこの塊を前にどれだけ通用するのか。

私には一応ある血も流れてはいる。予想では多分それが頑張ってくれる気がしている……のだが。
しかしその想像がただの私の妄想で終わった場合、果たして私は五体満足でいられるのか――。


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